「水素社会」はなぜ問題か――究極のエネルギーの現実 (岩波ブックレット)
- 岩波書店 (2015年8月5日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
- / ISBN・EAN: 9784002709314
感想・レビュー・書評
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世界の内燃機関自動車が消費する化石燃料は世界で産出される量の三分の一を占める。
環境負荷が無く無尽蔵に有る究極のエネルギーと喧伝されている''水素"だが、化石燃料と違い精製して即使用出来る所謂二次エネルギーでは無く水素を取り出して変換装置を介して電気エネルギーに替える必要が有る三次・四次エネルギーで、またその過程ではエネルギーを消費する。更には変換時にエネルギーロスが発生し実際に使用出来るエネルギーは元の二、三割だと言う。
環境負荷ゼロは、水素を消費すると水と酸素しか排出しないのだが水素を生産する上では何らかのエネルギーが必要で化石燃料や電気等、二酸化炭素を排出するエネルギーが必要となる。
本書は、水素エネルギーを主に自動車用途に絞って解説されており夢の様な水素自動車は、本当に夢で終わるのかも知れないと感じさせられた。コストや効率の問題も大事だが、やはり持続可能性だと思う。表向きの綺麗事で水素はキレイで実用化出来たと言われてもその背後にある製造過程では従来通りの環境負荷を掛けている訳だから。
本書で、人を1人運ぶのに1〜2トンの車を動かす事が既に非効率で非経済的だと。確かにその通りだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
配置場所:1F電動書架C
請求記号:501.6||O 97
資料ID:C0036900 -
同様のことは太陽光発電にも言える。10年分の太陽光電気代で太陽光発電パネルを作ることはできないだろう。所詮はコスト(費用)とベネフィット(便益)の問題である。私が知る限りでは武田邦彦が一番最初に、「国際的な脱炭素社会に向けた電気自動車への動きはトヨタ潰しである」と喝破した。
https://sessendo.blogspot.com/2021/05/15.html -
開発目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99781313 -
「水素は本当にクリーンなのか?」と言う問題に対してこれでもかと言うくらい論理的に、定量的に答えてくれているリーフレット。
水素社会とは、原子力発電が前提となっている。この辺りも政治的な動きを交えてよく答えてくれている。
我々は、今後のエネルギーをどう考えていくべきか。
本書はそれを考え始める最初の一冊にすべきである。
また、他の人が書いているように比較がないと言うのが残念。あと、最後の方に書いてある意見は確かに短絡的。おそらく筆者の専門外を不用意に発言した無責任なものなのだろうと思う。そのあたりは非常に残念だった。 -
水素を精製する、水素から電気を作る、そのような過程でロスが大きいから水素社会の実現は不可能というロジック。2018年時点で水素社会の実現がほど遠いという現状を考えればある程度正しいのだろうが、その他エネルギーのロス、例えば原油からガソリンや重油を精製する過程のロスやそこから発電して送電するといったライフサイクルでのロスについた詳しい比較が無いので、この論拠が正しいのかどうかの判断がつかない。また巻末に自動車のサイズダウンをする方が手っ取り早いというようなことも書いてあったが、日本のエネルギー政策を語るという視点に立てばあまりにも短絡的な発想ではないだろうか。
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(後で書きます)
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水素は発電効率が悪く、供給体制が整う道も全く見えていない。それなのに日本はなぜかお祭り騒ぎで燃料電池車を次世代車と讃える。違和感を感じていたが、政府が高温ガス炉という新たな原発の計画を考えていると知って、納得。ただ使用済核燃料や技術的な問題は山積みのよう。
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原理原則で考えて、真っ当な結論「自動車は小さく軽く遅く」。
自動車という固定的な概念や考えを捨てるべき時なのかもしれない。
目的は、人や物の移動を自由に低エネルギーで実現すること、与えられたエネルギーを無駄にすることなく、いまの自然環境も次の世代に残せること。
本は薄くても、実証的な数値データできちんと説明されている良書