駱駝祥子: らくだのシアンツ (岩波文庫 赤 31-1)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (407ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003203118

感想・レビュー・書評

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  • 家にあった本。そういえば、中国人作家による中国近現代のことを書いた小説を読んだことがないと思い、興味深く読んだ。
    作者の老舎は1899年生まれ。先祖代々北京に住み着いていた生粋の北京っ子。この小説の舞台は何年頃のことなのかはっきり書いてはいないが、発表されたのが1937年。調べてみると、中国国内では国民党と共産党の分裂、日本との戦争、抗日運動、労働運動…などややこしい時代である。
    主人公は祥子(シアンツ)。駱駝というのはあるエピソードから付いた渾名。シアンツは貧しい農村で生まれ育ち、早く両親と死に別れたので、18歳で北平(ペイピン…今の北京)に出てきた。
    持ち前の屈強な体を活かした車引きが一番自分に向いた仕事だと思い、「車引きをやるからには自分の車を持ちたい」と、借りた車で毎日、一生懸命働き、切り詰めて、自分の車を手に入れた。
    ところが、車を手に入れて早々に、彼は兵隊の一団に捕まり、車も取られてしまう。落ち込むがもう一度頑張って車を買おうと、頑張って働くのだが、せっかく貯めたお金も警察に巻き上げられたり、車貸屋の娘と望まない結婚をすることになったり、本当についていない。
    浪費家で車引きという商売など軽蔑しているが、経済的には彼を助けてくれた妻がお産で子供と共に死んだ時、医者代や祈祷師代、葬式代に全財産を使い果たし、その上自分の跡継ぎまで産まれなかったということに絶望し、それでも車引きは続けるが、かつての一人真面目なシアンツではなくなり、仲間と喋ったり、たまには博打を打ったり、酒を飲んだり、その日、その日を楽しむようになった。
    それはそれでまだ良かったのだが、ある日唯一愛していた小福子という女性のことを思い出し、一緒になってもう一度頑張ろうと思い立つが、彼女が淫売窟に売られ、自殺したことを知り、働く目的も無くし、自暴自棄になる。
    車引きは続けるが、客からぼったくったり、他の車引きの客を横取りしたり、若い頃なら絶対にやらなかったような汚いことを進んでするようになる。その日、その日暮して行ければいいと、働く時間も短くなり、そのうち歳をとって本当に車を引くことも出来なり、デモや葬式の行列に参加して謝礼を貰うだけの生活に落ちぶれて行く。
    当時の北京の凄まじく貧しい人々の生活が描かれでいるが、お金が無いだけならまだ耐えられるのだろう。希望や心の拠り所やアイデンティティを奪われてしまうことが人にとって一番不幸なことなのだと分かる小説だった。
    激動の中国史の中での一人の貧しい人の人生を書いた小説だったが、作者の老舎自身は、1966年の「プロレタリア文化大革命」の時に「反革命分子」として暴行を受け、入水自殺したらしい。作者自身も激動の中国史の中で流され、犠牲になった一人だと思う。そんな生涯の中で貴重な作品を残してくれて良かった。

  • 小説は自分以外の人生の疑似体験。祥子は運の無い男、それは間違いない。努力が報われずとも悩みながら前を向く。不安と戦い無力感に打ちのめされても生真面目さが顔を出しまた前を向く。その原動力は他人との繋がり。一人っきりの人生、お金に支配された生き方は、祥子自身が自分の人生に絶望したことが原因だったのではないかな。今だって一つの失敗から陥りかねない人生のようにも思えるが、人生に希望を持つ方法が書かれていないところが長く読み継がれる一因かもしれない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/707024

    車夫の祥子青年を主人公に、
    貧困層にある裏町の住人たちの悲喜哀歓が描かれた中国の物語。

  • 【展示用コメント】
     無学で貧乏であるからこそ、そこから這い上がろうと純粋で一途な未来を夢見ていた主人公は、何度も何度も苦難にであいます。そのたびに夢を実現するために、不屈の闘志で立ち上がります。しかし繰り返される現実の理不尽さについに主人公は……。読後、自分の悩みなんて、ちっぽけなものと感じるかもしれません。

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2000554941&key=B154528592931447&start=1&srmode=0&srmode=0#



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】
    ・千夜千冊で

  • 車夫である駱駝の祥子の顛末。素朴な田舎育ちが都会で辛酸を嘗める。素朴に抱いていた夢の限界と現実。ボリュームがあるので読み応えあり。後半は馳星周のノワールを思わせる。貧困が招く不幸がノンフィクションとは違うアプローチで描かれていたと思う。ボリュームあるので色々なことを考えられる。私小説っぽく書いてなくて、社会との関係で描かれている。その辺が、人間関係含め周囲がよく見えてよかったと思う。

  •  北京の貧しい胡同で生まれ育った老舎だから書けた小説。一人一人の人物描写が豊かで複雑、表現に使われる比喩を胡同の日常生活の中から拾い出している、底なしの庶民の苦悩を描きながら庶民のたくましさも感じさせてくれる——見事の一言に尽きる小説。文革で自尽しなければ、アジア人初のノーベル文学賞を受賞していたかもしれないという話もうなずける。

  • 誰もがルンペンプロレタリアートになりかねない時代。

  • 宮本輝さんの本に出てきたので、興味を持って読みました。つらいこと、理不尽なことが、人間を打ちのめし堕落させ生きる希望を失わせる過程を見せつけれられました。

  • 973夜

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