生活保障 排除しない社会へ (岩波新書 新赤版 1216)

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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312161

作品紹介・あらすじ

不安定な雇用、機能不全に陥った社会保障。今、生活の不安を取り除くための「生活保障」の再構築が求められている。日本社会の状況を振り返るとともに、北欧の福祉国家の意義と限界を考察。ベーシックインカムなどの諸議論にも触れながら、雇用と社会保障の望ましい連携のあり方を示し、人々を包み込む新しい社会像を打ち出す。

感想・レビュー・書評

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  • 日本型の社会保障制度が、男性が働き手として家族を養うことを基本に設計されているので、現代の状況にあわなくなってしまっている。
    スウェーデンの仕組みのことなど。

  • ◯生活保障、社会保障と雇用政策との相互連携にという観点で、福祉国家の分析を丁寧に行なっている。
    ◯政策のフレームの議論中に、「生きる場」という、なんとなくエモーショナルな概念を持ってきたところが印象的で、福祉的な視点も含まれてきて新しく感じた(聞くところによると、政治学の世界では珍しいことではないようだが。)。
    ◯新書という性質上難しいかもしれないが、政策提言の部分をより詳しく充実してもらえれば、よりこちらの学びもますように感じた。

  • 2009年刊。著者は北海道大学法学部教授。年金・雇用確保・社会保険等で包摂される生活保障の基礎的情報を開示。日本型の成立・解体から、スウェーデンのそれとの比較を踏まえ、将来の目標(ベーシックインカム・アクティベーションの異同、理念型と折衷型含む。目的の差異)を明らかに。当たり前のことだが、ベーシックインカムといえども多様な内実を持つこと、その違いにより実現する政策目的が大きく変わることが良くわかった。雇用確保の方法論は甘いように感じるものの、教育から生活保護的な現金給付まで広く目配せの効いた好著。

  • S364-イワ-R1216 300053394
    (岩波新書 新赤版 1216)

  •  「生活保障」が「生活保護」と違うことは、何となくわかった。金銭的援助だけの生活保護では不十分であり、皆が意欲を持って生きがいを感じながらフレキシブルに働けることが理想であると思う。

     さすが岩波新書、内容がお堅い。しかも大学院教授(政治学博士)の著作だけあって、大学の講義を聴いているようだった。お世辞にも内容を理解したとは言い難い。数年前の新聞書評欄で「分かち合いの経済学」とセットで紹介されていたのを、セットで購入したままとなっていた。
     数年間もの積読書籍であったところ、何とか消化したい、スッキリしたい気持ちだけで、ようやく最後まで目を通した。ほとんど斜め読みであったが、ページは飛ばさずに繰ることができた。手垢をつけた程度というところか。

