勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000296113

感想・レビュー・書評

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  • 犬に電気ショックを与える実験(セリグマンの学習性無力感の研究)のくだりで泣いた…。笑
    「学習された無力感」に苦しんでいる人は実際とても多いんじゃないかな。
    私はその次の「セルフハンディキャッピング」についての話がとても参考になった。自尊心を守るための心のメカニズムが、いずれは自分を苦しめる結果になる…。身につまされる思い。

    心理学的な視点から「学習のしくみ」だけを淡々と説明しているだけの本なのに、変に叱咤激励されたりするよりも励まされる気持ちになった。知的好奇心はあるつもりだけどどうしようもなく怠惰なうえ他人から指図されるのも好きじゃない、私に似たタイプの人におすすめ。笑

  • ■要約 :『考えることの科学』『勉強法の科学』『勉強法が変わる本』市川伸一著 より、KJ的にひも解いてみた。
     
     『世の中にある問題というのは、初期状態、目標状態、操作がはっきりとは決められないものが数多く』、『どのような手が使えるか…を考え出すことがたいへんなのである』。
     『何らかの認識にいたるというときには、つねに推論がからんで』おり、『考えてアイデアがいきなり湧いてくる…、けっしてそうではない』。これらとどう向き合うかというのはとても重要なテーマだ。
     
     問題を解くには、推論したり、創造したりする必要があるが、この際、『事実を関連づけていくことが決定的に重要な役割を果たす』ようである。
     うまい手は『知っている問題にもちこむ』ことといわれるが、そのためには、『知識を使って「この問題はどんな問題か」を把握』せねばならない。
     知識といっても表面的な知識ではない。『関連をもってつながっている』知識、『構造化された知識』や『スキーマ』でなければならない。
    『公式だけ覚えていても問題が解けるようにはならない』といわれるのも同じことだ。『方略というのは、それ自身を言葉で覚えていてもだめで、使えるようにならないと意味がない』からだ。
     
     また、問題は『解きながらそれがしだいに決まっていくということが少なくない』。解くうえでは、『定義や具体例を通じて意味を理解しておく』ことに加え、『手を使いながら、頭を使う』ことが大切であるとされている。
    『書くということを通じてこそ、人は自分の考えを進めたり、新しい考えを出したりできる』、『何も書かずにうなっているだけの人は、まずいない』、『「考えたことを書く」のではなく「考えるために書く」』ことが大事であると説かれている。『(文章ならば)移動したり、削除したり…、段落の順序を入れかえたり…』、『紙の上に図や式を書きながら考え…』など、『ジタバタしてみなければ解けない』。
     このような行為によって、『もやもやとしていたことがらが形をなしてくる/思いもかけなかったような新しいアイデアに思い至る』こともあるし、『表現するという行為を通して心の中にあるものが変化』していったり、『制作過程を通じて自分自身が変化していくことを感じる』ようだ。
     
     『「思考のツール(道具)」として使える推論に関する学問(論理学、確率論、推測統計学)』の活用も重要だ。人には『確率判断を求められたときに、それを代表性に置き換えて判断してしまうというヒューリスティックス』など、ある『考えに流されやすい心理的な傾向』があるからだ。『ランダム、標本抽出、大数の法則、相関などの確率・統計的な概念を用いたデータを扱い、現象を理解するといった方法論をとることにより洗練された解釈をする』ようになる。
     
    『学習は、量と質』、『量よりも、何が身についたかを気にかける』必要があるのだ。
    『いい仕事をしている人/熟達者/成績がいい人/良い成績の学生』は、『豊かな知識』『豊富な「問題状況のパターン」』をもっている、『トップダウン的な処理をする』、『統計学の訓練を受けている』などの傾向があり、『問題の考え方のセンスがいい』ようである。
      『人はついどのような考えに流されやすいか』ということと、人はどのように認識、解釈(ボトムアップ⇒スキーマ呼び出し⇒トップダウン)し、『考えを進めるかという指針』を知っておいたうえで、『経験から一般的な教訓を引き出し』たり、『自分で学習観や学習方法を作っていく』などしながら、『自分の知識をより完全なものに』していかなければならない・・・これこそが学びだ。
     
     心持ちとしては、『「いつかわかってやるぞ!」という気持ちを秘め』、『何か問題意識を感じて「なんとかしたい」と思うこと』など、『基本的には「理解したい」という方向付けをもつ』必要があるが、『「これをやればいい結果になる」という確信をもてる内容にすると同時に、「これなら自分でもできそうだ」という実行可能性の高いものにしないと、やる気は湧いてこない』。『外発的動機づけの視点からすると、何をめざしてやっているのか、目的・目標が見えにくいときにはやる気が出ない』、『内発的動機づけの視点からすると、知的納得感、達成感、進歩の実感などが満たされなければ、およそやる気になれない』が、『どの動機でもいいので、とにかくやってみることです。やってみたら、できるようになった、おもしろくなった、という経験をつかむこと』も重要であるとある。
     一方、『意味が理解できなくても手続きへの慣れを先行させたほうがいい』ことや、『伝統的な枠組みの中にどっぷりとつかる時期があってもいい』、『わからないことにじっと耐えるというのも、重要な学習』ともあり、とても人間的だ。考えるとはいかなることかについてより理解を深め、人の思考のくせを認めつつ、とにかく四苦八苦し、『自分なりに方略をつくっていく力』をつける・・・ということなのであろう。

  • それなりにまとまってて読みやすい。方法論より理論的な面が強いので、実践的な勉強法を知りたいのであればこの著者の『勉強法が変わる本』を読んだ方がいいかもしれない。もちろんこの本も十分役に立ちますが。

  • 認知心理学的視点に基づいて、勉強法を科学的に説明している本。

    科学的理論と実際の勉強の場面等を結びつけて書いてあり、わかりやすい。

    認知心理学の入門書の一つとしても最適であると思う。

  • なるほどです。関係書も読み進めたい。

  • タイトルの通り、学習というものを認知心理学の観点から捉えたものです。学習するとはどういうことなのか、どのようにしたら効率良く学習できるのか、モチベーションというものについての考察などが科学的に述べられています。薄い本で、内容も平易で読みやすいです。この本に書かれていることを参考にして今後も勉強に励みたいです。もっと早くに読んでいたかった良書です。これは勉強をする人、せざるを得ない人に広く読んで欲しいと思いました。お勧めです。

著者プロフィール

1953年東京生まれ。東京大学文学部卒業。文学博士。現在,東京大学名誉教授,帝京大学中学校・高等学校校長。中央教育審議会教育課程部会委員として学習指導要領の改訂に関わる。専門は教育心理学。認知心理学を基盤にした個別学習支援や授業づくりなどの実践に携わっている。著書に、『考えることの科学』(中公新書)、『学ぶ意欲の心理学』(PHP新書)、『学力低下論争』(ちくま新書)、『学ぶ意欲とスキルを育てる』(小学館)、『「教えて考えさせる授業」を創る アドバンス編』(図書文化社)など。

「2023年 『これからの学力と学習支援 心理学から見た学び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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