男たちの帝国: ヴィルヘルム2世からナチスへ

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 31
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000223881

作品紹介・あらすじ

クィア・スタディーズの視点から、これまでのヘテロを軸とした「知」を問い直すため、「われわれ」の問題として新たな歴史学の視点を持つクィア・ヒストリーを提唱し、近現代のドイツ史の深層を掘り起こしてゆく。

感想・レビュー・書評

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  • 同性愛開放を、ドイツの歴史から見ている本。伝記のような体裁の部分が多く、合間に考察があるのでよみやすい。参考文献リストも充実してるので更なる追求も可能です。よかった。

  • わたしが大好きな近代ドイツ史(第2帝政あたり〜)をクィアヒストリーの視点から詳しく解説しているもの。読みやすいが内容はかなり細かく従来の歴史学の表舞台にあまり表れてこなかったようなことを扱っているため、難しく感じる。しかし、興味のある分野だったので、意欲的に読み続けることができた。

    まずは、統一されたドイツ帝国について。たくさんの領邦がヨーロッパの怒濤の近代化の波を乗りきるため統一を果たしたのはわたしでも知っていることですが、近代化は合理化であり、人間社会を合理化したことによって、ある意味生きづらさを感じさせる人間の型を形成してしまったというのことを改めて確認。強烈なミソニジーに基づく男性同士の絆、あまりにもお粗末で他者への理解力に欠ける(しかしその時代に生きて、その時代の常識や習慣に対抗するのはあまりにも大変なことなのでやむを得ないのかもしれませんが)ヘテロ男性の構築した社会秩序。しかし社会を作るのが人間である限り、その中に矛盾をはらむのは至極当然のことであり、同性愛を取り巻くドイツの環境も一律、単純に語ることはできないものであった。
    ナチスドイツの時代はもっと想像の斜め上をいっていた。わたしが想像していたナチスドイツ時代の同性愛者を取り巻く環境はもっと一貫したものだった。同性愛者は異常であり、ドイツ民族を脅かす存在であるから、発覚次第ピンクトライアングルをつけられて強制収容所おくり、その強制収容所でも他の受刑者から差別を受けるという、差別の差別に苦しんでいた、という感じを想像していたがそれは違った。

    しかし歴史はその書き手の考え、立場に大きく作用される。同性愛者の存在を認識しようとしない社会では、歴史においても同性愛者や社会に弾圧されたマイノリティーは浮かび上がってはこない。それが一番こわく、一番悲しいことだなと思った。
    著者のセクシャリティー観、ジェンダー観はご自身がゲイであるからか、(わたしには)かなりリベラルで読みやすく、理解しやすい考え方だった。男性の書くものにここまで波長が合うのは非常に珍しいのだが、やはりヘテロの立場の男性と、同性愛者である男性の立場ではセクシャリティーの捉え方が大きくかけ離れていることの現れなのかなと思った。しかし、大きくかけ離れていることこそが、社会認識の甘さや社会の未成熟さのあらわれであり、大きな問題なのではないかというわたしの問題提起。

  • 19世紀末から戦後にいたるドイツを舞台に、同性愛者に対する社会の関わり方を同性愛者の側から記述する。ただし、「われわれ」の設定の仕方は本書が研究書であるならあまりにナイーブであるし、その結果、焦点が拡散して事実の羅列と化しているきらいもある。また著者はドイツを中心とした現代史を専攻する文学博士であるらしいが、何の注釈もなくシュテファン・「ジョージ」等と表記しているところを見ると、二次文献の紹介が中心であるのかもしれない。参考文献表あり。

  • と、ある所でお世話になった方が書かれた本です。お礼に(?)コッソリ宣伝してみます。読んだ事がないのでランクは適当です(笑)。

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著者プロフィール

星乃 治彦(福岡大学人文学部教授)

「2018年 『日常のなかの「フツー」を問いなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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