脂肪のかたまり (岩波文庫 赤 550-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (111ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255018

作品紹介・あらすじ

30歳のモーパッサンが彗星のように文壇に躍り出た記念すべき短篇小説。普仏戦争を背景に、ブルジョワや貴族や修道女や革命家といった連中と1人の娼婦とを対置し、人間のもつ醜いエゴイズムを痛烈に暴いた。人間社会の縮図を見事に描き切ったこの作品は、師フローベールからも絶賛され、その後の作家活動を決定づけた。新訳。

感想・レビュー・書評

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  • 娼婦・ブール・ド・シュイフ(=脂肪のかたまり)はその職業故に不当な扱いを受け、馬車に乗りあった伯爵や資産家たちに都合よく利用され見放される。
    戦時中(普仏戦争)だから、人心がすさんでいたのか?娼婦は戦争のある意味犠牲者だったのか?いやそうじゃなさそう。人間は職業や社会的地位の違いで人を差別する。戦地ではない日本でも同様。社会情勢ではなく人間の本源的な欠点ではなかろうか。

  • 「人間のもつ醜いエゴイズムを痛烈に暴いた。」とある表紙の解説が全てを物語っている。

  • ぽっちゃり太った娼婦と一緒の馬車に乗り合わせたブルジョアな人々。
    はじめは娼婦にも差別せず真摯に接するのだけど。
    自分に不都合なものに対しては案外無神経に切り捨てたり、知らないふりをしたりするものですよね。
    それはいつの時代も変わらない。
    モーパッサンは昔母親の本棚にあったのを目にしていたので古めかしいイメージがついていたのですが、訳がいいのか軽妙でユーモアもあってあまり古さを感じなかった。

  • 1880年に発表されたモーパッサンの出世作。100年以上前の作品ながら、今読んでも強度は薄れていない傑作。

    「娼婦なのだから体を売るのは簡単なはずだ」
    ブール・ド・シェイフが浴びる酷い言葉は、今の日本でも夜の仕事をしている女性たちに浴びせられる言葉だろう。
    その上で自己責任へと向かわせる富豪たちの印象操作には既視感を感じた。
    だからこそ最後に、その乗車する客たちに当てつけのように響かせるフランス国家ラ・マルセイエーズは、その歌詞の内容も含めて強く響いた。

  • 普仏戦争の中では、当たり前であるが「フランス人は仲間であり、敵はプロイセン人」であるはずだ。作中でも「脂肪の塊」はプロイセン嫌いの描写が多いため、まさか同士であるはずのフランス人からこのような屈辱を受けるとは思ってもいなかっただろう。

    この分量で過不足ない情報量、表現が詰め込まれ、心を動かされる作品はなかなか見ない。例えば、星新一のショートショートは彼特有の新ジャンルであり、彼にしか使いこなせないSFという飛び道具(褒めています)をつかっているのに対し、この作品は歴史小説という王道ジャンルをこの短さで成立させている凄さがあるように思える。

  • どこか滑稽な部分もあるが、ラストには救いがない。それがリアルという事なのか。

    戦火のなかでは自分も登場人物の様に、醜いエゴに取り憑かれてしまうかもしれない。本書は寓話の様で不思議な迫力を持っている。

    構成も見事で読みやすく、短編小説として非常に完成度の高い作品。

  • 敵が占領したルアンを脱出しディエップに向かう6日間の馬車の旅。1人の娼婦と、世渡り上手な9人の同行者は様々なアクシデントに見舞われる。
    9人は上品さで自己中心的な行動を隠しているつもりだけれど、冷静な目で場面を見守る読者には通じない。虚しさが残る。

  • 人物描写、心理描写の妙。
    偏見と矛盾、階層と本性。馬車での雰囲気がひしひしと伝わってくるような。。

  • 人間社会の縮図。
    考察しがいのある話でした。

  • 「えげつないタイトルだな…。」と最初手に取ったとき思いました。人間って怖いなと思う反面、もしああするしかなかったと考えるとなんとも言えません。上流階級の夫妻や、尼僧、革命家はこの後一体何を思って生きるのでしょうか。それから挿絵から見ると個人的にはブール・ド・シュイフさんはかわいいと思います(どうでもいいかもしれませんが)。

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