日本社会と天皇制 (岩波ブックレット NO. 108)

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  • Amazon.co.jp ・本 (62ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000030489

感想・レビュー・書評

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  • 私が学生の頃、網野史観は一世を風靡していた。本書は講演を基に起こされており、内容は深いとは言えないが、網野善彦のエッセンスは凝縮されている。昭和から平成に変わろうする頃の講演だが、令和を迎えたいま読み返してみて、この当時よりも天皇制の擁護派、批判派の境界が曖昧になり、無批判に受け入れている点においてはより進化していると感じる。

  • 1 天皇の存在を無視しては日本社会を論ずることはできない
    2 日本社会についての常識を根底から問い直す(“島国のなかの単一民族”か?;“稲作のみが生業の中心”か?;“単一国家”だったのか?)
    3 南北朝の動乱と天皇制(“遊女”の地位は低くなかった;“非人”は畏れ敬われていた;ピンチを迎えた天皇制;後醍醐天皇と文観;“異様な天皇制”)
    4 現代とのかかわり

    著者:網野善彦(1928-2004、山梨県、日本史)

  • 網野先生が昭和の終わりに日本社会と天皇制、わけても、後醍醐天皇が果たした役割に注目し、これからの天皇制とどう向き合っていくかを平易に論じた講演録。

  • 昭和天皇死去直前に出版されたものだが、今、改めて問うべき問題を提起している。
    コンパクトな冊子なので、網野史観のポイントがより分かり易くまとまっている。彼の著作を読む前の入門書にぴったりだ。

  • 靴の中の小石みたいに、3.11以降それまでまったく気にもかけていなかった物事が気になって仕方ない。たとえば、「天皇制」について。

    震災後の天皇陛下のお言葉やふるまいには、たしかに、なにかしら日本人の琴線に触れるものがあったように思う。その正体はいったい何なのだろう? 自分なりに探ってみる必要がありそうだ。

    著者は日本中世史の研究者であるが、みずから「日本共産党」の党員であったこともあるだけに、「天皇制」については一貫して批判的な立場を貫いている。とくに、このブックレットの元となった講演が行われた80年代当時は中曽根政権のもと日本の右傾化が懸念されていた時期だけに、かなり直裁的な表現もみられる。

    ・歴史上、単一民族による統一国家としての「日本」が存在していたことはない。

    ・歴史上、天皇家が「日本」を統治していた時代もほぼ存在しない。

    ・皇国史観などを通じて、天皇家が重要視する「後醍醐天皇」という存在の「特異性」。

    といった「視点」がここでのキータームになっている。これだけをもとになにかを判断することはまったくできないとはいえ、コンパクトながら日本人と天皇制(とりわけ中世の)を知る上で大変に興味深い論考。後醍醐天皇とその治世について論じた『異形の王権』もぜひ読んでみたいところ。

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著者プロフィール

1928年、山梨県生まれ。1950年、東京大学文学部史学科卒業。日本常民文化研究所研究員、東京都立北園高校教諭、名古屋大学助教授、神奈川大学短期大学部教授を経て、神奈川大学経済学部特任教授。専攻、日本中世史、日本海民史。2004年、死去。主な著書:『中世荘園の様相』(塙書房、1966)、『蒙古襲来』(小学館、1974)、『無縁・公界・楽』(平凡社、1978)、『中世東寺と東寺領荘園』(東京大学出版会、1978)、『日本中世の民衆像』(岩波新書、1980)、『東と西の語る日本の歴史』(そしえて、1982)、『日本中世の非農業民と天皇』(岩波書店、1984)、『中世再考』(日本エディタースクール出版部、1986)、『異形の王権』(平凡社、1986)、『日本論の視座』(小学館、1990)、『日本中世土地制度史の研究』(塙書房、1991)、『日本社会再考』(小学館、1994)、『中世の非人と遊女』(明石書店、1994)。

「2013年 『悪党と海賊 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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