闇の中に光を見いだす―貧困・自殺の現場から (岩波ブックレット NO. 780)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002707808

感想・レビュー・書評

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  • NHKスペシャル「権力の懐に飛び込んだ男100日の記録」2010/2/28 を見ると細かい状況が理解しやすい。
    私が政治から想像するものは、ニュースで報じられる政治家の姿、失言をして記者に囲まれる姿、国会で批判する野党議員、外国訪問でジェット機から夫人と降りてくる姿、選挙演説の姿、記者会見の姿、握手を交わす姿。
    それくらいの、ニュースの映像しかない。
    首脳同士で何をどう話し合ったのか映像はなく、具体的でない大きな言葉で話し合いの結果が伝えられるのでよく分からない。
    それらは政治家で、官僚ではない。
    このNHKスペシャルでは、大臣副大臣の下の政務官、厚生労働省の官僚、地方自治体の市長、ハローワークの職員、自治体職員が出てきて、メディアで報じられる乏しい政治像が、もう少し具体的に想像する材料になった。
    遠いところから、身近になったかんじがする。
    最近こういう特集番組見ていない、撮影されてないのか?

    今ある問題に向き合う活動家が、こうしたら良いのにと考えた、それを国策としようとするが、1点から広まっていく中で薄まっていく。
    活動家がもつどうにかしなければという思いは、官僚、市長、自治体職員、が同じレベルで共有していないし、政策がどういう現状があってできたのか、その現状の何が問題なのか、そういう動機が一緒に広まらない。
    また、ハローワークは慣例的な職務が変わってしまうことの不安から変化を避ける。

    活動家は、ハローワークは職を求めている人の助けになる場所だろというが、ハローワークで働く人は自分の働く環境が大きく変化せず落ち着いていることが職員の安定に繋がっているので、失業者が困っているなら自分の働き方や仕組みを変えてどうにかしようという方向に進まないことがある。

    それは私の中にもある。
    何のためにこの仕事をしてるのか。
    生活の金を得るため?
    サービスの提供によって、社会の助けとなるため?
    この仕事内容が好きだから?
    この仕事をすることで自分の望む方向に進むため?
    社会のため?
    問題解決のため?

    活動家の活動理由は、生活の金を得るためではなく、問題解決、支援、問題提起のためだろう。

    私は生きていかなきゃと思って、高いお金ではないけど生活できる給与がもらえる職に就けるように進学し就職した。
    お金だ。
    そういう人はたくさんいる。
    生活のお金を稼ぐために就いた仕事によって得たお金で営む生活、その生活が意欲の低下や職場の人々と毎日よろしくやらなければいけないストレスによって荒んでいたら、一体何のため?と思う。


    しかし今、私は不安なことがある。
    その不安を抱える家庭が多いことも報道され社会課題となっている。
    この不安、どうにかしたいと思う。

    これを読んだ翌朝、バスの中で、当事者の気持ちになれない当事者対応の施設について、はて自分はどうだろうかと考えていた。
    そして、私が失敗したのは、当事者の身になれず当事者より自分の心を可愛がっていたからだと思った、私の心、私がどう存在するか、なんてことは、当事者に十分な対応をするということを核に考えれば、どうでもいいことであった。
    当時の私は認識がねじれていたと思う。

    その日、当事者第一でないことをしてしまった。
    そんなことをしてるつもりもなかった。
    考えが及ばなかった、目的や症状やらから、優先順位を考慮しないといけなかったが、それをしていなかった。
    自分のペースが崩れないこと、相手にクレームつけられないこと、が重要になっていて、苦しみの強い急を要する人を先にやることに思い及ばなかった。
    まさに、ダメな例だった。

    お金を得るために進学し就職したと言った。
    どこかでこれはどうにかしなきゃダメだと、課題を見つけてそれに取り組もうと思わなかったのはなぜだろう?と考えると、小中高、平日の日中は家と学校と部活でコンクリートの中にずっといる、それでは社会の抱える問題はなかなか見えづらい。
    平日の図書館で過ごす人とか、病院に通う人とか、買い物に行くのが大変な人とか、パチンコに並ぶ人とか、公園で幼い子を遊ばせる親とか、ハローワークとか、そんなことが見えない。
    高校で電車バス通学となると、大きな声を出す障害者と彼を落ち着かせながら何処かへ行く親子など生涯持った人をよく見るようになった。
    でも見える社会は狭く、狭いから毎日毎日閉じたクラスの中で関係に疲れてくるのかもしれない。
    部活より、社会見学、社会潜入とかの方が将来の方向性を決めやすいんじゃないかな?
    部活ってスポーツが一番、鍛えるんだ耐えるんだとなりやすいし先生が顧問になると労働時間が大変だから。

  • 4.18/97
    『仕事がない,住む家がないのは,自分のせい? 自殺は,止めようがない? いや,この社会が一人ひとりを追い詰めている! 解決の道はあるはずだ! 自殺,貧困支援の活動現場から見えた日本社会の課題,内閣府参与の立場から感じた構造的問題,そして,「生き心地のよい社会」への希望を徹底的に語り合う.注目の対論!

