ほらふき男爵の冒険 (岩波文庫 赤 442-1)

著者 :
制作 : G.A.ビュルガー 
  • 岩波書店
3.67
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本棚登録 : 191
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003244210

作品紹介・あらすじ

ご存じほらふき男爵が語る奇想天外な冒険談。狩やいくさの話はもちろん、水陸の旅に、月旅行から地底旅行まで、男爵が吹きまくるご自慢の手柄話に、あなたもむつかしい顔はやめて、ひとときの間、耳を傾けられてはいかが?名匠ドレーの挿し絵百数十葉を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 18世紀ドイツの作家ビュルガー(1747-1794)により出版された、ミュンヒハウゼン男爵を主人公とする冒険譚。1786年。

    奇想を突き抜けて殆どナンセンスにまで到る小話(?)の数々に笑いながら楽しめた。解説によると、ミュンヒハウゼン男爵自身は17世紀ドイツに実在した人物であるそうだが、エピソードの多くは何世紀も猟師や船乗りの間で語り継がれた謂わば「民間伝承」「民話」であるとのこと。あちこちに散在している名もなき民衆の酒飲み話・盛られた自慢話がこうして集まって一冊の本となるその来歴を思うと、愉快だ。

    冒頭の「ミュンヒハウゼン男爵自身の話」が一番面白かった。特にその中の「月に登る」は、罪のない子どもの空想同然の、奇想と論理的ナンセンスが楽しい。全編にわたり多数収録されているギュスターヴ・ドレの挿絵もいい。

    むかし読んだ星新一によるパロディ『ほら男爵 現代の冒険』も面白かった。

  • ラスぺで読みたいところ、ビュルガーが手に入りやすいし、網羅されているのでこちらを読む。ほら話に沿って挿絵があるので読んでいて楽しいし、長く読み継がれているのはすごいなと思う。今はネットのおかげで世界が狭くなり、旅をしなくても世界を見ることが出来る。当時こういう話を酒場でするのは楽しかっただろうなぁ。想像力を刺激される面白い本だった。

  • 絵のある 岩波文庫
    ほらふき男爵の冒険 実在するミュンヒハウゼン男爵を主人公にした妄想的冒険譚。

    編集した ビュルガー の序文が この本の文学性(ユーモアの価値)を高めている「変化あっての愉快と有益〜心に活力剤〜軽い気持ちで仕事にかかろう」

    ミュンヒハウゼンの結語「みなさん、いい夢をご覧になるよう、祈るものであります」は エンターティナーを感じる

    月の住民の話だけ ディテールが細かくて面白い
    *彼らは食事にさしたる時を費やさぬ〜左の脇腹をパカっと開けて〜料理を一遍に胃に送り込む
    *高齢に達すると死去するのでなく、空中で解体し霧散霧消する
    *彼らは頭を小脇に抱えて〜目玉は自由に取り外したりできる

  •  ミュンヒハウゼン症候群なる精神疾患がある。わざとケガをしたり、病気を詐称して周囲から同情や注目を浴びようとする。最近では児童虐待などで代理ミュンヒハウゼン症候群も注目されてきている。病気の子どもを献身的に介抱する母親を演じるために、治りつつある病気を故意に治癒を遅らせたりしてまで、周囲からの称賛を得ようとする症例だ。

     この症候群の名称の由来となったのが、ほらふき男爵こと、ミュンヒハウゼン男爵。
     作者であるビュルガーのまるっきりの創作かと思ったら、詳しくは説明しないけれど、実際にミュンヒハウゼンという男爵がいたようだ。


     物語の始まりはロシア。そこからトルコに渡ってインド洋での大航海、そして地球の真ん中を通り抜けて北洋に渡り、はるかかなたの月世界へと、次から次へと襲い来るあり得ない危機をあり得ない方法で乗り越えていく愉快な冒険譚。
     あらゆる自然法則を都合よく改ざんし、生きるも死ぬも男爵の意のまま。なぜならこれは男爵のつくりだした世界であるから。真偽なんて二の次で、聴衆が面白おかしく楽しめればそれでいいのだ。


     表紙の挿し絵を説明すると、一番上の絵は難攻不落の砦を攻略するために果敢にも自軍が発砲した砲弾に飛び乗り、砲弾もろとも敵軍に攻め込もうとしたのだが、やっぱりちょっと無謀だったと乗りながら後悔したため、今度は敵軍が発砲した砲弾に乗り移って自軍に帰ってくる話。


     真ん中で走っている韋駄天男は、あまりに早く走ってしまうので鉄鎖をはめてスピードを抑えている。下の大男は鼻息だけで風車を回しているのだが、こちらも片方の鼻の穴だけで吹いて勢いを抑え、風車を七基回している
     この二人は男爵がトルコのスルタン相手に何かやらかすときに活躍するのだが詳細は伏せる。


     話も面白いのだが、この本のすごいところは挿絵がギュスターヴ・ドレなのだ。
     なんとも贅沢だ。




     

  • 18世紀フランス革命の頃のドイツで出版されたほら話の本。まぁ、くだらない話ばかり...
    もしかしたら、当時の社会風刺なんかが入っているのかもしれないが、その時代に詳しいわけもないから何もわからず。
    まっ、いいか。

    Mahalo

  • ミュンヒハウゼン症候群、最近では偽ミュンヒハウゼン症候群という呼称も映画や小説の影響で一般にご存知のかたも多いと思います。
    その語源となったのがこちら。
    荒唐無稽な冒険譚の数々を宴席の余興に披露して大人気だったというミュンヒハウゼン男爵の、その法螺話を集めた一種の民話集。
    テリー・ギリアムの映画『バロン』はこちらを原作としているそうです。
    おかしくて馬鹿馬鹿しい、まさに"法螺話"の群れ。
    楽しかったですよ。

  • 突拍子もなくて笑える。
    よくよく考えるとジュール・ベルヌの冒険ものに出てくるようなエピソードもあったりするんだけど(笑)
    挿絵もしかつめらしいタッチだけどよく見るとくだらないシーンだったりして。

  • 馬鹿馬鹿しくて下らなくて軽快な語り口は
    落語のようでとても楽しい。
    豊富な挿絵も、新井氏の訳も素晴らしい。

  • 有名なほらふき男爵のお話です。かなりの人がなんらかの形で読んだり知っていたりすると思います。

    この岩波文庫版は挿し絵がドレで、とても典雅。
    この版なら大人になってから読んでも楽しめる。
    どんなときでも、読んだら少しだけ気が楽になると思います。

  • 愛すべきほら話の本。

    ほらというのはこのように吹くのだというお手本のような本。
    小さなウソではなく大きなほらで人々を楽しませる
    今の時代に必要な一冊かもしれません。

    ユーモア分が不足した時に是非手に取ってみてほしい。
    何の役にも立たないけれど
    何かできっと自分の中が満たされるでしょう。

    ギリアムの映画、「バロン」の原作でもありますよ。

    バロンファンには是非ご一読いただきたい。

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著者プロフィール

1941年生れ。小田原出身。一橋大学名誉教授。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了(独語・独文学)。専門は言語情報解析、文体統計論、近世ドイツ言語文化史。
翻訳にG. A. ビュルガー『ほらふき男爵の冒険』(岩波書店、1983年)、著書に『ドイツ・ラインとワインの旅路』(東京書籍、1994年)、『近世ドイツ言語文化史論――「祖国」と「母語」が意識されてゆくころ』(近代文芸社、1994年)など。

「2013年 『バロックの王国 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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