- Amazon.co.jp ・洋書 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9780679745570
感想・レビュー・書評
-
今までカポーティはIn Cold Bloodの重くて怖いイメージしかなくて、避けていたのだけど、妹から、カポーティは明るいのもある!と言われ薦められるがままに読んだ本。妹の本なので実家で読んだ。
明るいかは置いておいて(in cold bloodに比べれば格段に明るい)、おもしろい。50年代の作品と言うこともあり、差別用語、Nワードやジプシーなど、ばしばし出てくるから、なんだか冷や冷やした。だけど、書き方、物語の運び、わくわくする!設定がまずとっても夢があってすてき!
少年の成長の物語、と言ってしまえばそうなんだけど、私は割とコミュニティの様々な人間の人生について書いたお話だと感じた。そして少年よりもおばあちゃんに感情移入してしまう私って。。。苦笑
主人公の孤児コリン。引き取られた老姉妹ドリーとヴェレナの薬草を使ったレメディのレシピを巡り(根はもっと深いが)勃発した姉妹ゲンカ。16歳のコリンと60歳のドリー、そしてメイドの黒人であるキャサリンが、木の上の家、つまりツリーハウスに家出する。
このなんともかわいそうなんだけど、かわいく、そして可笑しくもあるトリオ。木の上を仮住まいにし、将来、どう暮らしていく算段をつけようとしているところに、小さな町の住人達が、助けに現れたり、いちゃもんをつけにきたり。みんなトリオの事情はまるで無視で、キリスト教的規範云々にかこつけて、銃まで持ち込む騒ぎ。
違うものと、受け入れられている同質なもの、
選べるものと、チョイスを渇望しながらも選べないもの、
見せれるものと見せれないもの、
話せる人と話せない人、
何でも話せる人に会えたけど、話すことがないこと。
歳を取ることや、人を愛すること、どこかに属すと言うこと、
様々な人生のテーマが、木の上の小さな家の中で紐解かれ、小さなコミュニティに大きな波を起こす。
その区切られた異質な空間が、つながりを生み、そしてまた、普通の生活ではみえなかった人の関係の本質を暴きだす。
書き方がとてもシャープで、皮肉たっぷり。
それでいて、周りのものの描写が瑞々しく、目を閉じるとその風景がうかんでくるよう。
ツリーハウスから降りた後の話がまた、日常に戻るようで戻れない、浦島太郎が玉手箱の蓋を開けちゃったような、そんな世界をふつうに書いているところが好きだった。
筆者は人間観察にとても長けた人だったのだろうな。
他の短編もぱらぱら読んでいる。カポーティばかり何作も続けて読んだりはしないと思うけど、もう避けたりしない。
おもしろかった!
妹ありがとう!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
母語でない言語で書かれた小説を読んで、
文章がただただうつくしいと、
思えたのは初めてだった。
毎日少しずつ、でも手を止めることなく、
頁をめくった。
あまりにも思い入れの強い作品になってしまったから、
邦訳は読みたくない、
とまで考えている。
きっと、消えてしまうだろう。
あの感覚が。
日本語に写されると、
どうなるのかが知りたい気持ちも
もちろんあるのだけれど。
‘The Grass Harp’の他には、
‘The Headless Hawk’が気に入った。
眠れないひとたちの見る夢みたい。 -
I liked the landing of this story. However, I lost track somethimes in the middle and didn't enjoy very much. Maybe I should try again later.
Also, as for 'Tree of Night', which I expected to be romantic, turned out to be fuzzier. -
少年の成長を描いた作品。
少々幻想的すぎる嫌いはあるものの、少年の成長と喪失の描写がすごすぎる。
何かを言えるようになった時、もう言うことなどないのではないか。
大人になって何か出来るようになった時、もうやりたいことなどないのではないか。
時間は何かを可能にする。時間は何かを喪失させる。 -
表題の中編と短編集。文体が濃密で骨が折れたけど、どれもクォリティがすごく高い。満足。
-
両親と死別し、遠縁にあたるドリーとヴェリーナの姉妹に引き取られ、南部の田舎町で多感な日々を過ごす十六歳の少年コリン。そんな秋のある日、ふとしたきっかけからコリンはドリーたちと一緒に、近くの森にあるムクロジの木の上で暮らすことになった…。少年の内面に視点を据え、その瞳に映る人間模様を詩的言語と入念な文体で描き、青年期に移行する少年の胸底を捉えた名作。