    ■編集部からのメッセージ
     清水康之さんと湯浅誠さんは,「自殺」と「貧困」の現場で,当事者に即した支援活動を展開し,大きな変化と影響をもたらしてきました.お二人ともに2009年秋,内閣府参与に就任したことは,新政権の新たな姿勢を示す出来事としても注目を集めたところです.多忙極めるお二人ですが,2010年1月下旬,本書のために5時間に及ぶ対話をしてくださいました.
     この10年あまりの間に,急増した自殺と貧困.なぜ,このような事態に陥ってしまったのか,また,その背景にどのような問題が横たわっているのか,本書では,長年現場で活動してきたお二人ならではの興味深い分析がなされています.
     また,2009年末から2010年始にかけて,相談窓口の一本化を試みた「ワンストップ・サービス」や年末年始のいわゆる「公設派遣村」がどのように実施されたか,報道と事実のギャップ,政府の中に入って感じた壁や疑問などが率直に語られ,貴重なドキュメントともなっています.
     市民活動はどうあるべきか,社会的な問題をどう解決していくべきなのか.幾多の困難にぶつかりながらも挑戦を続けてきた二人が語る言葉の一つ一つが,強い説得力を持って迫る一冊です.』(「岩波書店」サイトより)


    『闇の中に光を見いだす―貧困・自殺の現場から』
    (岩波ブックレット NO. 780)
    著者:清水 康之 , 湯浅 誠
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    単行本 : ‎64ページ
    発売日 ‏: ‎2010/3/11

  • 湯浅さんと清水さんの対談。本筋とは関係ないけど、割れ窓理論の例で暴走族になる前に服装が乱れているはずだという例がしっくり来た。社会福祉士関係で単語だけ覚えていたので、例で理解できて嬉しい。

  • 岩波ブックレットで短時間でさくっと読める。東日本大震災発生前、民主党政権交代で俄に社会が変化を求めて湧いていたであろう2010年の対談を収録したもの。
    この頃から政治と社会は停滞し続けているというか、彼らが当時政治の中に入って直面していたあらゆる問題点が、結局民主党政権の終焉と共に固着化してしまった印象。

    官僚主導の行政を政府が弱者のために動かすことの難しさ、貧困対策事業において当事者の側に立たずに表面的に叩く世論の的外れ感、市民団体を行政がサポートしていく構図をどう作っていくか、カネの話にしてしまっても、貧困対策や自殺対策をすることが結局経済的損失を無くすことにも繋がるということ、空中ブランコに例えた自己責任主義の社会観など、読みやすい短編本にも関わらずエッセンスが凝縮していて、さすがは貧困対策と自殺対策の第一人者のおふたり。答えはこの段階では見出されていないが、この本から10年、今の問題認識を別の本から学ばなければと思わされた。

  • 『We』173号でインタビューを掲載した藤藪さんは、和歌山県の白浜で自殺志願者の救助と保護、自立に向けた支援の活動を続けている。この本の清水康之さんは、ライフリンクというNPOで自殺対策支援の活動をしている。"自殺"という事象をこの人はどんな風に語るんやろうと借りてきて読んでみた。

    清水さん、湯浅さんは、ちょうど同じころに「内閣府参与」として政権に入った、という経験をもっている人だった。清水さんは自殺問題で、湯浅さんは貧困問題で、それぞれワンストップサービス実施などに動き、そのなかで「当事者視点の欠如」を感じたというところ、どこがどう足りないかのたとえ話が、わかりやすかった。

    ▼清水 …当事者の立場に立ってかかわる人が必要です。自殺対策のことで言えば、自殺に追い込まれようとしている人たち、あるいは困窮状態に陥っている人たちは、闇夜の海で溺れているような人です。何とか岸にたどり着きたいと思って泳ぐけれども、暗いので岸がどこにあるのかわからない。泳いでも泳いでも岸にたどりつかないので、ものすごく疲れてしまっている。そこへ支援しましょうと浮き輪を浮かべたり、ボートを漕いで救出に行ったりしても、暗い夜なのですから、浮き輪がどこにあるかを照らさないと、溺れている人は浮き輪の存在もわからない。ボートを漕いでせっかく行っても、ボートの上でじっと黙ったままで、「いや、ボートを出しているけど、人が来ないんです」と言ったところで、来るわけがない。(p.44)

    「死にたいやつは放っておけばいい」のか?
    貧困問題は「本人の努力が足りないから」なのか?


    清水さんが、「いい高校に行って、いい大学に入って、いい会社に入って、いいお嫁さんをもらって幸せな家庭を、と、男の子であればコンコンと諭されてきたけれど」(p.20)と語っているところが、そんなに男の子たちはコンコンと諭されてるんかな?と私にはわからないのだった。"いいお嫁さん"て、どんな人なんやろ。

    (9/1了)

  • 110927onBS211清水康之氏
    ---

  • 日本の自殺者が急増したのは98年3月から。97年の決算期の直後。自殺の原因は、生活苦、多重債務、心の健康に集約される。
    自殺はきわめて個人的な問題であるとともに、社会的構造の問題でもある。
    12年連続で3万人が自殺する日本は異常である。

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著者プロフィール

ライフリンク代表。元NHK報道ディレクター。

「2013年 『現代思想 2013年5月 特集=自殺論 対策の現場から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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