ハムレット (岩波文庫 赤 204-9)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003220498

感想・レビュー・書評

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  • 叔父による簒奪は壬申の乱など古今東西繰り返されているが、ハムレットは復讐劇としては徹底していない。ハムレットは復讐に真っ直ぐに進むわけではない。ハムレットの父には飽食の罪があった。ハムレットは「父は飲食に飽き」と語る(シェイクスピア作、野島秀勝訳『ハムレット』岩波書店、2002年、190頁)。

    文学作品における飽食の罪は、物理的な行為だけでなく、精神的な側面も象徴する。欲望の無節制、自制心の欠如、他人や環境への無配慮さなど道徳的な側面を強調する。飽食が罪として描かれることで、人間の弱点や誘惑に対する警告として機能する。

    飽食の罪が文学作品で取り上げられる背景には物質文明や社会の浪費的な側面がある。物質的な享楽に溺れることで、人々は精神的な充足感を見失い、倫理的価値観を軽視する危険がある。この点で文学作品は社会のバランスや健全な生活様式の提案として機能している。

    飽食の罪は、登場人物の性格描写や物語の展開に重要な役割を果たす。登場人物がこれらの罪を犯すことで、その人物像が深化し、物語の展開に影響を与える。たとえば登場人物の転落や試練の過程が、その人物が飽食の罪に陥ることで象徴的に描かれる。

    文学作品が飽食や暴食の罪を扱うことは、読者に道徳的な教訓を提供し、自己啓発を促す役割を果たす。登場人物がその罪から教訓を学び、成長していく様子は、読者に自己改善や倫理的価値観の再評価を促す要素として作用する。

    飽食の罪が文学作品で取り上げられる背後には、人間の欲望や倫理的な葛藤、社会的なバランスなど、様々なテーマが含まれている。文学はこれらのテーマを通じて、読者に深い洞察や教訓を提供し、人間の本質や行動の意味について考えるきっかけを与える重要な役割を果たしている。

    ハムレットの第五幕第一場でハムレットは墓掘り人夫によって掘り出された宮廷道化ヨリックの頭蓋骨を見せられる。ハムレットは子どもの頃にヨリックに遊んでもらった。ハムレットは頭蓋骨を手に持ち、人生は無常だとホレイショに語る。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ではシャレコウベが重要なアイテムになっている。ハムレットの影響を受けたのだろうか。

  • 名言ばかり。

  • 上演舞台の台本と考えると、舞台上と同じくらいのスピードで読みたいと思う一面がある。他方で、「ハムレット」のような、その人物像であったり、登場人物がどこまで事実や真相を知っていたのか等について、非常に様々な見解が示されてきた作品については、そうしたことについてもある程度知りたいという思いもある。まして、外国の、時代を隔てた作品であるだけに。
    本書は、かなり詳細な訳注や補注が付されており、二読、三読で、理解を深めたいという場合には、大変お勧めである。

  • デンマークの王座をめぐる復讐悲劇。
    父王を殺された王子ハムレット。
    王を殺害し、王妃と結婚して王座を手に入れた王弟クローディアス。
    国務大臣ポローニアスの娘オフィーリアとハムレットは恋仲であったが、その恋は引き裂かれ、ハムレットはクローディアスへの復讐を決意する。
    狂気を装うハムレットに失望したオフィーリアは入水自殺?し、それを知りハムレットに復讐しようとする兄レアティーズ。
    レアティーズにハムレットを殺害させようとクローディアスはたくらみ、毒を塗った剣で対決させるが、そのもくろみは失敗し、ハムレット・レアティーズ・クローディアス、王妃ガートルード全員が死亡。

  • ・主人公ハムレットの人格が魅力的だった。不貞の罪を犯した母への忌まわしさと、その母の血が流れている自分自身の穢れの感覚に煩悶しながら復讐に進む主人公には、若者らしい潔癖さと深情の優しさが感じられた。狂人を装いながら、度々口にする気の利いた皮肉も、大学生だという主人公の知性が表れていて、魅力的だ。
    ルルーシュみたいな感じ、と言うと卑近すぎるかもしれないけど、ググると製作陣も意識しているらしい。
    ・後述の脚注で逐次説明されているが、繰り返し登場するキーワードやイメージが、表現を強力にしていて、巧みだった。
    ・クライマックスの剣術試合は、サスペンスの効果が巧みで引き込まれずにはいられないし、青年二人の決闘は、問答無用で格好いい。ハムレットには黒、レアティーズには白の衣装で戦ってほしい。(ルルーシュとスザクみたいだけれど…。)
    ・演劇ならではの効果(が発揮されているであろう箇所)は、想像力を働かせないと理解できない部分が多いように思った。シェイクスピアが活躍したグローブ座は、東京にも再現されているらしいので、いつか行ってみたい。普通イメージする劇場と違って円筒形をしていて、平土間は屋根が無い(空が見える)。
    ・内容からは離れるけれど、脚注と巻末の補注を使って、原文のダブルミーニングや構成の妙、時代背景等々を解説してくれているので、理解を深めるのにとても助かった。注であっても、訳者の熱意が伝わる書きぶりで、退屈ではないと思う。ただ、底本がどうだという話も多いものの、門外漢なのでそこは追う気力が無かった。

  • 作品についてではないのですが、注釈のところが気になりまりました。舞台となった城はユトランド半島にあると誤解されているようで。

  • 再読。最初に読んだのは中学の演劇部で文化祭にやったときでした。

    野心家の弟が兄王を謀略で殺害しその妃を娶るというのも、兄王の息子が復讐をするというのも古典的ありがち設定だけれど、復讐者ハムレットが血気盛んどころかナイーブでメランコリックなあたりが、いつの時代もこの主人公が「現代的」と感じさせられる所以。父王の亡霊に葉っぱ掛けられてしぶしぶ、って感じで、若干迷惑そうなところが(苦笑)。むしろハムレットに父を殺されて復讐せんとするレアティーズのほうが、昔ながらの主人公ぽい。

    ラファエル前派の絵画における美しいイメージが強いオフェリアの死は、戯曲内では王妃の口から語られるのみ。現代と貞操観が違うため、父親のいいなりになる彼女の言動は共感しづらく、あまり同情する気にならなかった。

  • 授業で使ったため、部分的に読んだ。
    最後のセリフ回しには衝撃が走った。
    時間があったらもっとじっくり読んでみたい。

  • 名作って言われるものですけど今更ながら読んでみるとそりゃもう・・・残酷な終わり方ですねパッとしないというか読んでてスッキリしない感じでした復讐は果たせてますがね・・・・ロミオとジュリエットを書いた人と同じとは思えないほど暗くてドロドロしたお話でした

  • 登場人物が皆特徴的で、面白かった。

    解説には、ハムレットは本当に狂っていた、と書いてあったけれど、本当なのかしら…?
    私は、あくまで普通で、常軌を逸したのはオフェリアの葬儀のときだけと感じだけど…。

    個人的には、クローディアスがなぜ元国王を殺害したのかが気になる。
    それは果たして王という座が欲しかっただけなのか、それともガートルードのことも手に入れたかったからなのか。

    やはりこれだけ長い戯曲なので、解説ももっと長くても良いと思う。
    登場人物のもっと詳しい考察が知りたい。

著者プロフィール

1564-1616。イギリスの劇作家・詩人。悲劇喜劇史劇をふくむ36編の脚本と154編からなる14行詩(ソネット)を書いた。その作品の言語的豊かさ、演劇的世界観・人間像は現代においてもなお、魅力を放ち続けている。

「2019年 『ヘンリー五世 シェイクスピア全集30巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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