Standing in the Rainbow: A Novel (Elmwood Springs)

著者 : FannieFlagg

• Ballantine Books (2004年8月3日発売)

感想・レビュー・書評

[2chimaさんの感想 · 2014年4月20日]

Fried Green Tomatoes と同じ作者ということで手に取った。
舞台はアメリカ中西部、ミズーリ州のElmwood Springsという平凡な町。ただしこの町に住んでいる人は決して平凡ではない。DJを務めるラジオ番組を通して中西部で圧倒的知名度と人気を誇るスーパー主婦のドロシーに、その息子（やんちゃ坊主！）ボビー、天使の歌声を持つ盲目の歌手ベアトリチェ、不幸のデパート・かわいそうなトット、内気な少女ベティ・レイなどなど。いずれも、平凡なようでいて実は一癖も二癖もある役者揃いである。
物語は、第２次大戦直後の1945年から2000年まで、それぞれの役者が織りなす群像劇によって構成されている。少年の成長譚にはじまり、思春期の心、ご近所づきあい、戦争、夫婦、家庭、そして老い。全編通してのストーリーがあるわけではないが、当時のアメリカの空気を反映させつつ、人生の楽しさや悲しさ、そして奇想天外さを描き出す。
（以下ネタバレ）
前半の主人公は間違いなくボビー。少年らしいわくわくドキドキの日々を、こちらまで子どもに返ったような気分で読んだ。中盤以降は超展開で、Elmwood Springsにとっては客人にすぎないハム・スパークス氏の一代記に頁を大きく割いている。最終章できれいにまとめているとはいえ、Elmwood Springsが忘れられてしまったようで寂しかった。また、ボビーをはじめとする若い世代で、都会に出た人ばかりが成功して幸せになっているのも残念。古き良きアメリカを感じたい人にはおすすめ。