- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003770146
作品紹介・あらすじ
分身、夢、不死、記憶などのテーマが、先行諸作品とは異なるかたちで変奏される、端正で緊密な文体によるボルヘス最後の短篇集。本邦初訳の表題作のほか、「一九八三年八月二十五日」「青い虎」「パラケルススの薔薇」を収録。二十世紀文学の巨匠が後世にのこしてくれた、躊躇なく《ボルヘスの遺言》とよぶべき四つの珠玉。
感想・レビュー・書評
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四編の短編集。どれもいかにもボルヘスで良き。以下簡略にメモ。
〇一九八三年八月二十五日:あるホテルに宿泊した60代のボルヘス、宿帳にサインを求められ、書こうとするとすでに自分のサインが。まさかと思いつつ部屋に行くと、そこには老いて死の床についたボルヘス(84歳)がいて…。
〇青い虎:青い虎を探して僻地の村へ出かけた男。虎はいなかったが、村人たちが神聖視している山に無断で入り、青い小石をみつける。その小石は勝手に増えたり減ったりし…。
〇パラケルススの薔薇:パラケルススのもとに弟子になりたいという男がやってきて、持ってきた薔薇を灰にしたあと蘇らせてくれと師に言う。しかしパラケルススは…。
〇シェイクスピアの記憶:ドイツ人の文学者が、あるとき知人からシェイクスピアの記憶を譲ると言われ、受け取ることにする。以来、じわじわとシェイクスピアの記憶が蘇るようになり、最初のうちは喜んでいたものの、次第にシェイクスピアの記憶が本人自身の記憶を浸食しはじめ…。 -
収録作の三編は『バベルの図書館22 パラケルススの薔薇』
(国書刊行会)で既読だったが、
本邦初訳の表題作のために購入・読了。
■一九八三年八月二十五日
深夜、宿泊するホテルに帰ったボルヘスはフロントで
記帳を求められ、首を傾げつつページに目を落とすと、
真新しいインクの跡が自らの名を綴っていた。
宿の主は、よく似た別の客が既にいるが、
あなたの方が若いようだと告げる……。
バベルの図書館『パラケルススの薔薇』での初読時より、
もっさり・まったりした印象を受け、
同時に何故か内田百閒風に感じられた。
■青い虎
1904年末にガンジス川のデルタ地帯で
青い虎が発見されたとのニュースを読んだ〈私〉こと
アレクサンダー・クレイギーは、
更に、そこから離れた村にも
青い虎の噂があると聞いて旅立ち、
山に入って無数の小石を発見した――。
■パラケルススの薔薇
錬金術士パラケルススこと
テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム(1493-1541)の許に
弟子入り志願者がやって来たが……。
■シェイクスピアの記憶
英文学者ヘルマン・ゼルゲルは
シェイクスピア国際会議で知人に引き合わされた
ダニエル・ソープから
「シェイクスピアの記憶を差しあげましょう」と切り出された――。
作者ボルヘス自身の鏡像と思しい主人公たちの驚きが
静かだけれども瑞々しい。
旅と記憶と〈読むこと〉〈書くこと〉を巡る佳品群。 -
マジック・リアリズムと呼ばれるが、ガルシア・マルケスとはまた違う。日本文学より語り切る感じだが、シンプルな中に読み手に委ねてあるところが多く面白い。
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ボルヘスの小説ということで読んだがあまり印象にのこらない。本文よりも解説の方が長い感じがする。
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短編4篇。
いずれも夢と記憶と旅の話。
あるいはバーチャルリアリティの話だとも言えそうだ。
他者の記憶を丸ごとインストールすることでアイデンティティがゆらぐ。それがましてやシェークスピアの記憶なのだとしたら! -
ボルヘスの遺作が本邦初訳なのがびっくり。良くも悪くも枯れた感じは、昔からかも知れないが、渇き具合が一段と上がっている感じはする。懇切丁寧な解説が助かる。
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表題作以外の3本はバベルの図書館のシリーズに入ってる。