- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004308294
作品紹介・あらすじ
フランス留学で培われた広い国際的視野と自由主義をもって、軍閥支配に抵抗しながら、明治から昭和まで長期にわたって権力の中枢にいた政治家の評伝。時代が一つの方向に流されていく時、それに歯止めをかけられるバランス感覚をもった稀有の政治家として、また和漢洋の学問や詩文に造詣が深い文化人としても興味ぶかい。
感想・レビュー・書評
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明治から昭和にかけて、権力の中枢にいた元老政治家の評伝である。
昭和史の資料を読んでいると、度々その名前が登場するのでまと
まった評伝を探していた。
パリ講和会議出席の折り、同行した近衛文麿がコロンボ寄港中の植物
園見学の際に車の窓から手を出して枝を折った。
「そのような野蛮な行為をする者はつれていけぬ。ここから日本に帰れ」
近衛家は五摂家筆頭。清華家の西園寺よりも家格では上位に位置する。
それでも近衛公を叱りつける西園寺が好きだ。
政治家としてはリベラリストなのだろう。しかし、皇室を守ることに
かけては誰よりも心を砕いた人ではなかったか。
「いくつかの政党が分立しているということは、もともと争うために
であります。但し利権や私情の争いは断じて許さるべきでなく、常に
君子の争いでなければなりません。議会に於いては、正々堂々と、
各自の所信を披歴し合い、真面目に討論を闘わすべきで、殿下が
政争そのものを非難あそばされることは御再考を煩したいと存じます」
軍部に傾倒して行く秩父宮への西園寺の苦言である。前半の部分は現代の
政治家センセイも肝に銘じてもらいたい。
明治の元勲は次々と世を去り、91歳という高齢まで生きた西園寺は正に
「最後の元老」である。小さな部分では妥協も辞さないが、大枠では決して
譲らないという強固な意志の持ち主でもある。
軍部の暴走を危惧し、英米との開戦を回避しようとした。あの時代にあって、
希有な存在である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半はちょこちょこ面白いエピソードが挟まっていて楽しく読めたのですが(パリ留学や東洋自由新聞社時代の交流が楽しそうで和む…)後半から少し読むのが辛くなってきました。戦前の軍部の暴走に何とか歯止めをかけようとする姿が、全部終わった今読んでいるとはがゆい。西園寺が戦争を止められなかった原因、思想的欠陥なんかを冷静に、というかけっこう突き放した感じで書いてありました。
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明治から十五年戦争期までの政治史について、西園寺公望の視点から評伝した名著。西園寺公望という人物についてより一層の理解が得られ、大変勉強になった。
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読了 20220611
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立命館大学を創った人。昭和天皇にNOと言っちゃうぐらい戦争に反対していた人。あと50年この人が生まれるのが遅かったら日本は戦争をしていなかったんじゃないか。少数派が日陰で生きる時代に堂々としていて、しかも文化人だったというのが興味深い。一目置かれていたんだと感じる。
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元老として明治以降戦前までの日本に影響を与え続けた公望。リベラルな思想の持ち主であり、それ故苦悩に苛まれることも。そんな公望がいかにして戦っていくのかを描く物語。
……というほど派手な伝記であるわけではない。
しかし、西園寺公望という人物がどれほど偉大な人物であったかを知るには十分すぎる著作。
筆者が言うように、結局公望にとっては天皇をいかにして守るのかということが最重要事項であり、その意味で彼は貴族だったのかもしれない。しかし、彼は失敗した者だったのだろうか。それを判断するためにも、他の本にもトライしてみたい。 -
最後の貴族らしい貴族なのか、生まれた時代に翻弄されただけなのか、しかしながら彼がいなければ今の日本がないのも事実。
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電子書籍端末で読む。長い間、積読でした。きまぐれで読み始めました。意外に面白いのです。再読の価値があります。
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公家として生まれ、フランスで10年の修業を積んだ後に
桂園時代を経て最後の元老として没した西園寺公望の伝記。
明治大正期に日本で絶大な力を持った元老が
昭和期になり途端にフェードアウトしたのがなぜか気になっていたが
その経過が分かりやすく記されている。
山県のようにバックボーンが厚く、声が大きい元老ではなかったために
西園寺は消えていったように感じたが
そこに西園寺の魅力はあったようにも思う。