- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003210253
感想・レビュー・書評
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名作中の名作。
読んで良かった。 -
ロシア軍のブチャにおける蛮行のニュースを観た後で、「血湧き肉踊る」クライマックス・シーンを読んだ。
平時なら、僕だって楽しく読めたのかも知れないが、今読むと悍ましさが鼻を突く。
どうみても、求婚者達の攻撃に対するオデュッセウスの反撃(復讐)の刃は過剰であり、あまりにも悦びに満ち満ちている。
やはり、ロジェ・カイヨワが『戦争論』で書いた通り、人間は戦争が好きなのだ。人間とは、ホモ・プグナ(戦う人)なのかも知れない。
いずれ、遅かれ早かれ、その脳内に埋め込まれた致命的なプログラムゆえに、人間は滅びるだろう。
同族を殺戮する悦びに打ち震えながら。
残念ながら、蝶とちがって人間は決して「変態」できないのだから。
【1人の殺害は犯罪者を生み、100万の殺害は英雄を生む。数が(殺人を)神聖化する。】
チャップリンの映画『殺人狂時代』の名台詞だが、ホメロスの物語には「英雄」が多過ぎる。 -
迷い込んだ神の領域から実家に帰るために頑張るオデュッセウス。
上巻からずっと空想上の地での話だったが、物語後半でようやく実際に存在する地名が出てきて「オデュッセウス、とうとう帰ってきたんだな!」と感慨深くなった。
なお、ようやく現れた実在の土地はアレクサンドロス大王のお母さんの地元で、なんだかそれも興味深くて面白いなと思った。 -
2021/5/11
苦難と安寧を繰り返すオデュッセウスの旅は寄せては返す波のよう。そんな旅を終え、求婚者を皆殺しにし、苦難を乗り切った末に妻ペネロペイアに再開した彼は「これからも苦難は待ち受けている」と語り、決して楽観視することはない。人生とはそういうものだという達観した見方である。また、愉悦に浸る求婚者たちは黒き死の運命に飲み込まれる。刹那的な生き方は良くないという教訓である。
これは一例だが、西洋人はこういった観点から、本書を道徳書とし、その彼らの精神の淵源としたのではないかと勝手に想像している。 -
前半十二話から成る冒険譚と、後半十二話から成る復讐劇。豪華二本立てといった趣き。
個人的な好みで云えば、前半の奇々怪々な冒険譚の方を胸熱く読んだが、下巻の復讐劇が無ければオデュッセイアが物語として成り立たないわけである。
一方で上巻が無ければ単なる復讐劇でしかなく、この二本立て様式の、構成の妙は唸らされる。