精神の生態学へ (下) (岩波文庫 青N604-4)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (426ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003860311

作品紹介・あらすじ

動物のコトバとは? 精神のシステムとは? 世界を「情報=差異」が変換して巡る観念の回路として定式化。進化も文明も環境も心的な相のもとに一望し、人間─社会─生態系を包みこむ壮大なヴィジョンを提示する。下巻は進化論・情報理論・エコロジー篇。イルカのコミュニケーションの分析や、「有機体+環境」「柔軟性の経済」の概念など。

感想・レビュー・書評

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  • 10月新着
    東京大学医学図書館の所蔵情報
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003664282

  • 389.04||B27

  • 最終的にはこの3冊に収められている翻訳者の解説がいちばんわかりやすいというか、解説読まないとさっぱりわからないという、読んでも全てわかるわけでもないけれど、という著作でした。ただ、ダブルバインドやサイバネティクスというものの萌芽をみるためには外せないものなのだということもわかりました。

  •  後期ベイトソンの思索の歩みが、講演、論文の形態をとって表されている。時代を経るごとにベイトソンの思索も形を整えてきたり、具体的な事例に落とし込まれたりすることで、徐々にその輪郭もはっきりしてくる感がしてくるが、それでもたまに難しい議論に遭遇する。とくに昆虫の肢の奇形に表れる対称性を三次元幾何学、情報の欠落と関連付けて説明するあたりは難しい。

     システムに宿る「精神」を解明するにあたり、数学的アプローチと物理学的アプローチが考えられるが、ベイトソンは数学的なアプローチを採用する。一般的にシステム内の各要素の相互作用は物体間の力の相互作用のようにエネルギーの伝播によって記述できるほど単純なものではない。なにも力が加えられなかったり情報が欠落していたとしても、その「無」すなわちゼロであるという事実が構成要素にある変化をもたらすことも普通に考えられるからだ。ここにシステムの「精神」を数学的に解明しようとする動機が生まれるような気がする。我々が属する組織においても、単に威圧的な態度をとることで物事を進めようとする物理学的アプローチは功を奏すること少ないと肝に銘じておく必要があるだろう。関係性の理解においては物理学的アプローチはそぐわない。

     ゲーム理論、数理論理学、三次元幾何学など、数学を駆使してシステムに内在する「精神」を解明しようとするベイトソンの苦闘、そしてアカデミズムの世界で安定した地位を得ることができず、それでも地道に自分の信ずる道を進み続けたベイトソンの生きざまに心から敬意を表したい。

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