哲学者と法学徒との対話: イングランドのコモン・ローをめぐる (岩波文庫 白 4-5)
- 岩波書店 (2002年4月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003400456
作品紹介・あらすじ
晩年のホッブズが「革命の生き証人」として書いた「同時代史」とも言われる本書は、法、正義、主権、刑罰、司法、国家の歴史、信仰の自由などの概念の分析を文明史と交差させ、彼の政治思想の母体となった歴史観を端的に示すとともに、文明史への強烈な関心を表している。『リヴァイアサン』理解のための必読書でもある。
感想・レビュー・書評
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ホッブスという名前を聞いただけで、読んだこともない「リヴァイアサン」のイメージを持ちながら読み進めるわけだが、1章の「理性の法」から2章の「主権について」にかけての哲学者の言葉がそのイメージを裏切らない。
1670年代ころのホッブス晩年の作とのことだが、そのころは権利の請願と権利の章典などが出される合間にあり、革命を経て国王の権力が議会に拘束される時代だったはずである。それに逆行するかのようにとりわけ2章での哲学者は議会が国王から課税権を取り上げようとする風潮に強く反発をしている。
どうも哲学者(ホッブス?)は、一国のリヴァイアサンが多国関係におかれると、リヴァイアサンとリヴァイアサンとの戦いになることを恐れているように見える。
ホッブス流の万人の万人による闘争を前提とした世界では、国と国との関係は上位にリヴァイアサンが存在しない以上、常に闘争の状態におかれている。ならば平和と安寧を守るために、一国のリヴァイアサンはどうあるべきか。それは権力の分立を防ぐことである。リヴァイアサンは責任重大である。なにしろ本書によれば「国王のために国民がいるのではなく、国民のために国王がいる」のだから。
ウエストファリアの条約による主権国家の誕生と軌を一にして、その何百年後の行き着く先、宿命を予言したと解してもいいのではないでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
副題にある通り、議論はもっぱらイングランドのコモン・ローの妥当性に関係している。ホッブズはコモン・ローの妥当性をエドワード・クックの解釈によって基礎づけようとする「法学徒」の議論に逐一反論を加えていく。論点は刑罰や異端などかなり個別的なものに及んでいるが、法制定の主体が主権者たる王であることにコモン・ローの妥当性を求めようとする「哲学者」の議論は、まさに『リヴァイアサン』などで示されたホッブズの主張を再現するものである。
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斜め読み。
ホッブスの法律に対する冷徹な視点は学ぶべきところが多い。