第三帝国の愛人――ヒトラーと対峙したアメリカ大使一家

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000610698

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  • 歴史
    ノンフィクション

  • ルーズベルトはナチの迫害を公的に非難することによる政治的損害がいかに大きく、またユダヤ人の入国かんんわの推進が大きな影響を引き起こすことを承知していた。アメリカの政治姿勢いかんで、ユダヤ人問題を移民問題とする火種を作ることになるからである。アメリカが大恐慌から立ち直ろうとするときのドイツのユダヤ人迫害はユダヤ人難民の大規模流入の恐怖を引き起こした。孤立主義者はナチによるユダヤ人迫害はヒトラー政権が行っている限り国内問題であり、アメリカn問題ではないと主張して、論争に別の側面を持ち込んだ。アメリカ国内のユダヤ人たちもこの問題で二分した。一方はアメリカ・ユダヤ人会議で、デモやドイツ製品ボイコットを含むあらゆる形の反抗を呼びかけた。ひときわ際立っていたのが、指導者のラビ・ワイズで、この組織の名誉会長だった。1933年になってもルーズベルトがいっこうに公的な抗議をしないので、彼の不満は募る一方だった。ワシントンに旅行中に大統領に面会しようとしたが、うまくいかなかった。「大統領が会うのを拒むなら、私は戻ってユダヤ人に雪崩のような行動を起こさせよう。私には切り札がある。その方がいい、これまで語らなかったことを今こそは無そう。神よ助けたまえ、私は戦うぞ」と書いている。もう1つの方は、アメリカ・ユダヤ人協会と連携しているユダヤ人のグループだった。協会長はプロスカウアー判事で、もっと穏やかな方法を望んでいた。騒々しい抗議やボイコットは、ドイツにいるユダヤ人にとって事態を悪くするだけだからだ。

  • ヒトラーが権力を手中にする過程の1933年に駐独アメリカ大使だったドット一家に関するノンフィクション。
    当時のドイツで他国人がどのように違和感を覚えていたのか、それは共有されうるものだったのか、などとても興味深いものだった。ソ連のスパイとなった娘マーサとボリスのことも気になった。

  • 言うまでもなく、ものすごく劇的な時代の劇的な場所について書かれた本だが、最も印象に残ったのは歴史的な大事件のどれでもなく、あまりにまっとうな小市民だった大使閣下の不幸である。誰もが断ったこの時期の駐独アメリカ大使という職をいやいや引き受けさせられたことで、彼は間違いなく不幸になったし、寿命を縮めた。ナチ連中もさりながら、昔ながらの富裕で奢侈な上流階級出身の同僚外交官たちによる軽視や妨害に、同じくらい足を引っ張られた。「誰も気づかなかったナチの危険性にいち早く警鐘を鳴らした」彼を、後世の視点からはとてつもない先見の明があったように書く向きもあるが、本書を読む限り彼は明敏と言うより、まっとうな感覚を持ち続けた古き良き善良な田舎紳士だったのだろう。とはいえ、前述したようにいやいや引き受けさせられた(しかもライフワーク「旧南部」の執筆を犠牲にして)にもかかわらず更迭という憂き目に遭ってのちも、反ナチの民間団体を立ち上げて活動した彼の「当たり前の善良さ」は、なまなかなものではないと言うべきだ。
    けして無能でも怠惰でも性悪でもなかったひとりの男が、にもかかわらず要らぬ悪意と妨害を買い、愛する仕事を完遂できず、愛する妻とは故郷への愛着を共有できず(妻にとっては故郷ではなかったのだからある意味当然だが)、愛娘の人生まで狂わされた。ひたすらに哀しい物語だった。

    ?〜2016/1/4読了

  • ナチス収容所、寛容さは弱さを招く、

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