教育立国フィンランド流教師の育て方

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000225670

作品紹介・あらすじ

OECD(経済協力開発機構)が実施している学習到達度調査で、「世界一」の学力を維持しつづけている北欧の国フィンランド。特筆すべきは、学校間の学力格差が小さいこと。その「どこでも同じ、質の高い教育」を支えている。どのように彼らは育てられるのか、そして教師となってから、どのようにその力量を維持しているのだろうか。さまざまな学校で働く、その素顔に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • PISA調査や全国学力試験以降、世界的に注目されるようになったフィンランドの教育。でもその秘密は、教科書でも学校でもなく、教師の専門性にあった。フィンランドの教師はその専門性の高さから、子どもからだけでなく、政府や教育機関、市民からも支持を得ている。教師とはどうあるべきか、また、日本の教員養成機関の課題を考えさせられる。

  • ここ最近学力世界一として注目されている、フィンランドの教育のよい面だけでなく課題も、フィンランドの教師へのインタビューを通して実態としてレポートしているところに好感が持てます。

  • フィンランドでは、教師は「国を照らすロウソク」と言われているらしい。大国に挟まれた資源のない国なので、人材育成が何より重要だと考えられてきたのだ。

    PISAでトップクラスの成績を維持し続けているフィンランドの教育事情を知るべく読んだのだが、学校ではPISAなどは全く意識されていないし、結果に対してもほとんど興味がないらしい。 教育現場で意識されているのは、生徒の一人一人の個性を尊重し、考える力や表現する力を伸ばすことだ。そのために、様々な工夫がされている。決してテストで点を取るための教育ではない。

    政府は現場を信頼し、現場は熱意を持って生徒を指導する。 生徒側も、興味感心のあることをいつでも(社会人になっても)勉強できるような環境が整っていて、実際大学には様々な年代がいるらしい。

    フィンランド政府が行った教育改革の一つは、指導要領の簡略化。教科書検定もなくし、ある程度の目標を示すだけにとどめた。各出版社が競争する中で切磋琢磨して内容を高め合っていく…。私個人としてはこれは理想的なスタイルだが、いまの日本のように目指す所が入試or就職だと、結局のところ画一的な知識の詰め込みになってしまうのだろうか…。
    とにかく、フィンランドの教育改革を見習って、日本も国の教育制度、そして何より国民の意識を大きく変えていかなければならないと感じた。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ある程度の目標を示すだけ」
      国民を信頼しているんですね、羨ましい限りです!
      「ある程度の目標を示すだけ」
      国民を信頼しているんですね、羨ましい限りです!
      2013/01/11
  • ふむ

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/48431

  • 開発目標4:質の高い教育をみんなに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99109592

  • 教員経験のある著者が、フィンランドのいくつかの教育現場の様子をインタビューを含めて取り上げた一冊。著者に教員経験があり現状をふまえた上で書いているので、「日本の教育現場との違い」を意識しやすい一冊。

    日本の教育との違いを問われたフィンランドの校長の答え「オペッタヤ、オペッタヤ、オペッタヤ(教師、教師、教師)!」(p.43)に尽きるのかな、と。
    まず、教員が医師と並ぶ尊敬される職業で、大学の教員育成課程は修士含む6年課程であるにもかかわらず、倍率10倍を越える人気学部であること。高校卒業後に大学に行く、とは限らないので、年齢・職歴の多様性を持ちつつもほんとに教員になりたい人が教員になるし、それに合わせた高度な指導が行われる。

    また、「実習生ガイダンスの研修」(p.113)に代表される現役教員向けの研修課程が、すごく合理的に機能していること。似たような研修があってもそれがうまく機能していない印象をうける日本と何が違うんだろう、という印象を受ける。時間が足りないのか、研修体系が悪いのか、そもそも教員のレベル差に起因するのか、違いが気になった。

    そういう人を取り上げているんだろうけど「この先生はこういう『ずばぬけたもの』があって、それを自他(生徒・教員)ともに認めている」教員が、それを生かして授業を展開している感はある。
    それでいて(そうであってこそ?)、フィンランドの教育の基本は「平等である=おちこぼれを作らない」ことらしい。
    矛盾しているのかもしれないし、モチベーションの低い生徒にとって「目の前のこの人、尊い」以上のきっかけはないともいえる。

    PISAの高得点で視察者が増え、視察時に「一校の訪問につき200ユーロを学校に支払わなければならなくなった」(p.142)フィンランドから学べること、それは「フィンランドと日本の違いは『ちょっとした違いの積み重ね』」なのかな、と。少なくとも「フィンランドに一度視察に行ったら、学校変わった」的なことはないのかも知れないな、という印象を受けた。

  • 環境や教育方法が違っても、子どもに関する悩みは同じだと改めて思った
    政治や経済云々よりも教育が国を支える、だから人間を育てようという考え方がよい

  • 日本もかつては教育立国と呼ばれていたはずだが。
    現在学力世界一と言われているフィンランドの教育現場のレポート。
    教育を大切にしない国の発展は無いと思うのだが、日本は反省しなければならないだろう。
    フィンランド流を真似るだけで良い結果が出るとは思えないが。

  • なんだ、社会の認識が誤っているから教育がおかしいってことになってるんじゃん。餅は餅屋に、教育は先生に!

