わが町・青春の逆説 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 89
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003118535

感想・レビュー・書評

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  • 『わが町』
    家族愛と男の浪漫がある良い話で終わっててほっこりの宿酔がのこる。なんでこれ書こうと思ったんだろってニコニコしちゃった。『夫婦善哉』の別視点もあるのもめちゃくちゃサービスじゃんって喜んだ。君枝の青春に対する謙虚さ頑なさみたいなところに『姉妹』の伊都子に通ずるものを感じた。

    『青春の逆説』
    『雨』が元になってるのがわくわくした。学生時代よりも社会に出てからのが周りの環境のせいもあってか生活への刺激が多くて、これが豹一の青春てことなのかな。作之助自身のことをなぞってるようで、実際にはなかった夢みたいなのを豹一に詰め込んでるようで、いいなと思った。どんなときでも母のことを思い出されるのが郷愁なのかな。豹一の性格、行動がなんか身につまされる思いで読んでた。


    作之助はどのキャラのことも丁寧に扱ってて好き。それにやっぱりすごい「生」を感じる。どこまでもリアルに近いフィクションって言われてるけどその通りだと思う。

  • わが町は傑作。何度も繰り返し読みたくなる。

  • 不器用ながら規律規範から逆行して生きようとした青年を描いた『青春の逆説』。ほのぼのとした下町の情景を巧みに描きつつ、そこに住まう人々の暖かい交流を描いた『わが町』。

    短編小説を得意とするオダサクには珍しい、中編~長編の小説だ。
    じっさい作者はこの2作品に心血を注いでいたようで、『青春の逆説』が当局から発禁処分をうけた後は道頓堀~心斎橋界隈を放浪していたとかw

    オダサクの作風の一番好きなところは、浪華節を利かした愉快な関西弁。その情緒深い、ユーモアあふれる会話文に、いったいどのくらいの東京人が魅せられたことだろう?関西弁がとってもステキ。
    あと、作者の故郷への愛にほのぼのする。道頓堀・二ツ井戸・心斎橋・・・下町の盛り場の夜店、極彩色の行燈、どて焼き・豆板屋・こんぺいとう・しっぽまであんの入ったたい焼き・・・一文読めば一文に驚く(BY正岡子規)とはこのことだと思った。
    そしてオダサクの作品には、『放浪への哀愁』がしみじみと寂しく感じられる。これがデカダンスなんだな。

著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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