- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000029766
感想・レビュー・書評
-
「俳句的人間 短歌的人間」(坪内稔典)を読んだ。ネンテンさんの文章をまとめて読むのは初めてだな。
こういう本は、引いてある作品をを何回も読み直すので時間がかかるんだよね。
いちばん印象深かった一首を引く。
人も馬も渡らぬときの橋の景まこと純粋に橋かかり居る (斉藤史)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
坪内氏は適当な遊び人だと思っていたが、俳句の中で演技していたんだと知った。子規が草花好き、柿好きのイメージを作りあげたように。
-
難しいことはわからないけど「俳句は取り合わせ」「作者を消して言葉の風景を作り出す装置」というのが面白かった。「柿と法隆寺」「古池と蛙の水」「菜の花と月・日」。それに対して短歌は七七音の分だけ、もうちょっと作者の顔や感情がのぞく。そうかー。考えたこともなかった。
森鴎外、夏目漱石ももとは俳人歌人。小説「舞姫」「虞美人草」の文体のリズムのよさに初めて気付いた。声に出して読んで気持ちいいリズム。うおーそうかー。全然知らなかった。
正岡子規は手紙やはがきに用事を歌で書きつけていた。「飄亭と鼠骨と虚子と君と我と鄙鮓くはん十四日夕」「十日は発句の会なり九日の朝からきませ茶は買ひてあり」。えーすごい! 面白い! 短歌がものすごく身近なものに感じた。ちょっと自分でもやってみたい。 -
正岡子規、夏目漱石、幸田露伴、尾崎紅葉、みな慶応三年生まれ。いわゆるあたり年です。子規は小説家をめざしたこともあって、『月の都』というのを下宿で書きあげています。それを幸田露伴にみせると…。
子規は俳句の世界へと突入。生涯、およそ二万五千句。短歌でも新境地を拓きます。俳句の十分の一ほどしか残していませんが、短歌の子規も、魅力的です。散文の発達にも大貢献。万葉集の復権にも、子規の影響があります。
子規は、病躯との闘いのなか、エネルギッシュな活動を縦横無尽にくりひろげていきます。そこを、稔典さんのような人は、刻苦勉励&粉骨砕身という努力型の子規として固定するのではなく、死ぬまでの楽しみをとことん発見していこうとした、哀しみのただなかに身をおく「明るい子規」、としてみつめています。
俳句か短歌か、などを論じるとたいていつまらないものになります。稔典さんのこの本も、形式ばって退屈です。ところが、正岡子規をとおして俳句や短歌をながめてみると、いろんなイメージがふくらみます。俳句も短歌も、理屈からはいるとろくなことにはなりません。
子規は俳句が主で短歌が従です。俳句から短歌をみています。稔典さんは、短歌が好きで俳句がきらい(?)。だとすれば、短歌から俳句に光をあてていることになります。どちらでもいいわけで、好みにあわせて、双方向性を楽しみましょう。
詩には、風とおしが必要です。稔典さんのような春風のような人は、その時点で詩人です。もちろん秋風に涙する人もしかり。気楽に、まずは好みの俳句や短歌をどんどん発見していきましょう!
われ寂し火を噴く山に一瞬のけむり断えにし秋の日に似て
-若山牧水
たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ
-稔典さん