日本語のソフトウェア工学の数少ない名著の一つだと思った。
第4章のモデル化技法とUMLでは、状態図、活動図、強調図、系列図と、漢字2文字にしてすっきりと説明している。
系列図が、Sequence chartであることに思いが至らない人がいるかもしれないので、英語表記もあるとよかったかもしれない。
酒屋の在庫問題の紹介は。有用で、情報処理の1984年9号、11号、1985年5号は必読だろう。
また、自販機問題は、野呂さんの得意分野で、自販機メーカとの協同研究の成果でもあると思う。
第10章、形式手法について、Z、VDMだけでなく、CafeOBJについても紹介があるなど、いろいろ細かなところまで詳細な情報を展開している。玉井先生のBに対する見解が聞きたかったのが心残りである。また、CafeOBJの記述例が、他の文献にもあるStackなのは残念でした。もっと異なる応用が可能である例示があると、記述してみようという意欲が沸くかもしれない。
第12章、検証技術では、故障(fault)と障害(failure)を区別しているが、FMEAとFTAの紹介がないのはなぜだろう。
いずれにしても、これだけ幅広で、奥深い日本人による入門書を見たことがない。
最初にこの教科書で教えてもらった人は、幸せだと思う。