- Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003242711
感想・レビュー・書評
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美しい青春が行き過ぎていく一瞬を、
ほろ苦く鮮やかに切り取った佳編。
心の欠片をひとはその季節にひっそりと埋めて、
訣別していきます。
何年経とうとその欠片は、純粋な輝きを放っていると信じて私たちは人生を生きていくのですね。
もう、振り返ることさえ出来ないこと。お気に入りの箱にしまった古い手紙やブローチのように何度も見つめては愛おしむこと。
そのどちらをも含有した季節。青春―。
どんな世代の人が読んでも、何かしら共感する純粋さや寂しさを湛えた名作だと思います。
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マイヤー=フェルスター(1862-1934)による戯曲。1901年作。19世紀後半の旧き良き大学街ハイデルベルクを舞台にした、いつだって過ぎ去ってしまうばかりの永遠の一瞬のような青春時代の哀歓。学生と町娘の若い恋、何処でもいつの時代にも繰り返されているであろうありふれた物語、しかし当人たちにとっては生涯立ち帰る場所。こんな典型的な物語を、奇を衒うことなく単純に美しく描いているという点で、まさに古典の名に値する。
"・・・だからこそ、いつまでも若くあってほしい。カール・ハインツ。わたしがきみに望むのはそれだけだ。いまのきみのままでいてくれたまえ。連中がきみを別人に仕立てようとしたら――みんなよってたかってそうするだろう――そうしたら断固戦うんだ。いつまでも人間のままでいるんだ。カール・ハインツ、若々しい心を持った人間で――だがおそらくいつの日にか、今日のいまとはちがう考えになって、このハイデルベルク時代やらわたしのことを想いだす時が来るかもしれない。・・・すると連中は声をそろえて、さようでございますとも、あの短い期間は殿下のご生涯にとりまして、ふさわしからぬ不協和音でございました、などときみに言いふくめるだろう。でも、そんなことは信じてはいけない。"
本国ドイツでは忘れられた本作も、日本では旧制高校の頃から親しまれているという。ここに描かれている19世紀後半のドイツ学生の気質や風俗が、日本の旧制高校の雰囲気と通じているような印象を受けるのも、偶然ではないだろう。
奇しくも今日は、大学時代の親友の誕生日だ。 -
その昔、児童文学全集に収められていたダイジェスト版を読んで以来の再読。オリジナルは戯曲だったのですね。
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遠い昔、大学1年の時の話です。
帰省の途中下車で、京都と大坂万博に寄った。
哲学の道を散策し、小さなカフェに入った。
「何に、しはります?」
その響きだけで、僕はその娘にちょっと恋した。僕のアルトハイデルベルク。。
4年生の時、かの地にも行った。
只美しい景色と酸っぱいザウアークラウトの思い出しか、残っていない! -
人生がどっと踊る後のしんみり沈み込むさみしさ。変った世界で変わらないひとりを見つけても、別の先を行く。ただ思い出が心温めることがあって、誰かの言葉がふと浮かんで。そうしたら、何処にもなくても無くならないのかな。ちゃんとあったものとして、見つめられるかな。
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ドイツのロマン主義的な戯曲。
カラメルのようなほろ苦い青春劇、個人的に好き。
ゲーテが『若きウェルテルの悩み』に関して「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」といったが、アルト・ハイデルベルクもまた同じだろうね。
甘い青春と時間によって隔絶された悲劇。
でも、けして悲しくはない。
映画『ニューシネマパラダイス』が好きな人にオススメ。 -
ドイツ、ハイデルベルクなどを舞台とした作品です。