時に音読したりしながらコツコツと読んでいたのが、これ。
小学生のころ、子ども向けとは言いながらも結構長くて難しいこの物語が大好きで大好きで。
この年になってようやく大人向きのものに挑戦した次第。
本を開くとまず解説。
それから凡例、第一巻の分の話の筋、第一巻の分の主要人物一覧、序文、10回分の目録となっています。
10回分で一輯。
この本は二輯分を収録しています。
いきなり物語ではないので、読んでいるうちに少しずつ思い出すこともありますが、大抵のことは忘れたまま。
特に室町時代が舞台になっていますが、この時代背景がさっぱりわからない。
結城合戦って何?
室町時代なのに鎌倉方と戦うとはこれいかに?
まあざっくり書くと、今の茨城県の結城辺りを治めていた武将が、室町幕府の鎌倉公方ともめて、結城氏と共に戦っていた里見氏の息子義実(よしさね)が命からがら海を渡って千葉に逃れてきます。
安房の国では神余光弘というろくでもない城主が、これまたろくでもない山下定包(さだかね)という部下に殺され城を乗っ取られ、調子に乗った定包の悪政に人々は苦しめられていたところでしたが、里見義実がさくっと退治して、そのまま城主となりました。
というところから物語が始まるのでありますが、きれいに忘れておりました。
いや、最初から理解していなかったのかもしれません。
大人になって読んでみると、義実、ものすごい理想主義者です。
前例主義の理想主義者なものだから、「今がチャンスだ!」って時でも「いや、待て」と。「歴史はそれを良しとはしていない」と。
こ、これは、三国志で言うところの劉備玄徳のようなお方。
智将も武将も従えながら(義実は落ちのびてきた小僧だから2人しか従えてないけど)、敵にしてやられてばかりの劉備玄徳。
「なぜだ!?」…坊やだからさ。
かくて劉備義実は、死ななくてもいい部下を死に至らしめ、娘を犬にくれてやるはめになるのであります。
当然妻はショックのあまり病に伏せり、いまや命は風前の灯というところでようやく義実、「そうだ、娘を連れ戻そう」と思うわけですな。
しかしいろいろとタイミングを間違える男金碗(かなまり)孝徳、やっぱりタイミングを間違えて義実の娘伏姫を助けに来たはずが撃ち殺してしまいます。
一度息を吹き返した伏姫は、「私は犬の子を孕んでなぞおりませぬ!」とばかりに腹を掻っ捌いてはかなくおなりになりました。ああ、男らしい。
ここまでが第一輯。
次はてっきり八犬伝と言えばこの方、犬塚信乃の出番かと思いきや、時代はいきなり遡って信乃のじいちゃんの時代にまで戻ってしまうのである。
信乃爺こと大塚匠作、信乃父こと大塚番作親子は敵に囲まれもはやこれまで。と、覚悟を決めたところ、大塚匠作息子に言います。
「殿より預かりしこの刀、逃げのびて生きながらえ、いつか必ずや殿の元へ届けよ」
「いや、父さん、なら父さんも生きて下され」
結局二手に分かれて生き延びた親子は、けれど亡き殿の御曹司二人がさらわれてしまったので、あとを追うわけです。
まだ少年の御曹司二人は、従容と運命に従い首をはねられますが、そこで飛び出す大塚匠作。
(なぜ生きているうちに飛びださなかったのかは不明)
敵をバッタバッタとなぎ倒すも多勢に無勢。最後はやられて、首を落とされてしまいます。
そこで飛び出す大塚番作。(またもや、なぜ生きているうちに飛びださなかったのか。全くさぁ)
そしていろいろ時は過ぎ、大塚は犬塚と名を改め、番作亡きあと信乃は同じく八犬士の犬川荘助と出会うところで第二輯は終わり。
“ともに番作が霊牌を拝しつつ、この日の事を告る折から、跫然(けうぜん)と足音して、外面(とのかた)より来るものありけり。この人は誰ぞ。看官(みるひと)三輯(さんしふ)嗣次(しじ)の日を等(まて)。さらに次の巻の端(はじめ)に解(とか)なん。”
この引っぱりようったら、少年ジャンプですか!
さて、明治の頃までは、読書というのは音読だったそうなのです。
つまりこの本も、音読にたえる文章、文体であると、文庫最後の「『八犬伝』を読むために」に書いてありました。
な~んだ、音読して気持ちいいのは当たり前だったのか。
時間はかかったけれども、面白かった。楽しかった。
ちょっとおちゃらけた紹介文になってしまったけれど、存分に楽しんだ証と思ってやってください。
次回からは気をつけます。
そうそう。
ちはやふるを「千剣振」と書いてありました。
古い言葉だけに、表記もいろいろなのかしら。