ロールズ 政治哲学史講義 II

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258197

作品紹介・あらすじ

ハーバード大学で三十余年にわたって練り上げられた円熟の講義録。『正義論』を主著とするジョン・ロールズが、近代の政治哲学をどのように論じたのか。本書では、社会契約論、功利主義、社会(民主)主義、それぞれの伝統を代表する理論家たちを配し、「正義の政治的構想を表現するものとして、リベラリズムのより中心的な特徴を特定する」意図のもと、分析が重ねられた。"公正としての正義"解釈に必携の書。

感想・レビュー・書評

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    (推薦者:行政政策学類 鈴木 めぐみ 先生)

  • ようやく読了。
    下巻は、J・S・ミル、マルクス、シジウィック、バトラー。

    ロールズはミルの思想が自分のそれに近いものだと考えている。功利主義といっても正義に適った自由な社会的制度のもとでのみ、選好の基準は適切なものになる。そうでないならば、社会は効用を最大化するための適切な条件を得ることができない。このようなミルの公共的理性の考え方について、ロールズは自身の公正としての正義に近しいものを感じている。

    マルクスは、リベラリズムの批判者として取り上げられ、やはり権利と正義に関する一側面から論じられている。まずざっと思想を概観したうえで、マルクスが資本主義を正義に適っているとする見解と、不正義として非難しているとする見解の両方を取り上げ、正義に関するマルクスの観念は一貫性を持つかどうかを検討している。高次の共産主義(「各人からは各自の能力に応じて、各人には各人の必要に応じて」が実現される段階)では正義は超越されており、成員は正義の原理や徳を気にかける必要もないということになるが、ロールズにとっては正義の消滅は好ましくないことである。

    シジウィックとバトラーは補遺。
    シジウィックは、功利主義の古典的な系譜(ベンサム、エッジワース、シジウィック)の最も洗練された完成系として位置づけられている。
    功利主義とは、客観的に正しい制度や行為とは全体に最大の幸福をもたらすものであると考える倫理的構想、と定義されている。幸福の総和には、制度や行為によって影響を受ける現在および未来のすべての動物や生物、人間を含むが、単に効用関数というようなときにはこうした含意が失われているのは非常に不幸だとロールズは考えている。合理的(rational)と理に適った(reasonable)に区別。

    バトラーは国教徒の司祭、説教師から司教にまでなった人物。保守的な護教論者でホッブスの批判者として取り上げている。
    ホッブスは人間を反社会的な本性をもつ存在と捕らえているが、バトラーにおいては、情や自己愛が良心によって統御される道徳的存在(被造物として当然ながら)として想定している。キリスト教的なエッセンスを排除しても、まともな人間は利己的な合理性(rational)だけでなく理に適った(reasonable)合理性に従うという、ここでもロールズ的なrationalとreasnableの区別で論じられている。

  • ロールズ、ミルに共感してるのはよくわかるんだけど、
    マルクスにも結構、シンパ感じてるよね。

    あと、Ⅰ巻のホッブズの愛たるや!

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著者プロフィール

ジョン・ロールズ (John Rawls)
1921-2002年。アメリカの倫理学者。元ハーヴァード大学教授。1950年プリンストン大学にて「倫理の知の諸根拠に関する研究」で博士号取得。コーネル大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)を経て、1962年ハーヴァード大学哲学部教授に就任、哲学科主任を経て、1991年より名誉教授。ほかの著書に『正義論』(改訂版、川本隆史・福間聡・神島裕子訳、紀伊國屋書店、2010年)、『万民の法』(中山竜一訳、岩波書店、2006年)、『公正としての正義 再説』(エリン・ケリー編、田中成明ほか訳、岩波現代文庫、2020年)、『ロールズ政治哲学史講義』(Ⅰ・Ⅱ、サミュエル・フリーマン編、齋藤純一ほか訳、2020年)などがある。

「2022年 『政治的リベラリズム 増補版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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