千一夜物語 5(完訳) (岩波文庫 赤 780-5)

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  • / ISBN・EAN: 9784003278055

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  • シンドバッドの物語おもしろい

  • 原書名:LE LIVRE DES MILLE NUITS ET UNE NUIT

    「幸男(さちお)」と「幸女(さちめ)」の物語
    「ほくろ」の物語
    「博学のタワッドド」の物語
    詩人アブー・ヌワースの事件
    船乗りシンドバードの物語
    美しきズームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語

    編者:ジョゼフ=シャルル・マルドリュス(Mardrus, Joseph-Charles, 1868-1949、エジプト・カイロ、東洋学者)
    訳者:豊島与志雄(1890-1955、朝倉市、小説家)、渡辺一夫(1901-1975、東京、フランス文学者)、佐藤正彰(1905-1975、東京、フランス文学者)、岡部正孝(1912-、フランス文学者)

  • 5巻にしてようやくシンドバッド!しかしそれ以外の物語はどれもとくに突出した特徴のない恋愛もの等でイマイチ新味なし。やや面白かったのは「「ほくろ」の物語」くらい。

    40年連れ添ってもまだ子のない夫婦、突如キレた夫は妻にむかって「子供がでけへんのはお前が原因やんけ、そやのにヤキモチ焼いて今まで俺に愛人も作らせへんかったけど、もう我慢も限界や、きれいなお姉ちゃん囲ったる!」(※関西弁意訳)と罵倒、現代なら単なるモラハラ野郎だが、この妻は大人しく黙ったりしない。「じゃかしいわボケ!お前の××が××やから子供でけへんのやろ!文句あるんやったらお前の××を××できるようにしてこんかい!」(※関西弁意訳)と逆襲。意外にしおらしいところのある夫は早速薬局に行き「××が××になる薬くれ」と言うも、店員は皆半笑いで「えらいすんまへんな、売切れですわ」とあしらわれる。しかしある裏稼業の男が気の毒に思いバ○ア○ラ的なものを調合、夫婦は早速それを用いて、効果覿面、息子を授かる。

    こうして生まれたのが絶世の美少年「ほくろ」(※お尻と唇の横に魅力的なホクロがあるのでこう呼ばれる)あまりにも美少年なので女性だけでなく美少年好きの「両刀使い」にもモテてしまい、おかげで波乱万丈な目に合うのだけど、この「ほくろ」くん超絶美少年という以外にとくに何の魅力もないので、以下のストーリーは割愛。ラストも何の伏線もなく「私は魔法が使えるのです!」という女性が登場して「空飛ぶベッド」で移動するなど、それ自体は面白いけどご都合主義感があって微妙だった。

    「博学のタワッドド」は教訓ものでつまらないし(コーランや旧訳だけでなく、ヨハネの黙示録からの引用らしき部分もあるので宗教的には興味深いかもしれない)、「詩人アブー・ヌワース~」は詩人というより道化のような扱いで、笑っていいのかわからない。

    そんなこんなでシンドバード。すでに老齢の船乗りシンドバードが、同名の若者・荷かつぎシンドバードに自分の冒険を話す形で進められる。第一の航海では、島だと思って寛いでたらクジラだった!で難破、海馬と馬の合いの子作ってる人たちに助けられる。第二の航海は、巨大鳥ロック(ロク)が出てきてダイヤモンドゲットする話、第三の航海では猿が島で猿に襲われ、逃げた先には人喰い巨人(大猿)がいて太ったものから炙って喰われるも反撃して逃走、さらに大蛇に食われそうになったりしつつ無事帰還。このへんまではアニメや童話にも描かれている有名エピソードだけど、次の第四の航海が酷い。

    最初は人間を太らせてバカにして食べる食人鬼の島に流れつき命からがら脱走、親切な王様の国で妻まで娶らせてもらったはいいが、なんとこの国では夫婦のどちらかが死んだらもう一人は一緒に生き埋めにされる法律があり、シンドバードも妻の病死で生き埋めに。生き埋めといっても数日分の食料を与えられて生き埋め専用の地下の洞窟に死体と一緒に放り込まれるので脱走可能ではあるんですが、ここでのシンドバードの所業はなかなか最低。というのは、シンドバード以降にも伴侶を失い死体と一緒に食料を持って地下に降ろされてくる人がいるわけで、彼はそれらの人をいきなり殴り殺して食料を奪い自分だけ命を繋ぐ。呆然。いくら放っておいても餓死するとはいえ、これは子供むけ絵本やアニメにはできないでしょうねえ・・・。

    第五の航海では、ロック鳥を怒らせて難破、子泣き爺ならぬ肩車ジジイ(※海の老人)に取りつかれてこき使われるも脱出、第六の航海でもまた難破、宝石だらけの島に漂流、第七の航海でも勿論しょうこりもなく難破、親切な人々の国で暮らし妻帯するがこの国の男たちは実はみな有翼人でしかもキリスト教徒だったため帰国。とにかくキリスト教徒とギリシア人のことが回教徒たちは大嫌いなようでいつもクソミソです(苦笑)

    「美しきズームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語 」はそれなりに面白かったけれど今まですでに読んだ物語との共通点が多くそろそろマンネリ感が。千一夜に登場する男性は基本的に残念なイケメンであることが多く(外見だけは美しいが中身はややアホ)親の遺産を使い果たし、賢く美しい女性の犠牲や献身、才覚によって助けられることがほとんど。

    ※収録
    第237-248夜:「幸男」と「幸女」の物語
    第250-269夜:「ほくろ」の物語
    第270-287夜:「博学のタワッドド」の物語
    第287-290夜:詩人アブー・ヌワースの事件
    第290-315夜:船乗りシンドバードの物語(船乗りシンドバードの物語の第一話 そしてこれは第一の航海である~船乗りシンドバードの物語の第七話 そしてこれは第七の最後の航海である)
    第316-331夜:美しきズームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語

  • 「幸男」と「幸女」の物語
    「ほくろ」の物語
    「博学のタワットド」の物語
    詩人アブー・ヌワースの事件
    船乗りシンドバードの物語
    美しきズームルッドと「栄光」の息子アリシャールとの物語

  • ようやく知ってるエピソード、船乗りシンドバッドの巻!
    意外と…意外とシュールなお話で御座いました。
    だんだん酷い目に合う度合いがアップしてゆくのね。

  • 2008/01/30

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著者プロフィール

とよしま・よしお
1890(明治23年)~1955(昭和30年)。
日本の小説家、翻訳家、仏文学者。
久米正雄、菊池寛、芥川龍之介らとともに
第三次「新思潮」の同人として世に出る。
代表作に、
短編小説集『生あらば』(1917年)、
中編小説『野ざらし』(1923年)、
随筆集『書かれざる作品』(1933年)、
長編小説『白い朝』(1938年)、
短編小説集『山吹の花』(1954年)など。
当時ベストセラーになった『レ・ミゼラブル』の翻訳で知られる。
太宰治の葬儀の際には、葬儀委員長を務めた。

「2018年 『丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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