- Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003279724
感想・レビュー・書評
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メキシコの詩人、オクタビオ・パスの散文&散文詩集。
個人的には「詩」を読むのは年をとるにつれて難しくなってきたように感じています。感受性が研ぎ澄まされていて、柔軟で、かつ集中力がないと、読んでも読んでも全く頭に入ってこない…。
オクタビオ・パスはどちらかというとシュールレアリズム寄りなのだと思うけれど、言葉とイメージが洪水のように押し寄せてきて、美しいけれど我に返って「ちょっと何言ってるかわからない」と思ってしまったり、観念的すぎてこちらの思考がついていけなかったり…。
思うに詩集は、「読もう!」と思って順番にページをめくるよりも、ふとした瞬間に手にとってパラパラと目についたものを読んでみる、くらいのほうが、すっと気持ちに入ってくるというか、ワンフレーズだけでも「これ今の気分にぴったり!」「めっちゃいいこと言ってる!」「わかる!」となる気がします(笑)
物語性のあるものは、比較的なじみやすかったです。アンソロジーで既読の「青い花束」(恋人が青い目の花束を欲しがっているという男に目を狩られそうになる話)や、「波との生活」(擬人化された波を恋人にした男の話)などはやはり面白かった。
他に気に入ったのは「出会い」と「天使の首」。「出会い」は、ある男が自分の家に入ろうとすると、そこから自分が出てくるのを見てしまい、尾けて行ったバーで隣に座ってみるも喧嘩になり、周囲の客はニセモノのほうを庇う。もしかして自分のほうがニセモノ?となる一種のドッペルゲンガーもの。
「天使の首」は、夢の中のようなシュールさでアニメーションで見たいと思った。美術館に行った少女が、殉教した聖女の斬首の絵などに見入るうちにその世界に入り込んでしまい、なぜかモーロ人に捕まって血祭りにされたあげく斬首されてしまう。傷口から流れた血は赤い花となり流れ続ける血でその花を養っているうちに天使があらわれて、首を体にくっつけてくれるが、なんと前後が逆さまだった。うしろ向きにあるいて家に帰るも母は冷たい。再び出かけて自分の死体を見にいくが、首がみつからないので困っていると、親切なインディアンがいろんな首をみせてくれる。だが気に入る首がないと言うと、インディアンはでは新しいピッタリの首を調達してくれるといい、謎の黒服男たちに血祭りにされていた別の少女をみつけてその首を切り落とし、少女につけてくれる。少女は喜ぶが、自分のために首を切り落とされた別の少女が気の毒になり、彼女も誰か別の少女の首を切り落としてつけてもらえればいいのにと願う…(ループしちゃう)
※収録
<詩人の仕事>
詩人の仕事
<動く砂>
青い花束/眠る前に/波との生活/正体不明の二人への手紙/驚異の意志/書記の幻想/難業/急ぐ/出会い/天使の首
<鷲か太陽か?>
子供のいる庭/夜の散策/エフラバン/出発/平原/呪詛/大文字/黒曜石の蝶/無花果の樹/向こう見ずな音符/上流社会/空中の城/古い詩/ある詩人/幻/ウアステカ族の貴婦人/自然な存在/メキシコ渓谷/羊歯の褥/包囲された男/未来の讃歌/詩に向かって(様々な起点)詳細をみるコメント0件をすべて表示