西遊記: トリック・ワールド探訪 (岩波新書 新赤版 666)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 109
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306665

感想・レビュー・書評

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  • 『西遊記』って、私を含めドタバタ冒険譚みたいなイメージを抱いている人が大半だと思うけれど、本書ではそうしたイメージが確実に覆る。

    たしかに表面的にはドタバタなんだけど、その裏にはびっしりと論理の網が敷かれている。

    ある種ジェイムズ・ジョイス的、特に『ユリシーズ』的だなと思った。『オデュッセイア』を下敷きに好き放題するジョイスと、史実から発展した玄奘三蔵の逸話を好き放題する『西遊記』。

    『西遊記』がすごいのは、元々あった三蔵法師や孫悟空のお話をまとめ上げ、構成し直し、時には創作を挟み、物語として成立をさせているという点。そしてもちろんその裏には数や五行にまつわる様々な仕掛けを隠している。

    途中のX氏たちの会話劇のところ、あそこが最高。聞き取れない箇所があるのがいい。ふつうの新書とは違う。『ジェイムズ・ジョイスの謎を解く』みたいな匂いもしたりしなかったり。

    やっぱり訳者本人が解説してるからか説得力が桁違い。訳者がどういうことを考えながら翻訳してったのかを辿れるのも楽しい。

    ただ、牽強付会な論理で繋ぎ合わせているような箇所もあるっちゃあるから、得意になる憺漪子みたいになってるのかもしれないと思うと少し怖い。

  •  6〜7頁の自筆イラストを見るに、中野教授は絵心もおありだ。著書に図解が欠かせないのもよく解る。
     西天への旅を阻害する妖怪たちは三蔵の肉を喰らおうとし、女怪たちは三蔵の元陽(精液)を狙おうとする。後者で、西遊記の煉丹術への傾斜がうかがえる。
     第2章「数字の読みかた」の内容は岩波文庫「西遊記」(十)の解説・補で触れられていた。
     第3章「組み立て工事」の5「工事現場から」、西遊記を解体・再構成した匿名頭脳集団の架空問答が伝法な口調も含めて面白かった。
     読んだ後では、岩波新書666という数字の並びに隠喩を感じてしまう。

  • 『西遊記の秘密』とかぶる内容がいっぱいあったけど面白かったよ。ただ、山場は「はじめに」の三蔵の人物説明のとこやな。

    西遊記って内容そのものを読解するよりも、構造とか構成とかそーゆーのを論理的に読み解いていくほーが楽しいんだろか。

  • 前半は面白いんだけどねえ…

  • [ 内容 ]
    孫悟空など登場人物のイメージから、西遊記は荒唐無稽な作品と思われがちだが、はたしてそうだろうか。
    西遊記の全体構造がもつ極度の論理性、抽象性に注目した著者は、五行、易、錬金術などの思想を基に、三蔵法師玄奘をめぐる伝説、説話、物語本、遺跡などにのこる図像資料を駆使して、西遊記にひそむ仕かけを解き明かしてゆく。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 西遊記を知ってる人なら読むべきです。

  • 2005年4月6日

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著者プロフィール

1933年生まれ.
1956年,北海道大学文学部中国文学科卒業.
北海道大学文学部助教授.
主 著:
砂漠に埋もれた文字—パスパ文字のはなし (塙書房,1971)
海燕(長編小説) (潮出版社,1973)
中国人の思考様式—小説の世界から (講談社,1974)
カニバリズム論 (潮出版社,1975)
悪魔のいない文学—中国の小説と絵画 (朝日新聞社,1977)


「1979年 『辺境の風景 日本と中国の国境意識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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