- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003106815
作品紹介・あらすじ
情にもろく貧乏で意気地なしの無名の画家を主人公とし、わがままでヒステリーの芸妓上りの妻との交渉を、軽妙な饒舌体で描いた自伝的作品。二人を囲む人物もみな善良で不幸な人びとばかり。人間の愚かさと悲しさをユーモラスに描いたこの作品は、『蔵の中』とともに作者(1891‐1961)の出世作となった。
感想・レビュー・書評
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http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003106814
── 宇野 浩二《苦の世界 1918-1921‥‥ 19520225-197207‥ 岩波文庫》
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7592964.html
五感と語感 ~ どこまで言って委員会 ~
http://pub.ne.jp/lot49/?entry_id=3840476
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『苦の世界』という題名からとっさに想像されがちなイメージと相違して、確かにヒステリーの妻やら金銭苦やら世渡り上手の友人やら困難は矢継ぎ早にやってくるのだけど、終りなくだらだら続く日々の中にもどこか悲喜劇じみたものがあり、悲壮感をさほど感じさせない物語で、読後には寧ろ生きるって憎みきれないもんなんじゃないのとさえ感じさせられたのだけど。
ただしそれは余裕のある時だけで、実際渦中に置かれてみれば、そんなわけないな、端からみてりゃそうだってだけで、重苦しさを与えないよう努めているだけなのだろうな、と思う。そんな薄い感想しかとりあえずは出ないけど、古い作家なのに宇野浩二はしゃきっとしていない(良い意味で)文体もとても魅力的で、現代になっても面白く読めるのではないかと思う。 -
金もなく、あてもなく、そういう時こそむしろ妙にぐうたらと過ごしてしまうし、なぜか妙に焦らないし、なぜか妙にヘラヘラしてしまうし、なぜか妙に危機感が湧かない。つまり何か/どこかを志向するのではなくただ行き当たりばったり、無為に彷徨っている(彷徨わざるを得ない状況によって)ことが、俯瞰して見た人生における矢印を消失させ、ただ生きているという素朴な存在になっている。というようなことを思った。縄文時代ならいざしらず、文明の整備された世界において貧乏でおると、とにかくめちゃくちゃ時間が有り余るのであり、贅沢な時間の使い方(昼まで寝る 昼から散歩する 暗くなるまで昼寝する 夜更けまで呑む)をすることができる。贅沢といま書いたが、貧乏なのに?はたして贅沢とは何か?苦の世界と言いながら、なんだか彼らは楽しそうだ。楽しそうと思わされつつ私はこうなりたいわけではないが。こうなりたいわけではないと思わされるということは、じゃあやっぱり「苦の世界」なのか。
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女の人が抱えた社会的な
あるいは生理的な理不尽に対する被害者意識の爆発
それをヒステリーと定義する人もあった
爆発してあふれ出るネガティブな感情の奔流には
秩序がない
秩序とは自律する構造である
世界の混沌をそういった形式に落とし込むのは
歴史家の仕事であり
物語作家の仕事なんだ
女のヒステリーに悩まされた人が面白おかしくそれを書くことは
理性によって彼女の心に平穏を取り戻そうとする男の
ひとつの祈りにほかならぬ
マジなんだ
だけど物語る行為にはいつだってうたがいの目がついてまわる
それゆえに嘘つきは
寂しい人とかせっぱつまった人ばかり狙うわけだが
それを思えば小説というのはじつにこう
罪のないものですな
信じるにせよ、信じないにせよ
こんなものを書いて商売にするアホな人も世の中にはいるんですよと
笑っていれば、読者にはそれですむ話なんだから
とはいえ、このヒステリー女は自殺したらしいんだけどね…
「苦の世界 その一」が発表された直後ぐらいに -
ヒステリーの嫁さんをクーリングオフしたのに次から次にヘンなヒトに出会って困るはなし。
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おもしろかった。ずっと読み続けていたいくらい。
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ダメ人間たちがくりなす悲しくもおかしい日常。リアルで考えてみたら悲惨な話なのに、それをやんわりとした文章で綴ることで、単なる私小説に終わらせない宇野浩二ってすごい。
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駄目人間の人情が可笑しく切ない。