- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000258364
作品紹介・あらすじ
世界各地の屠畜現場を取材してきたイラストルポライターが抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。見切り発車で廃屋を借り豚小屋建設、受精から立ち会った中ヨーク、三元豚、デュロック三種の豚を育て、屠畜し、ついに食べる会を開くに至る。一年に及ぶ「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の本質に迫る、前人未踏の体験ルポ。
感想・レビュー・書評
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内容(「BOOK」データベースより)
世界各地の屠畜現場を取材してきたイラストルポライターが抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。見切り発車で廃屋を借り豚小屋建設、受精から立ち会った中ヨーク、三元豚、デュロック三種の豚を育て、屠畜し、ついに食べる会を開くに至る。一年に及ぶ「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の本質に迫る、前人未踏の体験ルポ。
屠畜という毎日口にする肉を得るために必須でありながら、誰もが忌避する話題に対してずっと真正面から向かい合ってきた筆者が、とうとう自分で豚を育て出荷しそれを口にするという本です。表紙に書いてある3匹の豚は筆者が手塩にかけて育てた豚達です。名前も付けて寝食を共にして愛情込めて育ててきた豚達の姿が本当に本当に生き生き書かれています。人格が有るように当然豚格もあります。のんびり屋、ずるい奴、いじめられっこ。彼らの姿はどうしても家畜ではなく愛すべき存在に見えてきてしまいます。次第に出荷に近づくにつれてページをめくる手も鈍って行きます。どんなに頭で理解していても彼らが食べられる姿を見たいわけでは無いし、出来ればそりゃあ楽しく暮らすムツゴロウ王国みたいな方が楽しいに決まっています。出荷といってもドナドナみたいに積んで終わりではなく、当然屠畜場で命を絶たれる迄見届ける訳です。自分だったらここが一番辛いと思います。何しろ自分で育てて遊んだ豚達が悄然とうなだれて列に並んでいる姿を見なければいけないんですから。畜産農家の人たちは美味しいお肉を供給する為綿々とこれを続け、屠畜業者の方々は安全で安心な肉を供給する為に努力している。これを忌避して可愛そう可愛そう、でもチャーシューメンは食うじゃあ道理に合わないわけです。その一連の流れを門外漢である筆者が体験記として書いたことは非常に意義が有ると思います。単純に文章としても面白かったし、関わった人たち、動物への敬意も感じられる本で読んでよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『世界屠畜紀行』の著者が、自分で豚を育て、食べるまでを綴った1冊。“情が移るから止めた方が良い”という忠告も受けつつ、でもそういった自分の感情もひっくるめて、食べるという行為に責任を持つということを体験したい、という、この人の「知りたいことに対して身体が動く」姿勢がとても興味深く、好きです。真面目な内容に混じるご本人の不器用さ、豚とのやりとりがまた笑えて、泣けます。日本における養豚産業の実態も、他人事としての紹介ではなく、自分が食用豚を扱う上で関わることとして描かれ、色々な意味で、「喰う」とはどういうことか、考えさせられます。つい最近荒川弘『銀の匙』4巻を読んだこともあって、そういう読書体験的なつながりも感じたり。
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「豚とのやりとりがまた笑えて、泣けます。」
blogで、ちまちま拝見していましたが、素敵過ぎます。早く「世界屠畜紀行」の続編出ないかなぁ、、...「豚とのやりとりがまた笑えて、泣けます。」
blogで、ちまちま拝見していましたが、素敵過ぎます。早く「世界屠畜紀行」の続編出ないかなぁ、、、2012/10/01
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いつも食べている豚肉が、どのように産まれて、どのように育てられ、どのように殺され、どのようにしてスーパーに並べられるのか・・・という素朴な疑問は以前から持っていました。気にはなっていたけれど、知るすべがなかった。というか調べるのがめんどくさかった。
著者はこの過程をみずから体当たりで体験レポートしてくれています。
めっちゃ興味深い内容でした。
まず交配のシーンから驚きの連続。それから、「屠畜場」で一日1000頭以上の豚たちが次々と解体されていくシーン。
グロさはなく、緻密な線描きのイラストからは、作者のまじめに伝えたいという姿勢を感じました。
でも何といっても、自分で選び、豚小屋作りから餌から排泄物の処理から涙ぐましい苦労をして育てた豚を最終的に食べるという行為?これを残酷という人は、じゃ何が残酷じゃないの?自分で育ててない豚を殺してもらって食べるのは残酷じゃないの?と、生きものの命を頂くということについてどうしても考えさせられます。
著者は、自分にわいてくる感情や、周りの人の反応を、わりと淡々と、時には「何やってんだ私」的に自分ツッコミしながらしながら、一歩引いて書いているところが好感もてました。
でも、きっちりと調べるところは調べていて、現在の食肉業界の現状についても知ることができます。例えば、現在はほとんどの飼料が合成飼料で、輸入トウモロコシを主原料に、抗生物質や、添加物もりだくさんのものであることとか、畜産農家の経営がどれだけたいへんなものであるかとか。。。とにかく興味深い内容でした。
作者の豚に対する愛と敬意を感じました。私もこれから、豚に限らず、すべての食物に感謝と敬意を込めていただきたいと思います。 -
屠畜という漢字も読めなかったけれど、
読み終わって自分が食べている豚が
どのような過程を経てスーパーに並ぶのか
垣間見ることができた。
三匹の豚と筆者の毎日は想像を絶するような日々。
たくさんの人たちの協力があってお食事会を迎えることに
なるのだが、彼女はたくさんの人に手を差し伸べてもらえる
素敵な人なのだろうなと読んでいて思った。
人に甘えることってとても難しいけれど、関係を築く時に
とても大切なことであると思う。
三匹に名前を付け、筆者に懐き、三匹三様に性格があり、
読んでいるだけで情が移り、殺していしまうところは
何とも言えない感情で胸がいっぱいになった。
けれど、筆者が食べた瞬間に三匹の永遠を感じた部分で
苦しい感情が解放された気分だった。
不思議な本だと思う。生きるって不思議です。 -
私が中学生の頃までは、実家の近くに豚を飼っている家が2軒あった。たぶん、1軒あたり2、3頭くらい飼っていたんではないか。
そういえば、幼稚園のとき、小屋を脱走した豚に追いかけられたことがあるな。思わぬところで記憶がよみがえってきた(汗)
今ではそんな飼い方をされている豚は皆無に等しく、清潔に管理された屋内で大規模な畜産がおこなわれているそうな。
豚を育てて、屠って、食べるという著者の行為はもちろん非常に興味深く、また、日本の畜産の現状について知らないことが多すぎた私にはたいへんためになる本でした。 -
内澤さんの本は、どれも 体当たりな体験談で 興味津々で 読み通せる。
今回も、一気に読み終え 胸も心も 満腹感でいっぱいだった。
普段 食べている肉 ひとかけらでさえ 無駄にせず 食さなければ と つくづく思った。-
「ひとかけらでさえ 無駄にせず」
一緒に過ごした動物を、有り難く戴くコトが出来るって素晴しい←私だと情が移って無理かも。。。「ひとかけらでさえ 無駄にせず」
一緒に過ごした動物を、有り難く戴くコトが出来るって素晴しい←私だと情が移って無理かも。。。2013/06/07
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