1789年-フランス革命序論 (岩波文庫 青 476-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003347614

感想・レビュー・書評

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  • フランス革命、それについて一冊にしちゃあすごく上手くまとまってる本。フランス革命が元になりました。自作の「Dm7」というゲームは。資料本。

  • 本書は正統派革命史学を代表するG・ルフェーヴルによって1939年、フランス革命150周年に上梓された。貴族対ブルジョワという古典的な二項対立図式を修正し、革命は貴族、ブルジョワ、都市民衆、農民による複合革命であったとする。この四者が微妙なズレを孕みながらも部分的に共通する利害に導かれ、複雑な連合と離反を繰り返すプロセスとして革命を再構成する。アンシャンレジーム下における貴族とブルジョワは決定的な利害対立があった訳ではなく、どちらも芽生えつつあった資本主義の担い手であった。他方でブルジョワは旧身分である貴族に対抗して政治的平等を勝ち獲る上で、都市民衆と農民のエネルギーを利用した。だが最終的には過激な経済的平等を求める農民を切り捨てて財産権を守った。ルフェーヴルは結果的に革命から最大の利益を得たのはブルジョワであると言う。

    正統派革命史学とトクヴィルからフュレへと継承された「修正派」との大きな違いは革命前後で歴史は「断絶」しているとみるか「連続」しているとみるかだが、この違いは多分に何に着目するかによる。諸階層の利害は単一の、例えば経済的利害に還元できるものでなく、経済的、政治的、社会的な利害がそれぞれ複雑に絡み合い、その組み合わせパターンによって時に対立し、時に同盟する。そのことを革命の諸段階に沿って明らかにしたのは本書の功績だが、対立の側面を見れば歴史は「断絶」しているし、同盟の側面を見れば歴史は「連続」している。だからルフェーヴルの複合革命論は、その意図を越えて正統派の革命史観(=断絶史観)を骨抜きにしかねない「危うさ」(あくまで正統派にとっての「危うさ」だが)を孕んでいる。

    解説で訳者も指摘するように、実証研究が進んだ今日、事実認識としてはもはや正統派も修正派も大差ない。修正派の急先鋒フュレでさえ、実は本書に多くを負っている。ルフェーヴルは、革命の最終的な勝者がブルジョワであり、彼らが手にした政治的平等と経済的自由が歴史の歯車を大きく回転させたという正統派のテーゼに固執するが、ブルジョワが経済的自由を獲得したフランスにおいて、革命を境に資本主義が飛躍的に発展したかといえば、決してそうではない。社会が変化していく過渡期において旧いものと新しいものが混在するのはむしろ自然なことだ。正統派の革命史観には歴史とは人間の主体的意志によって変革すべきものであるという理念が過剰に投影されていることは否めない。

  • 原書名:Quatre-vingt-neuf

  • 【熊谷英人・選】

  • 革命史研究の第一人者による1789年革命の概説書。革命を「アリストクラート」、「ブルジョワ」、「民衆」、「農民」のそれぞれが立役者となる四つの革命の複合体として把握する視座が提出される。全体としては、名士会や全国三部会招集を要請し国王権力の制限を図ったアリストクラートの革命、三部会における頭数別票決を主張し国民議会を宣言したブルジョワ革命、パリで暴動の主体となった民衆による革命、農村部で「アリストクラートの陰謀」や野盗の跳梁跋扈に対する恐怖から市場経済を否定し商品価格の国家的統制を求めた農民の革命、それぞれが時系列順に継起していったように叙述されている。そして、これらの諸革命の結果として、89年8月4日の封建的特権廃止のデクレ、人権宣言が制定されたとルフェーヴルは捉えている。その点で、F・フュレが攻撃したような革命のマルクス主義的解釈の一つであるとも言えるが、「アリストクラートの陰謀」という集合的心性が民衆や農民の暴動につながったという理解に見られるように、ルフェーヴルがフランス革命を下部構造の観点からのみ解釈しようとしているわけではなく、革命を政治文化の変容と捉える後の支配的研究動向ともつながるような視座がすでに本書で提出されていることも留意されるべきだろう。その限りで、フュレらの「修正派」の解釈が主流となっている現在の革命史研究においても、本書の価値は失われていないと思われる。

  • ルフェーヴル『89年』の翻訳。今日においてもっとも参照されるフランス革命史の古典である。
    読み物として非常におもしろいという点にまず特長がある。ルフェーヴルの精緻な農村研究など実証的な史実をベースにしながら、分野外の一般の読者も一つの革命史として楽しんで読むことができる。
    そしてもちろん、押しも押されもせぬフランス革命史のオーソドックスとしての価値がある。ルフェーヴルはフランス革命を、王家、貴族、ブルジョワ、民衆、農民、野盗などのあらゆる登場人物の必然あるいは偶然の行動が、結果としてフランス革命の開始を構成したというように歴史を描く。ゆえに、フランス革命の始まりを社会のあらゆる側面から網羅的に捉えることができるのである。
    まさにそのことによって、この本は、社会を変える、あるいは社会が変わるとはどういうことかを教えてくれる。社会が大きく変わる瞬間であっても、そこには多様な要因が折り重なっており、しかもまったく関わりのないような人々の行動が偶然に共振して大きな社会変動を引き起こすのである。誰かが社会を変えようとして変わるわけではまったくないのである。

    閉塞と貧困の時代を目前とした日本。国家破綻が近いことも当時のフランスとオーバーラップする。この書は今日なお読まれるべき名著であるどころか、今こそ読まれるべき一冊ではなかろうか。

  • 目 次

    序 文          高橋幸八郎

    一七八九年

    第1部 アリストクラートの革命
     第1章 アリストクラート層
     第2章 王政の危機

    第2部 ブルジョワの革命
     第1章 ブルジョワジー
     第2章 ブルジョワジーの最初の勝利
     第3章 全国三部会

    第3部 民衆の革命
     第1章 大衆の動員
     第2章 一七八九年七月十四日のパリの革命
     第3章 地方における市政の革命

    第4部 農民の革命
     第1章 農民

    第5部 八月四日の夜と人権および市民権の宣言
     第1章 人権宣言の制定計画と諸特権
     第2章 人権および市民権の宣言

    第6部 十月の事件
     第1章 ルイ16世の消極的な抵抗
     第2章 愛国派の分裂、二院制と拒否権
     第3章 民衆の騒擾
     第4章 十月の事件

    結 論

    解 説          柴田三千雄・遅塚忠躬

  • 仏革ならこの本

    最後の文章は圧巻。世界で最も賞賛されている文章の一つです。読んでおいて損はありません。そこだけでも是非…!

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