- Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
- / ISBN・EAN: 9784001164176
作品紹介・あらすじ
サイモンはごく普通の高校生。ネットで知り合った「ブルー」に夢中で、自分がゲイだということも、ブルーにだけは打ち明けられる。ところが同級生のマーティンに秘密がばれ、クラスのアイドル、アビーとの仲をとりもつようにおどされてしまい…。
感想・レビュー・書評
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ジョージア州アトランタ郊外に住む16歳の高校生サイモンは、ネットで偶然知り合った同じ学校のブルーと、ともに正体を明かさないまま親しくメール交換をしていた。しかし、ある日そのメールを、同級生で同じ演劇部のマーティンに見られてしまう。マーティンは、彼に、ゲイだということを暴かれたくないなら、自分のアビーとの恋愛を手伝えと脅迫してきた。彼女は親友ニックの想い人だ。このことをブルーが知ったら、ブルーは、正体がばれるのを恐れて自分とのメール交換をやめるかも知れない。自分自身もカミングアウトのことを考えないといけない。隠したいわけでも恥じているわけでもないけれど、なぜかそれはためらわれる。そもそもどうしてカミングアウトしないといけないんだろう?ストレートならしなくてもいいのに???
普通の高校生サイモンが、ブルーとのメールのやりとりを通じて、ゲイとストレートに対する意識の違いに気づき、自分に正直に生きる選択をする物語。
*******ここからはネタバレ*******
サイモンは、普通の高校生。なのにゲイだっていうだけで特別視されることに疑問を抱きつつも、自分だってカミングアウトを躊躇している。
そして、「ストレートは初期設定で、カミングアウト不要」ってフェアじゃない。みんな平等にカミングアウトすべきだ。これは、人類平等化計画(ホモサピエンス・アジェンダ)だと考えるのです。
家族との関わりもいい感じに描かれています。
父親が、息子がゲイだと知らずにゲイを侮辱するジョークを言う。サイモンは、例えば、面と向かってデブって言われる方が、間接的に侮辱されよりもがマシだと感じます。
そして、ちゃんと気づいたお父親は、ちゃんと謝るいいお父親なのです。
母親は、息子がゲイだとわかった途端、男友だちと泊まるときの心配を始めます(逆に、女子一緒なら心配ないって)。そして、サイモンも、こういうことについて、きちんと話し合いが必要だと認めます。
姉は、ボーイフレンドと協力して、サイモンと"彼氏"が二人きりの時間を作れるように策を巡らせてくれます。
日本と状況が違って驚くこともありました。
ゲイに嫌がらせをする団体があって、そこに寄付をする人がいるということ。
高校生が自分で車を運転して通学すること。年令によって同乗できる人数が違うということ。
アトランタは、人種によって住んでいる場所が違うということ(今でもそうなのね?)。
サイモンは、女の子とも付き合えるし、アビーをハグして和める(そうなんだー。私が娘をハグして和むのと同じ?)。
最後に、サイモンがブラムと付き合い始めるところがすごくいい。見ているこっちも嬉しくなってしまうような微笑ましさがあって、素直に良かったねーと思えるのです。
デリケートな性の問題に触れるところもあるので、中学生以上からの読書をお薦めしたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん、この世界、アメリカのティーンエイジャーの学園物&恋愛物に馴染んでいないせいか、会話のテンポや登場人物のさまざまな絡みについていけず、全然見当違いな展開を予測していました。つまり、ブルーが意外な人物だったり、メールのやり取り自体がひっくり返るような裏があってサイモンが酷く傷ついたり、というような。湊かなえ的な。
これはもっと素直な恋愛物で、純粋に思慕が深まっていくプロセスを楽しめばよかったのね。自分のどす黒さ、反省。
アメリカの高校の演劇部、日本より素朴な感じも意外。
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はじめはスピリット・ウィークやジェンダーベンダー・デイや、オレオへの愛や、友達との過ごし方や、音楽など、今どきのアメリカの高校生の生活と文化ってこうなんだと思いつつ読む。
メールを交わすうちに、相手がだれだかわからないのに好きになってしまい悶々とする様子は、どんな性的志向を持つ人でも共感するだろう。
それから、主人公サイモンが自分がゲイであることをどう受け入れて生きるのか、そして何よりブルーは誰なのかも気になる。
