芸術のパトロンたち (岩波新書 新赤版 490)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004304906

作品紹介・あらすじ

芸術創造の長い歴史のうえで芸術の保護者たるパトロンの果たした役割は大きい。富と権力を誇るルネッサンスの王侯貴族や教会、新興の近代市民階級、コレクターや画商、現代の政府・企業。彼らは芸術のあり方にどんな影響を与えたのか?美術館や展覧会が登場した意味とは?社会的・経済的担い手とのかかわりに光をあてるユニークな美術史。

感想・レビュー・書評

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  • 昔は絵画も安かった?~ルネサンスの画家は芸術家(アーティスト)ではなく職人(アルティザン)だった - 銀座の絵画販売・買取の画廊- 翠波画廊
    https://www.suiha.co.jp/column/merumaga_180403/

    January 11, 2023* Art Book for Stay Home / no.109 - 清須市はるひ美術館 館長ブログ
    http://museum-kiyosu.jp/blog/blog/2023/01/11/january-11-2023-art-book-for-stay-home-no-109/

    芸術のパトロンたち - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b268309.html

  • 芸術家の保護者たるパトロンの存在とは。
    パトロンの登場から、影響、歴史の中での変化を語る美術史。
    序章 パトロンとは何か  I パトロンの登場  
    II 栄光のパトロン    III パトロンの拡大
    IV 新しいパトロン    終章 パトロンの役割
    カラー口絵2ページ。本文中にモノクロ画像有り。
    芸術家を見出し、保護者と成り、その才能が発揮出来る
    活躍の場を与える、パトロン。その登場はルネッサンス期。
    ただの職人から“芸術家”へ。
    署名、自画像で名を残そうとする芸術家が登場する。
    フィレンツェの多くの同業者組合による芸術保護活動と、
    個性尊重の気風が、芸術の「新風」への期待を持って、
    芸術家を見出し、制作を依頼する。また、裕福な商人や銀行家は、
    信仰心からの宗教芸術の制作を依頼する、個人のパトロンと成る。
    時は経て、君主たちは自らを宣伝するために肖像画を依頼。
    その庇護により「宮廷人」としての芸術家が生まれる。
    バロック期には、主にカトリックの教皇や枢機卿の高位の者。
    オランダの裕福な市民たちは、様々なジャンルの絵画を求め、
    画家の専門が細分化された。市民団体も集団肖像画を依頼。
    ロココ期のフランスは、芸術愛好家の存在。
    近代の、美術館の登場と新興市民。手軽に入手出来る石版画。
    アカデミーやサロンの硬直化により、個展やグループ展を
    開催する画家が増えた。美術批評家の登場と公募展の始まり。
    見込んだ画家の作品を扱う、画商の登場。
    更に、芸術の保護と推奨を政策とするパトロンとしての政府の姿。
    大物コレクターたちの蒐集、企業のメセナ活動の展開。
    そして、現代の「パブリック・アート」の拡がりへ。
    パトロンというと、芸術家を庇護し、生活を支える、君主や
    裕福な者たちという印象ですが、ここでは、購入し、紹介し、
    広めることにより、芸術家を支えるパトロンにも
    視点を当てています。かなり範囲が広いので、
    分かり難い面もありますが、芸術史、歴史の変遷の中での
    パトロンという存在を知るには、なかなか面白かったです。
    また、制作費、材料費や手間賃等、当時の芸術家たちの
    金銭事情をも提示することで、彼らの生活をも分かることも、
    興味深いものでした。

  • 画家や彫刻家という仕事が職人から〈芸術家〉へ変わろうとしていたルネサンス期、彼らに出資し活動を後押しするパトロンが生まれた。王侯貴族や教会だけでなく、メディチ家のような銀行家や商人たちもお抱えアーティストを持ち、自らのコミュニティのために作品を作らせた。フランス革命後に美術館の概念が誕生すると、芸術は権力者の狭いコミュニティから飛びだして広く大衆に鑑賞されるものとなり、美術評論家という存在も台頭しはじめる。西洋絵画の世界を中心に、パトロンを担う人びとの変遷を辿る。


