- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004203865
作品紹介・あらすじ
ひとりひとりの子どもの内面に広大な宇宙が存在することを、大人はつい忘れがちである。臨床心理学者として長年心の問題に携わってきた著者が、登校拒否・家出など具体的な症例や児童文学を手がかりに、豊かな可能性にみちた子どもの心の世界を探究し、家出願望や秘密、老人や動物とのかかわりが心の成長に果す役割を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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(基本星をつけるのは、システム上評価によって新しい本と出会いたいがためにやってるんだけど、)著者の子どもへの強い思いに共感して☆5にしたい。
子どもの内にある宇宙は途方もなくすばらしいのに、基本この世界でかれらの声はかき消されがちだから。
著者の他の本での引用時以上に、ここで引用した児童文学を読んでくれ〜〜という推しを強く感じられたので、引用されているものはもちろん、紹介されているもの以外の本もぜひ読みたいと思う。いつもこの著者の紹介している本を読むのが楽しみ。 -
この本自体が宇宙ではないかと思われるくらい、広がりがある。子どもの宇宙を守れる大人になりたい。強くそう思う。大人が思っている以上に子どもはすごい。そう痛感した。
この本には様々な児童文学が紹介されている。どれも面白そうで手に取ってみたいと思うものばかりだった。 -
・この宇宙のなかに子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、ひとりひとりの子どものなかに宇宙があることを誰もが知っているだろうか。それは、無限の広がりと深さをもって存在している。大人たちは、子どもの姿の小ささに惑わされてついその広大な宇宙の存在を忘れてしまう。大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちの中にある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する「教育」や「指導」や「善意」という名のもとになされるので余計にたまらない感じを与える。
私はふと、大人になるということは、子どもたちの持つこのような素晴らしい宇宙の存在を少しずつ忘れ去ってゆく過程なのかとさえ思う。それでは、あまりにもつまらないのではなかろうか。
(僕は覚えている。4歳の時の自意識と、今の自意識、自我というか、自分というものの観念が全く変わらないという事を。人を見る時、相手が大人とか考えず対等に思っていたなあ。)
・自分の子どもが自分が養子であることに気づいたのではないか。このような時、本人に打ち明けるべきか、何が正しいかという議論は何とでも言え無意味である。ともかく養子としてもらわれてきた本人にとって、その事実がどれほど簡単に受け入れ難く、大変なことか、ということである。それに大人がどれ程共感できるかが最も大切なことなのである。
このような時に私が「専門家の意見」として秘密を保持し続けるべきだとか、打ち明けるべきだなどと答えると、この親たちは専門家に自分たちの責任を肩代わりさせて養子となった子どもと共に背負うべき苦しみを放棄してしまうであろう。
だから、このようなとき私のするべき事は、期待されているような「答」を言うのではなく、この子どもの置かれている状態を、親たちに心から分かってもらうように努力する事なのである。
・心理療法をしていて、特にそれが死にまつわる事であるとき、このようなまったく不思議な現象に出会う事が多い(死の時刻に縁者に挨拶にくる、しかも同じ姿を複数の人が見る、など)。
われわれはこれをどう説明するかなどというよりも、事実は事実として受け止め、そこに込められた意味について考えてみるべきだろう。
・心理療法というととかく来談者の秘密を暴き立てるものと思っている人もあるようだが、この例に示されるように、われわれはむしろ、その秘密をできるだけ大切に扱うのである。 -
遊戯療法の事例や児童文学を例にあげながら、子どもの心がもつ深くて広い宇宙について解説する。子どもへの温かい敬愛の情が、全編に渡って文章を通して伝わってくる。子どもは単なる小さな半人前の存在ではなく、それぞれに確固たる心を持って成長してゆく存在であることを、自分もそうだったと重ね合わせて思い出した。もっと子どもの心に触れるために、紹介されている児童文学を読みたくなった。
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読みやすかったです。様々な本が引用されていて、そちらが読みたくなりました。
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臨床心理学者の著書にしては親しみやすいというかファンタジックなタイトルだなと思って買って読んでみたら、出だしから児童文学全開で交えながら子どもの可能性が語られていて、私にとっては好みに合っていて興味深かった。
人間が興味の対象である点で、心理学も教育学も文学も同じ人文学の中でボーダレスに共存しているのだなということが感じられた。
また、まさに子どもの宇宙みたいな、子どもの純粋さとか、秘めてる可能性とか、いい意味での未成熟さとか弱さとかを認識することは自分のことを考える上でも大事なことだなと思った。子どもと自分との差分を考えることが、何を得て何を失ってしまっているのか認識するきっかけになると思った。
自分のことだけではなく子どもとの関わりにおいても当然意義が大きい。子どもを尊敬する気持ちとか愛おしく思う気持ちが強くなった。 -
学生の頃読んだものを再読。
子どもの心や頭にある(そして大人である我々が手放してしまった)広い宇宙に想いを馳せながら、その宇宙を汚すことなく子どもと向き合うための指南書。
教育や福祉で子どもに関わる人にはぜひ読んでほしい。 -
かつて子どもだった時の、あの、言葉では言い表すことができなかった様々な思いとこの本の中で再会することができた。あの時はとてつもなく重要なことだったのに、いつの頃からか段々と考えることをやめてしまったなぁ…
子どもには子どもなりの道理がある…そのことを忘れずに子どもの話に耳を傾けることができる大人でありたい。