共謀罪とは何か (岩波ブックレット NO. 686)

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  • / ISBN・EAN: 9784000093866

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  • またぞろ共謀罪という化物の法案が霞ヶ関に顔を出して来た。様子を伺って、いけるようだったならば一気に持って行こうとしているのは、明らかである。

    過去1番共謀罪法案が成立しそうになった2006年に発行された解説書です。その当時の国会議員として闘った保坂さんの解説と、弁護士の海渡さんの解説は、だから、かなり実際的で現代でも有効である。

    安倍晋三は、Xデーを待ち望んでいるように思えてならない。国際テロで、日本で日本人に多くの犠牲者が出る日である。その時にいっきに改憲に持ち込む、或いは共謀罪を成立させる。そういうシナリオを考えているのではないか。

    しかし、ここに書いているように、どんな理由をつけようとも、共謀罪は人の心の中を裁く法律であり、作ってしまえばおしまいだ。

    2006年の時にはテロとは関係のない619種類もの犯罪が対象になった。「共謀罪というと、たったひとつの新法ができるのではなく、刑罰法規の新体系が出来上がるのです」(17p)

    国会で法務省は、『「犯罪を共同の目的とする組織的犯罪集団」が具体的・計画的に犯罪の遂行を「共謀」した時に共謀罪が適用されるので、一般人には関係のない』と説明しているようですが、そもそも純粋に「犯罪遂行」を目的として結成された集団など存在するでしょうか?(31p)
    その通りだ。それを調べるために、日本の公安・警察は、市民グループのありとあらゆることを調べ上げて、更には「目配せしただろう?」というだけでしょっ引いていくだろう。

    海渡さんは、日本の刑法体系には既に数々の「組織犯罪対策」の立法が存在していると言う。
    (1)殺人、強盗、放火、身代金目的誘拐などの人命・安全に関わる重大犯罪については予備の段階から処罰が可能だそうだ。爆発物関係は共謀の段階から処罰が可能だそうだ。
    (2)凶器準備集合罪は、かなり広範な暴力犯罪の準備段階を処罰できる。
    (3)住居侵入罪は、窃盗の未遂以前の段階の処罰を可能にする。2003年施行の「特殊解錠用具の所持の禁止に関する法律」は過剰処罰の批判もありますが、未遂以前の処罰を可能にしている。
    (4)アメリカで共謀罪が発展しているのは、銃の合法化が重大犯罪に結びつきやすいという背景がある。

    字数の関係で詳しく書けないが、そういうことで、テロには今でも十分対処できる。

    海渡さんはあとがきで「極端な治安強化のための立法は、社会的な混乱を広げて、テロと犯罪の危険性をさらに激化させる危険性すらあります」と書いている。私もそう思う。

  • 2006年当時、小泉政権下で問題になっていた共謀罪についての内容と問題点を書いたもの。

    下記のネット上の資料を補完しようとの目的で読みましたが、構成がほぼ一致しており、わからないのですがもしかして著者が資料作成に関わっていたのかなと。

    さすがに本書は一般の人にもわかるよう、共謀罪が制定されたら生活はどうなるか、お話の具体例が豊富で想像しやすいものになっています。

    [日本弁護士連合会: 日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)] http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/complicity.html


    本書とネット資料の骨子をメモ。
    今回の改正案では、「1.目的」にテロ防止が加わることになるのかと。

    1.共謀罪を制定する目的

    ・「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の批准

     「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」が「重大な犯罪」について共謀罪を設けることなどを求めているとされる。

     > 各国の国内法の原則に合わせた立法がなされればよい。

     > 共謀罪を制定しなくても批准は可能と考えられる。


    2.共謀罪の規定

    ・政府が提案してきた共謀罪の規定

     > 600以上存在し、重大とはいえない犯罪を含む。

     > 日本の刑法の基本原則に則らない。

     > 犯罪の判断が難しい。


    3.共謀罪の運用

    ・「団体の活動」(市民運動団体や労働組合、会社組織など) の共謀の処罰

     > 恣意的な運用の懸念

      捜査機関が、市民運動団体や労働組合などについて、共謀罪の容疑があるとしてその構成員を検挙するなど。

    ・新たな捜査手法が導入される可能性

     > [通信傍受(盗聴)、会話傍受(室内盗聴)、潜入捜査] の導入

     > 警察の捜査の在り方

      これまでの法案には、自首すれば自首した者の刑を減軽または免除する規定があり、警察の捜査の在り方が根本から変わる可能性も。

  • 広く共謀罪の適用オッケーになりそうな予感がした。共謀罪は共謀の中止や共謀の撤回を認めてないし、いくら国際条約に批准したからといって危ないと思う

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著者プロフィール

かいど・ゆういち  40年以上、もんじゅ訴訟、六ヶ所村核燃料サイクル施設訴訟、浜岡原発訴訟、大間原発訴訟など原子力に関する訴訟多数を担当。日弁連事務総長として震災と原発事故対策に取り組む(2010年4月~ 2012年5月)。
脱原発弁護団全国連絡会共同代表として、3・11 後の東京電力の責任追及、原発運転差止のための訴訟多数を担当。    主著=『朝日新聞「吉田調書報道」は誤報ではない』(河合弘之氏他との共著、彩流社)、『東電刑事裁判無罪判決 福島原発事故の責任を誰がとるのか』(彩流社)、『原発訴訟』(岩波新書)、最新刊『東電役員に13兆円の支払いを命ず!』(旬報社、共著)他多数。

「2023年 『東電刑事裁判 問われない責任と原発回帰(仮)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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