社会起業家: 社会責任ビジネスの新しい潮流 (岩波新書 新赤版 900)
- 岩波書店 (2004年7月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004309000
感想・レビュー・書評
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社会起業家の全体的なイメージをつかむのに非常によかった。
というのも
・社会起業家とは何かについて書かれている
・事例が多く載っている
この二点がよかったからであろう詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
印象に残った事例
・ヒューレット・パッカード。インド南部の貧困地域にコンピュータを普及させようとしたとき、現地に電気が通っていないこと、インド人が写真付き身分証明書を持たなければならないことから、太陽光発電式のプリンターとデジカメを売り込んだ。現地では写真ラボというビジネスが生まれた。
⇒自社の新製品の開発、現地の新ビジネスの普及とステークホルダーの利益に貢献
・パタゴニア。自社がつくる洋服が環境に与える影響の自己調査を実施。綿布には枯葉剤や化学薬品が使われていた。その結果、ペットボトルを再生したフリースやオーガニック100%のコットン
に切り替えた。環境に与えるダメージは購入した後にも発生する。洗濯、アイロン、ドライクリーニングである。そこでアイロン、ドライクリーニングが不要な製品をつくった。製品の影響はトータルコストで評価する必要がある。自然染料でも色落ちが早ければ、すぐ棄てられて環境負荷は大きくなる。そんな場合は科学染料のほうが良いかもしれない。
・画期的な喫茶店「ホワイト・ドッグ・カフェ」。市内の貧困地域の子供たちをレストラン産業へ結びつける専門学校の設置。リサイクルや水質浄化の現場を見学するエコツアー。(これらは
第一義的な知識と経験を得られることができる。これらの知識は直感を与える。)日曜の映画上映会。国際問題を話題にしたテープルトーク。(このような話題は当事者意識が醸成されにくいため、知識のひけらかしに終わってしまう可能性もあるだろう。)食事、教育、体験のトータルコーディネーションとしての場の提供が先進的である。 -
社会起業家って友達が喋っててなんだろうって思ってて
この本を見つけた時にその疑問が再び沸き起こってきたから読んでみた。
利益一辺倒ではなく、社会の利益(いわゆるNPOがカバーする事)を考えて行動する企業
ないしは、寄付金等に頼ってばかりではなく、利益をあげる事ができるNPO
のどちらかを率いる、設立する人たちを社会起業家と呼ぶらしい。
例えば、営利企業として設立されたアイスクリーム屋さんなんだけど
売上の多くを寄付に回したり、アイスクリームのカップをエコな紙で作ってたり
っていうのが、社会の利益を考えて行動する企業(企業の社会化)
逆に、NPOなんだけどやたら資金に占める売上高の割合が高い事は
NPOのビジネス化、というらしい。
はっきりした定義があるようだけど実はないっていうのはわかった。少なくとも伝わってこなかった。
今まであった営利企業がCSRとかをはじめたらそれは社会起業家が率いてる企業と呼ぶのか?
普通のNPOも収入の50%以上が売上というところがほとんどらしいが、
じゃあどこからが資金に占める売上高の割合が高いというのか? とか、疑問は湧いたけど答えはなかった。
まあ、たぶん言葉の定義なんてそんなに重要じゃなくて、重要なのはこういう現象が起きてる事、だろうけど。
なぜ、こういう状況になったのか。変化が起きつつあるのか。
会社は、
グローバル化し国家を凌ぐほどの経済規模を持ち始めたから
ステイクホルダーズの要求が変わったから
エンロン事件の影響(エリートMBAホルダーが大企業のあり方に疑問を持ち、公正な企業の起業に走った、らしい)
NPOは
小さな政府の増加
資金調達が困難である事
ベンチャー・フィランソロピーの登場(ビルゲイツの財団とか。今までの寄付者と違い、長期的な視野に立ち寄付をし、
かつNPOに足りない経営手腕等々を重要視し、それを提供できる財団が増えた)
らしい。
さらに、彼らが協力し始める事がどちらの利益にもなるため
パートナーシップを組み始めている(例として、スタバがフェアトレードのコーヒーを使ってる事)
その潮流は、
グリーンMBA(コンプライアンスやサステイナビリティ等の授業がMBAでも必須科目になり始めている)
社会責任投資(Social Responsible Investment:SRI)
社会起業家ネットワーク
みたいなものでさらに補強されてるのだとか。 -
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