山のパンセ(新選) (岩波文庫 緑 148-1)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003114810

作品紹介・あらすじ

詩人・哲学者串田孫一(1915〜)の、山をめぐる随想集。ページをめくると、独特の詩的で平易な文章で綴られた、山靴やスキーで野山を逍遙する著者の世界がひろがる。雪を待つ高原の一本の枯れ草まで魅力的な表情を浮かべている、著者自身が選び再編成した決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 松本で朗読と音楽「串田孫一 山のパンセ 星の手紙」 今の時代にメッセージ - 松本経済新聞
    https://matsumoto.keizai.biz/headline/3140/

    新選 山のパンセ - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b248930.html

  • 哲学者串田孫一が山・登山について書いたものから自選した随筆集。ABCの3部構成で、Aは山歩きについての随想、Bは山名地名を明記した紀行文、Cはかなり哲学的随想。
    若菜晃子さんの『街と山のあいだ』から流れ着いた本書なので、A〜Bはすっと読めたし、山の気持ち良い空気感もあった。Cは宮沢賢治の詩なども引用されていて、内容が深いとともにだいぶ哲学的な感じで、自分には少し難解だった。でも全体としてとても良い本だったので、折に触れ読み返すことになると思う。

  • 私たちの心と体の世界との繋がりかたは、コンディションに左右される。街中で見かけてもただの石コロとしか感じないものも、独り山を歩き、ふと腰を下ろして手に取ると、なんとも味わい深いその肌理が、大自然の一部として語りかけてくるようなときがある。この本は、そんな世界に向かって拓かれたエッセイである。興味深いが、刺激が多く慌ただしい日常の中で、グイグイ読ませる吸引力があるわけではない。自然と向き合い、自己と向き合う内省的な時間のなかで紡がれた文章には違いないが、それを日常生活者向けにアレンジして味付けするような忖度をしていない。あくまでその世界のなかで、その世界の言葉で語っている。

    たまには、この本をゆっくり味わえるような時間を持ちたい。なんなら、自分で自然の中に出かけていって、こういう時間を過ごしたい。そこでエッセイやスケッチでも書けたら、他に何も言うことはないという気がする。

  • 読むのは何度めかなのですが、いつも頭に入ってくるのはごく一部です。イメージとしては、すこしはなれたところでぼそぼそとひとりごとを言っている串田さんの話を、なにか別のことをしながらうん、うん、と聞きながしている感じです。
    でもそれでもいいのかもしれません。心地よい本です。
    さいきんわたしも、小鳥や木に、友人のように親しみを感じることがあります。今回あらたに注目したのは、串田さんは岩にもかなり親近感を抱いていることです。こんど岩にお会いしたらわたしもそういう目線で見てみようかな、と思いました。なんだか頼もしい友人になってくれそうです。

  • A章の「山村の秋」、「山の夜風」が好き
    B章のリアルな山行の様子に追体験してるような感覚を覚えた
    C章は精神描写が多くて抽象的な山だったり、机上の山で難しかった

    鳥や花や虫の名前をいっぱい知ってて私も詳しくなりたいなって思った
    鳥の鳴き声だけで分かるのすごい
    それだけ山に登ったんだなぁ

  • 大学生以来の再読です。改めていい本だなぁ。筆者と同じように感じる事が沢山あります。それがどれとは枚挙にいとまがなく、ネタバレにもなるので割愛しますが、確かに、自然と接して、1日に幾つかの驚きと出会い、心に暫く持続し、僕を形作る一部になる。そんな一日は最高です。
    僕は山には登りませんが、毛鉤で渓流を釣り上がって、車に戻りながら1日を振り返ったとき、こんな経験をできた日は、本当に最高です。

  • 電車で登山者姿を見かけると、ある種のあこがれと不思議さが同居した思いがなぜか沸き上がる。
    亡父が山の写真を見るのが好きで、飽きもせず何時間も写真集を眺めていたのを思い出しますが、登山もしない父がなぜそれほどこだわっていたのかという肝心な理由は聞きそびれたままでした。また、昔の友達に冬場の過酷な山登りにばかり挑戦していた人間がいました。
    私も富士山にチャレンジしたことがありますが、8合目で軽い高山病の症状がでるというヤワさに、結局登山の楽しみを見出せず、なぜ登山家があえて不便で疲れる環境に身を置きたがるのかという疑問が解消できないまま時ばかりが経ってしまいました。
    本書から解答が得られたかと言えばノーですが、ヒントはありました。
    筆者がなぜ冬山に登るのか問われ、
    「自ら求めて苦しみの中に入る愚かさ。それも、人間社会でもみくちゃになる苦しみではなく、相手は大きな自然、人間の行動に対して何の手心も加えることのない強烈な力と差し向いになって、体力やその場その場での正しい判断、我慢強さ、そういうものを自分から進んで試そうとする愚かな行為が、実に尊い行為に思える」(P100)
    「自分の前に両手を広げて立ちふさがるような困難が、それを乗り切れる自信が湧いてきたとき、どれほど胸を騒がせ、高鳴らせるものか。私は、秘かにそういう機会に巡り合うことを願って山に出かけているような気さえする」(P232)
    命を懸けて困難を乗り越えた「達成感」と「自然との一体感」なのか!?
    未だ、山で食べる弁当は好きだが、だからといって山に登りたいとは思わない私には永遠の謎です。
    1995年の本書は、「山のパンセⅠ~Ⅲ」までを筆者が厳選して編集しなおしたものです。筆者は10年後の2005年90歳で亡くなっています、合掌。

  • あとがきに中学時代の串田さんが登山を好んでいた理由が書いてあるが、ここが一番自分が登山を好む本質をはっきりと文章化してくれているように思い、大きくうなずきながら読んだ。
    内容はABCと3つのパートに分かれているが、私は特にAの山を歩きながら思ったこと、の部分が気に入っている。

  • 読み始めてから、ちまちまと読み進め気付けば10年以上過ぎてしまった。歳を重ね各エッセイから受ける印象も随分と変わったように思う。読み始めの頃は時折山に出かけたが最近は随分足が遠のいている。これをきっかけにまた山に行ってみようかな。

  • 山のパンセシリーズから自選で一冊にまとめた文庫本。A.B.Cに別れていて、Aは山と人、山の素直な描写が多く、Cは想念的なものが多かった。岩についての考察が良い。言われてみれば、人間は、死んでも他人を縛りつけてしまうもんなぁ。山もスキーも私には殆ど縁がないけど、たまに自然に関する文章が読みたくなる。

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著者プロフィール

哲学者・詩人・随筆家

「2022年 『寺田寅彦随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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