連環記 他一篇 (岩波文庫)

著者 : 幸田露伴
  • 岩波書店 (1991年2月18日発売)
3.38
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  • Amazon.co.jp ・本 (151ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003101292

連環記 他一篇 (岩波文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 幸田露伴『連環記』

     昭和16年発表、露伴最後の小説である。歴史考証と小説が混ざったた文であり、なかなかに面白い。露伴(1867〜1947)は中学校を家庭の都合で中退し、東京都図書館で独学したり、漢学塾にいったり、電信技師として働いたり、とにかく明治人らしい苦学した人である。漱石が学者から小説家になったのとは反対に、露伴は(電信技師をやめて)小説家として立ってから学者となり、京都帝国大学から博士号をうけている。『大蔵経』を読破したそうである。
     『連環記』は平安朝の物語である。牛車の牛がムチで打たれるのにも同情して泣いちゃう都人、慶滋(賀茂)保胤が出家して、なかなか荒っぽい増賀上人に教えをうけ、保胤(寂心)が弟子寂照をとって、寂照が宋に使いして、真宗に会い、蘇州で丁謂という高官に保護をうけ、宋で命を終えるという筋である。寂照は俗名、大江定基であり、三河の国守であったが、駅館の女、力寿(りきじゅ)にほれてしまい、妻を離縁するも、まもなく力寿も死んでしまい、出家したのである。定基と力寿を別れさせようと、赤染右衛門(歌人、女性)とか、その夫の大江匡衡らが、和歌を贈って諫めたり、孔子が離婚したかどうかと五経の知識で勝負したり(匡衡と定基は文章博士の家柄で両方とも儒者)、なかなか面白い記述がある。定基は死んだ力寿を葬るのに躊躇し、死体をしばらく安置していたのだが、ある日、死体に口づけして、「あさましい香」を嗅いで、泣く泣く葬るのであるが、これを露伴は人間の愛情の究極まで突きぬけたものとして扱っている。「解説」では南方熊楠の説も引かれており、熊楠はこれを「ネクロフィリア」(死体愛)の異常性欲として理解しているそうである。なんでも、「精神鑑定」して分かった気になるよりも、露伴のように人間のあり得る姿としてとらえた方がいいのではないかと思う。別れた妻と(僧として)乞食をしている寂照が再会する部分はなかなかに凄惨な文体である。
     併収の「プラクリチ」は明末に流行した「首楞厳経」の概説と、その解釈である。仏弟子アーナンダにほれてしまった不可触民のプラクリチが、アーナンダに恋い焦がれるあまり出家してしまい、出家したことで恋愛感情を超えてしまうという話である。露伴はプラクリチを娼婦とする解釈を退けている。母に頼んで魔術をつかい、アーナンダを呼び寄せ結ばれようとする場面も、そういう巫術を行う階級であったのかもしれないと解く。ここでも、博学を駆使ししつつも、極端な解釈をさけて、人間の感情をうきぼりにして、あり得る話だなと思わせる。科学主義もいいが、「深層心理の分析」や「カウンセリング」の名の下に、かえって人を追い詰め、生徒を自殺に至らせる「指導死」という事件もある昨今、露伴の小説から人間理解を学ぶのもいいのではないかと思う。

  • 表題作『連環記』と『プラクリチ』が収録されている本。
    『プラクリチ』の冒頭の恋愛とは何か、ということが書かれている部分がとても素敵だと思った。
    内容はどちらも難しい。
    理解できるだけの教養がないな、と反省した。
    それでも何度も読みたくなるのは、きっと途中の描写が面白いからだと思う。
    教養が高い内容なのに、描写はすごく身近なものを使っているのが可笑しかった。

  • たった76pなのに、壮大な絵巻物を眺めてるみたいだった...

  • 983夜

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