     フィンランドがこの本にあるような懐の深い考え方をできるのも、共産主義的素養があるからって気がして、簡単には見習えないなって思う。どうやら、そのフィンランドも漏れなく自由主義の影響を受けてきているようだけれど、いつまでうまくいくかな?
     でも、教員の水準を高くしているから、臨機応変に対応していくことができるんだろうな。
     たぶん、移民の経済格差や教育格差とかがネックになってくるんだろうが、どうなっていくのだろう。興味津々。でも移民教育にもきちんと力を入れているあたり、先見の明があるね。

     ___
    p10  教育省は予算集めだけ
     教育省と国家教育委員会は相互不干渉である。いーなー。最近の日本では政治が教育に干渉しまくっている。政教分離はどこ行った。教育の責任とか言うけれど、そんなん土台無理な気がするんだ。あんまり責任を追及すると、暴走が起きると思うんだよね。

    p11  コアカリキュラムは指導要領ほど細かくない
     教師への信頼と教師の実力があるからできる。民主党時に教員免許取得要件を修士卒にするってあったけれど、今思えばそれは正しいと思った。院の時代に教育実習をたくさんできるようにするのはいいことだった。

    p16  教育の目的は多様性
     フィンランドは各自治体が自分の地域の構成員を作り上げるという意識が強い。地域にはいろいろな職業人が必要である。農家、工務店、教師、小売店、etc…多様な人材を育てなくてはいけないのである。でないと将来自分たちが生きていけなくなるから。
     たぶん、フィンランドは賃金格差が小さいんではないかな。だから多様な就職先に人材が散っていける。今の米国や日本は格差があるから優秀な人材の就職先は一極集中になる。なんとかしてくれ。

    p17  ブランド欲のなさ!!
     日本人や中国人はすぐ学歴を聞きたがる。中国が昔から学歴社会を作ってきたからしょうがないけど、なかなか変わらないものだね。

    p20  フィンランドは真っ当なことをしているだけ
     それや!この一言にすべて詰めこまれた。

    p29  いちいち配慮しない
     でた、フィンランドの真っ当なこと。もうね、日本は気にすることがなくなって無理やり心配しているよね。運動会で一位になれない子の気持ちとか、授業参観で親が来れない子の気持ちとか。

    p95  2007年のフィンランド高校生銃乱射事件
     よく聞く「おとなしい子だったのにぃ…なんで…」的な事件。冷たい家庭の最悪の結末。こういった事件はどうしようもないよね。
     でも、さすがにこれは配慮しないわけにはいかないよな。

    p133  情報選択能力を伸ばそう
     もう知識は十分。情報が溢れている。これからは必要な情報を選ぶ力をつけるのが大事である。
     それな。日本みたいなテスト結果の評価に重きを置く教育では伸ばしにくい力。評価の考え方を何とかしなくてはいけないですよね。

    p156  教育は実力をつけるもの
     フィンランドの真っ当なこと。実力がついてなかったら、義務教育でももう一年。嫌々ではなく、自己判断でもう一年やるところが意識の違いだよね。

    p176  愛国心について
     「そんなん教えようと思って出来るもんではない。」フィンランドの真っ当。
    大人が国を愛せれば、子供もそれを見習うんではないかな。安倍さん。

    p176  日本には余裕があるのよ
     そうなんだよね、ハイレベルな社会だから、能力の見合わない人間が出てくるんだよね。自分でハードル上げて、飛べなくてフラストレーション高まっているだけなんだよね。
     日本は余裕を怠惰・驕りととらえる慣習があるから、苦しい。
     日本の課題は余裕をどう捉えていくかである。生かすも浪費するも自分たち次第である。

    p185  しわ寄せ
     最近のフィンランドでも家庭に余裕がなくなってきているらしい。夫婦共働きや50%くらいの離婚率やら。保護者が子供の成長を支え切れなくなって、そのしわ寄せが学校に来る。
     このままいくと、フィンランドでも教育に過剰な責任が課せられて、首が回らなくなってしまうのか!?


    ___

    増田ユリヤさんの本はほかのも全部読んでみようと思う。そういう好感触な内容だった。

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著者プロフィール

増田ユリヤ=ジャーナリスト。著書に『世界を救うmRNAワクチン開発者 カタリンカリコ』など。

「2023年 『読書人カレッジ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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