    職業としてのアーティストを考えるための基礎になる話が満載。作品成立当時の値段が細かく示されるので、たとえば19世紀にアカデミー入賞した画家と落選した画家の売値の差などを知ると、アカデミーから否定された印象派画家たちの見え方も変わってくる。
    王侯貴族から注文されて作品を作っていた時代は、依頼主(パトロン)と芸術家と鑑賞者が文脈を共有していた。だからこそ現在の私たちから見て画題がよくわからない絵もあるが、それは元々狭いコミュニティのためだけに描かれたものだからだ。時代が下って、芸術が商人やブルジョワのものになると画商が生まれ、さらに不特定多数の人びとに鑑賞されるものになると美術評論家が生まれてきた。パトロン(芸術にお金を出す人)と芸術家の距離が広がるに従って、作品を位置づけ文脈を説明する他者が必要になってきたということだ。これは大衆文化にとっての批評とは、という大きなテーマに繋がっていると思った。

  • 芸術とそれを取り巻く社会的な要因について書かれた本

    芸術の話をする際、芸術家自身の生活などの視点がないため、芸術家が浮世離れして感じられることがあるが、もちろん彼らも家賃を払い食費がかかっていたんだなあ、と実感できる。

    パトロンが個人から社会へ移り変わる過程で芸術は表現の自由を手に入れ、それと同時に貧乏にもなったのが面白い。自由と責任は一体…

  • 芸術家たちの創作活動を支えたパトロンたちに注目し、彼らを通して精神史的・社会史的観点から芸術のありかたを考察する試みがなされている本です。

    レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめとするルネサンスの芸術家を支えたのは、教会や王侯貴族たちでした。その後、ヨーロッパにおける市民社会の成立によって新興階級である市民が芸術家たちの新たなパトロンとなり、印象派以降は批評家や画商が、さらに現代では美術館や展覧会が、パトロンの役割を果たすようになります。パトロンたちと芸術家の交渉のなかから作品の価値がかたちづくられていくことの問題にせまるための、格好の入口になる本だと思います。

  • レポートのために読んだやつ。歴史が主で、だけど最後の方には現代のパトロンを分析している。作者はこの世界の大家らしい。

  • 西洋美術を、パトロンという視点から考察。

    ちょっと難しそうなので少しだけ読んで断念しました・・・。

  • 地元の図書館で読む。著者は、「名画を見る眼」等の著書で著名な大原美術館館長です。正直、期待はずれの本でした。テーマは、芸術家とその注文主の関係です。近代における芸術家の姿を描いた部分は、一般論ではなく、印象派の画家のものです。もう少し調べて、真面目に書くべきです。別の描き方があったのではないのでしょうか。読みやすい本ですが、好きになれません。この分野に興味のある人は、別の本を探した方がいいです。

  • パトロンの歴史がわかりやすく、おもしろかった。

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著者プロフィール

高階 秀爾(たかしな・しゅうじ):1932年、東京生まれ。東京大学教養学部卒業。1954ー59年、フランス政府招聘留学生として渡仏。国立西洋美術館館長、日本芸術院院長、大原美術館館長を歴任。現在、東京大学名誉教授、日本芸術院院長。専門はルネサンス以降の西洋美術史であるが、日本美術、西洋の文学・精神史についての造詣も深い。長年にわたり、広く日本のさまざまな美術史のシーンを牽引してきた。主著に『ルネッサンスの光と闇』(中公文庫、芸術選奨)、『名画を見る眼』(岩波新書)、『日本人にとって美しさとは何か』『ヨーロッパ近代芸術論』(以上、筑摩書房)、『近代絵画史』(中公新書)など。エドガー・ウィント『芸術の狂気』、ケネス・クラーク『ザ・ヌード』など翻訳も数多く手がける。

「2024年 『エラスムス 闘う人文主義者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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