子どもの脳と仮想世界: 教室から見えるデジタルっ子の今

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000228817

作品紹介・あらすじ

多くの子どもたちが親しんでいるゲームやネットなどの仮想世界は、子どもたちの心にどのような影響を及ぼすのか。私たち大人は、子どもたちに仮想世界とのつき合い方をどう教え、仮想と現実の二つの世界の接点をどのようにつくりだしていけばよいのか。一九七〇年代末から小学校でのコンピュータ教育を実践してきた日本のパイオニア教師としての経験と、最新の脳科学の成果にもとづいて、幼い子をもつ親や教育関係者の不安・疑問に答える「未来への処方箋」。

感想・レビュー・書評

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  • 2008年刊行。著者は早稲田大学こどもメディア研究所客員研究員で元公立小学校教員。一つ一つ書かれていることは興味深いところだが、脳科学・脳生理学と教育方法論との結びつきを論じているとすれば、無関係なところも多いし、説明も不十分の感。他方、子供の脳の変容、行動の変容という社会的意味合いで説明しようとしているのであれば、これもまた焦点がぼやけている。悪書ではないが、テーマが拡散したため、本書の狙いが不明瞭になってしまった典型といえようか。

  • 70年代末からコンピューター教育を実践してきた、コンピューター教育のパイオニア。
    コンピューターの普及に伴う子どもたちの変化と、無邪気に使用し続けることの危険性を示唆する本。

    メディアの浸透は人間の知覚の割合を変えたが、人は五感を取り戻すどころか、ますます視覚に偏った感覚のふぞろいのリンゴたちを当たり前にしてしまった。

    教師自身もまた自分の脳でで考えるのはやめにしてサーチエンジンに考えさせ、ネットの世界ごしに世界を見てしまう「検索めがね」をかけた脳を持とうとしている。教師人が情報追っかけ屋、情報ダウンロード屋、そして情報絶対信仰屋に化そうとしている…そんなヤフー先生の教室の中でいちばん損をさせられる子どもたちはいったい誰だ。

    脳はなぜかボタンやスイッチをおすという間接行為はできるが、人を突き出す直接行為はやれない。

    子どもにバーチャルを一つ与えること。それは引き換えにリアルな能力を一つ奪い去ること。

    6歳の子どもの一日は50歳の大人の1000%分もの価値があると考えよ。6歳の子どもがわずか1時間だけネットやゲームをしていたとしても、大人が10時間も浸っていたのと同じ価値だけ、人生の時間を消費してしまうことになる。

    ドキッとするようなことがたくさん書いてあった。

    公園で子どもたちが見ているのは青い空でも、きれいに咲く花でもなく、10センチ四方のゲーム機の画面。
    公園で小さい子どもたちを遊ばせながら保護者たちが見ているのは、かわいい子どもたちの姿ではなく、10センチ四方のスマホの画面。
    なんだかこわいなとずっと違和感を感じていた。そんな私はいまだにガラケーの、めっちゃくちゃなアナログ人間。
    学校の懇談会の待ち時間に隣に座ってるママさんと気軽に世間話ができなくなって(みんなスマホしてるから)少しさみしい(笑)。しょうがないから本読んでたら「お勉強ですか?」と通りがかりの先生に言われた…。いえ、読書ですけど…。

    「すみれを見に行こう」と誘う大詩人を(良寛)現代っ子は誘拐犯かと怪しみ通報してしまうかもってところは笑えた。

  • 春の鏡、夏のハサミ。

    仮想はいずれ現実にしみだしてくる。
    仮想にはモラルも現実もない。

    バーチャルで一つ得れば、リアルで一つ失う。

  • 興味深い内容だったが、その分、脳科学と著者の経験から得た結論がつながっているのか疑問に感じる箇所があった

  • 数年まえの本なので情報は若干古いけれども、なかなか興味深い内容でした。スマホやらゲームやら珍しくない今日このごろ、子供はどんな風に育つのかな。

  • 今まで勉強したこととリンクすると深かった!

    そうか…だから早熟は良くないのか…(夜更かしすると、性的成熟が早くなる)

    そうか…思春期ってのは脳を作り替えてるから荒れるんだ。(赤ちゃんの夜泣きは直立2足歩行に向けて脳を作り替えてる時におきる)

    の、ようなこと。

    「仮想世界では、何でも起こりうる。そしてそれはやがて現実世界にもしみ出てくる。」(仮想世界の影の法則より)
    これは怖い…。

  • 今の時代に当たり前にあるネットやゲーム。それらが成長段階にある子供たちにどんな影響を与えるのか。
    脳がどんな働きをして、物事にたいしてどんな反応をするのか、わかりやすく書かれている。

  • ゲームやネットなどの仮想世界が、子ども達にどんな影響を与えるのかを検証した本。

    最近の子どもの描く絵には、ユーモアとは捉えがたい残酷なものが見られるようになった。
    「闇の仮想を生み出す得体のしれないもの」が子どもたちの心の中に忍び込んでいるらしい。

    子どもの心からの「なぜ?」「わかった!」の気持ちを大切にしないといけない。
    なぜならそれは脳の発育のしかたに関係があるからだ。

    小学校の学習の方法にも、危険が潜んでいるという。
    教育に携わる方たちに、ぜひ読んでいただきたい本です。

  • 脳科学の視点から教育というものを見つめなおした画期的な著作、だと思いました。
    著者の真摯な思いが伝わってきます

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著者プロフィール

1952年、富山県生まれ。富山大学理学部物理学科卒。1979年から2003年まで、富山県内の公立小学校で教諭を務める。70年代末よりプログラミング教育を実践、日本のプログラミング教育のパイオニアの一人。NHKこどもメディア研究会委員や東京学芸大学非常勤講師を経て、現在はサイエンスライターとして小学館「総合教育技術」誌などに連載多数。著書に『コンピュータ教育の銀河』(晩成書房 1995)、『コンピュータが連れてきた子どもたち』(小学館 2005)、『子どもの脳と仮想世界』(岩波書店 2008)など多数。大の天文学ファンで天体観測と彗星探しが趣味。

「2022年 『子どもたちの未来を創ったプログラミング教育 ~日本最初のプログラミング教育を受けた小学生たちは一世代後にどう育ったか、プログラミングが育てた思考・創造力~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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