- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003243824
作品紹介・あらすじ
Kについてはごく平凡なサラリーマンとしか説明のしようがない。なぜ裁判に巻きこまれることになったのか、何の裁判かも彼には全く訳がわからない。そして次第に彼はどうしようもない窮地に追いこまれてゆく。全体をおおう得体の知れない不安。カフカ(1883‐1924)はこの作品によって現代人の孤独と不安と絶望の形而上学を提示したものと言えよう。
感想・レビュー・書評
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なぜか裁判に巻き込まれ、当人は何の裁判なのかまったく罪状も分からないまま話しが進んでいくという、ある男の不条理な運命が描かれます。
ただそれだけの小説と言ってしまえばそれまでですが、逆によくこれだけ読ませる小説が書けるものだと感心しながら読めました。
残念なのは、この小説は未完成ということ。9章「聖堂で」と衝撃的なラストの10章「最後」の内容は突然すぎですね。解説にそうなった経緯が書かれていましたが、完成する見込みがないまま世に出てしまった感じです。
ラストは書き切っているので、それだけに最後の繋がりの悪さが惜しまれます。ただし、自分は『変身』より、こちらの方が好みです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
わたしはカフカがとても好きなのだが、この作品は今一つ好きになれない。理由もわからぬまま訴訟され逮捕されるという主題は、あまりに月並みな誰もが持っている不安であり、その後のシュールな展開には今一つそぐわない。主人公が若いエリート金融マンで一貫して高圧的な態度なのも興味を削ぐ。場面描写の分かり難さも話を読み難くさせた。裁判所を訪問したりするのもそうだが、下宿の間取りすらイメージが掴み難く、不条理な展開に入る以前に物語に入り難い。ドアを開けるまで廊下を曲がるまでがリアルだからこそ向こう側にある幻想世界が引き立つのではないか。そもそもこの話は長すぎる。カフカは短編中編に本領があるのかもしれないとも思ったが、『城』は非常に面白かったことからそうとも言い切れない。
読みながら既視感があったが、「不思議な国のアリス」の裁判を連想させた。 -
始めはだれかの中傷だった。
ヨーゼフ・Kが結局どうして訴訟になったのか分からなかったが、どうやら問題の定義といいますか、カフカが言いたいのはそんなことではなく、ついては「嘘が、時には真実味を帯びて誰にでも起こりうる事件にぶち当たってしまう」ということと、越えられない壁のような中傷、またはしてもいないついてもいない嘘が、何処からか歪み、それが増して訴訟されるケースもあるということを伝えたいのが一つなのかなと思いました。
門番の話で、だいたい答えは出ているような気がしましたが、少し難解。
結局、ヨーゼフ・Kは騙されたのかなという印象でした。
あっさりとしていて、読んでいて面白かったですが、少し難解でした。 -
カフカの世界観である夢のような状況設定。あまりにも巧みに書かれすぎててあまり理解できなかった。もっと大人になったらもう一度読んでみようかな。
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一つのシステムが全く別のシステムに侵略される感覚を描き出した、ただそれだけの小説。城なんかもまさにそうだが、一つの小説を、たった一つの感覚で貫かせるというのは本当に凄い。
本作の作中の訴訟を巡るドタバタ劇は、徹頭徹尾喜劇的なものだが、その顛末が喜劇的な余韻を漂わせつつ突然の死を以って締め括られるということがあまりにも皮肉。
20世紀の人類が、国だとか民族だとかのシステム間の衝突によって、そこに属する小さな個人が本当は何が起こってるのかよく分からないままその命を強制的に終了させられた多くの事実を考えると、とんでもなくすごい小説なのだ。文章も比較的ノってるし。でももう2度は読まんでいいな。 -
終始不穏な感じで引き込まれる
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ナゾがあったら解決したくなるのが人間心理ですし、すっきりさっぱりすべて明快にわかりたいと思うものですが(推理小説なんかはまさにそういう流れ)、この小説は最後までナゾはナゾのまま。でも我々が実際いま生きてる現実社会って、一見きちんとわかってるつもりだけど本当はよくわからないことだらけ、ナゾだらけだよね、っていうことなのかな。
あと実際に自分が不可解な状況におちいったとき、そのナゾの根本的な原因を探ろうとするよりは、やっぱり少しでも目先の安定、目先の解決を求めてしまうというのもまた事実だという気がして、なぜKはこんな不合理な状況に身を任せてしまうのかと訝りながら、自分も同じような行動をしてしまう可能性だって否定できない。 -
新潮文庫 原田義人 訳で読みました。
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2019/12/30〜2020/1/30