- Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003314098
作品紹介・あらすじ
中国古代の宗教政治思想研究、日本古代史の批判的研究、生活と思想の歴史的関係をダイナミックに記述した大著『文学に現はれたる我が国民思想の研究』などで大きな足跡を遺した津田左右吉(1873-1961)。その代表的な歴史論-歴史観、研究方法論とその観点からの同時代思潮批判を編年順に収録して、その思想を辿る。
感想・レビュー・書評
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「天皇制」という単語は虚偽・架空。コミンテルンが、皇室について、ロシア絶対君主制のように、君主が労働者農民を搾取・抑圧し、官僚的・軍事的・警察的な機構をもつ政治形態であると日本人に信じ込ませ、ロシアと同様の反ブルジョア民衆革命を起こさせようと捏造した政治形態。津田左右吉。つだ・そうきち。『日本文化の現状について』
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1952年の論考は今でもよく言われる普遍的なことが平易にかつ、繰り返し述べられている。今の基準で歴史を批判するな、現在が歴史の到達点である思い込みを捨てよ、歴史は人の学であることを理解せよ、と。津田にとっては歴史を法則性の中に見出そうとするヨーロッパ近代至上主義や社会主義などは、歴史と人の個性を埋没させる悪しき存在であった。また、それらのイズムと戦前に支配した思想を重ね合わせて、露骨に嫌悪感を示している。巻末の解説に多少言及があるが、同時代の新進気鋭で大人気の丸山真男らの言説と、当時すでに老翁となった津田の思想がどのように対比されたのか大変興味深い。
皇国史観に反逆する津田像と大変印象が異なる。どうりで戦後の左派から非難されたわけである。わかったことがある。津田左右吉は本当に国史、日本史を誠実に愛しているが故に、戦前は軍部から非難され、戦後は社会主義者や共産主義者から非難されたのだ。