結論から言えば、非常にいとおしく爽やかな青春ものになっている。
ヘテロセクシャルや同じ人種の人間を好きになるのがデフォルトって、おかしい!そう素直に思える人が世界に増えるといいと思う。
LGBTであることをからかったりバカにしたりする人物も出てくるが、主人公の友達も家族も教師も、ちゃんと受け入れて、変わらず愛し続けるところが素晴らしい。
現実はもっと厳しいこともあるかもしれないが、この主人公の愛されキャラが物語を動かしているので、絵空事の不快感はない。
何より恋が成就した喜びがストレートに伝わり、読んでる方も嬉しくなってくる。
本来なら悪役キャラのマーティンも、自身は白人だけど好きになった女の子は黒人で、友達に恵まれたサイモンに嫉妬していたと告白するところなんか、徹底的に悪いヤツにしないのもいい。
性表現に関しては普通の日本のYAと比べると生々しい感じもするが、読み終わってみれば、目くじら立てるほどでもないという気がする。高校生なら全然OK。中学生でも、こういう翻訳ものが読める子は精神と読解力が高いから、いいか、と思う。性的表現はあるが、性欲を煽る目的ではないとわかるだろう。『アラスカを追いかけて』ほどハラハラはしなかった。
翻訳は今どきの若者の喋りに近づけてあるので、読みやすいが、すぐに古くなる可能性も高い。 -
アメリカの普通のゲイの高校生が主人公のYA小説。
最初はアメリカの普通の高校生らしさを出してくる文章や雰囲気を苦手に感じたが慣れれば読みやすい。
恋も友情もキュートだしエグい差別やキャラクターはでてこないから安心して読める。
(ヘイトクライムのエグさはないけどマイクロアグレッションのエグさはある)
カミングアウトの非対称性とか、撃ち殺されるほどじゃなくても存在する差別や偏見だとか仲良しだけど面倒くさい家族とか「初期設定(デフォルト)」じゃない人の生きにくさとか、そういう部分は普遍。
当事者はもちろん、非当事者やいろんな子に読んで欲しい。
カミングアウトの重さがわからない非当事者が、というか「デフォルト」の部分を持つ人が「デフォルト」じゃない人を理解するのに役立つから。
映画『Love,サイモン 17歳の告白』の原作。
映画は観てないけど。
原題は英語圏のバックラッシュでよくみる「ゲイ・アジェンダ」をもじって「ホモサピエンス・アジェンダ」だから日本語訳が「人類平等化計画」。パッと見てわかりにくい。日本で通じる書き方は難しいな。でもプロモーションセンスが最悪の映画のタイトルよりはずっといい。
妹ちゃんとかテイラーとか脇役女子のスピンオフが読みたい。 -
ゲイの高校生のアウティングが描かれていると聞いていたので、しんどい話だろうと思って読み出した。
もちろん苦しいところもあちこちにあるけれど、思っていたよりずっと強くて真っ直ぐな物語で、すぐに夢中になった。
キラキラした青春小説であり、とってもキュートな恋愛小説でもある。
異性愛が"デフォルト"であることに怒り、苦痛を抱えるサイモン自身にも、様々な偏見がある。
一面的にならないように描かれているのがいい。
最後はボロ泣き。
訳もとても良かった。 -
ゲイの子の恋だからと特別なことなく、普通の恋物語として読めました。
あけっぴろげで、でも偏見もありつつの家庭がアメリカっぽくてよかったです。 -
高校3年生のサイモンはゲイであることをうっかりクラスメイトのマーティンに知られてしまい、公表する代わりにクラスのアイドル、アビーとの仲を取り持つように脅迫される。一人称の叙述が素晴らしい。
サイモンはSNSで知り合ったブルーにだけ自分がゲイであることを打ち明け、メールのやり取りをするうち会ったことのないブルーに恋愛感情を抱き始める。ブルーは同じ高校に通っていることまではわかっている。家族・友人との関係が何気ない日常生活の中で少しずつ変化していく描写が巧みすぎる。
YA小説だけどセックスに関する叙述もあり(描写はない)、中学生あたりにとってはちょっと刺激的かも。だからこそ、そういう年代に読んでもらいたい。BLではないリアルなゲイの少年の心の動きと彼の身に降りかかる事件。ゲイであることとストレートの違いは?大人でも考えさせられることは多い。 -
大学生の息子が、課題で原書を読んでいたので翻訳を探したらSTAMP BOOKSシリーズでした。
途中注釈がつけられている部分など、アメリカの文化を知らないと理解しにくいところも多かったですが、読み終わってみれば、「青春」を強く感じさせてくれる作品でした。
主人公のサイモンの演劇部の顧問の先生が、キャスト表を書き換えられた時の対応が見事。「男女の仲が良すぎるので注意してください」などという職員連絡が行われる日本の高校と大違いだと思いました。
YA世代におすすめ。