     2015年は、「積読書一掃イヤー」として、読みたい本の合間に、積読書籍(ほんの数冊だが)にも手垢をつけていくことができればいいと思っている。

  • 授業の参考図書ではじめに,1,2章,おわりにを読んだ今までの生活保障のやり方を解体し新たな保障が必要と述べてある。

    現代の大きな政府を好むが、税徴収は望まない家計の矛盾を改めて実感し、非正規雇用の危うさもよくわかった。

    政策と家計が乖離しないようより一層の政治参加が求められると思うので、政治に関心を持ちたい。

  • 雇用と社会保障を結び、社会的包摂を目指す論調は新鮮。考える土台とすべき統計データとこれまでの施策が豊富に紹介されている。

    しかし、雇用に関して世界が同時に行き詰まっているからか、決定打となる政策集を描くことに成功しているとは言い難い。示唆はあるのだが。

    本書の範囲を超えるが、働くことの意義を深める必要性を感じた。

    ・パート・アルバイトの21.9%、派遣労働者の17.2%が配偶者の厚生年金を含めていっさいの公的年金に加入していない(平成18年版労働経済の分析)
    ・日本の失業者の内、失業手当を受給していないものは77%、アメリカは59%、ドイツ6%と大きな差がある(ILO、2009)
    ・国民健康保険は低所得者の加入者が多いほど保険料が高くなる。寝屋川市の場合、世帯所得200万円の4人家族の保険料は全国トップの年間約50万円(2008年毎日新聞)
    ・生活保障は所得保障ではなく、人びとが他の人びとと結びつくことを可能とし、生きる場を確保する見通しを提供できるものでなければならない。
    ・P19,日本人が信用する対象:1.家族、2.天気予報、3.新聞。スウェーデン人:1.医療、2.警察、3.大学
    ・政府に対する信頼の強さは、市民相互の信頼の度合いに比例する。
    ・所得制限などをせずに全ての市民に提供される普遍主義的な社会保障や公共サービスに接するとき、政府と他の市民に対する信頼が高くなる。
    ・子ども手当は家計に一息つかすことはできるが、保育サービスなど就労支援などと一体化して、雇用拡大につなげなければ財源を確保できない。
    ・今だけでなく将来に向けた安心とリンクしなければ、現金給付は預金に回る。
    ・広範な権利保障を主張する陣営に限って、国家権力の縮小を求める傾向が強かった。
    ・初めてついた仕事が非正規であった男性は1982年から5年は7%だったのに、2002年から5年は31%に。
    ・1968年の永山事件は社会からの差別的なまなざしが彼の自由を奪ったが、秋葉原事件はまなざし不在の地獄の中でおこった。
    ・スウェーデンでは1971年に所得税を夫婦合算非分割の世帯単位の課税から個人単位にして、女性の就労を促した。
    ・教育休暇制度
    ・日本では現金給付というと就労意欲をそぐと言われているが、スウェーデンでは、頑張って働けば賃金が上昇し、社会保障給付も上昇する。
    ・日本の最低賃金はOECDの中でも低い。フランス60.8%、イギリス41.7%、アメリカ36.4%、日本は32.9%がフルタイム平均賃金に対する最低賃金。背景は男性稼ぎ主が中心ということ。
    ・第6次産業
    ・参加支援は翼の保障。日本型の殻の保障ではなく。
    ・ドイツの育児休暇中は所得比例型の手当。出産、育児と就労、キャリア形成をともに奨励していることになる。
    ・日本の生活保護自立支援プログラム:140万人の受給者。プログラムの対象者5万6000人。実際の支援開始7300人。就職者3000人。
    ・日本では事業主の社会保険料負担が相対的に小さく、GDP比で、4.5%(2002年)。フランス11.4%、ドイツ7.3%。
    ・「貧困はなぜ生じるか」日本では、社会の不公正が原因と答える人の割合がOECDで一番小さい。

  • 賃金や所得保障だけでなく、社会の中に居場所を見つけることが大事。派遣では、その居場所がない。

    福祉重視と小さな政府は成り立たない。政治不信行政不信が関連している。

    政府に対する信頼の強さは、市民相互の度合いに比例する。福祉国家になると人々相互の結びつきが強くなる。

    すべての人に適用される公共サービスは信頼されるが選別的な制度は不信を生む。

    日本は雇用保障があったがそれが崩れた
    スウェーデンは就労原則(皆が働くべき)がある。公正感の確保タダ乗りは許さない。
    労働移動を進める。同一労働同一賃金。
    デンマークのフレクシキュリティ。デンマークは失業を怖がらない。

    大きな社会保障支出は経済活力を奪う、か。

    スウェーデンも雇用なき成長へ。職の減少。失業の長期化。

    ベーシックインカムは、定期給付か一括給付か。定期給付は生活のクッション、一括給付は成功への発射台。
    一定の時期にまとまったお金を給付する。
    トービン 給付付き課税。一定までは給付が多い。
    還付金付き消費税。

    スウェーデンは高齢者にも就労倫理が根強い。支給繰り上げは上限年齡撤廃。

    スウェーデンの年金制度=拠出は固定。保険料を老死で折半。給付は、その年の平均余命で計算される。

  • はじめにー生活保障とは何か
    第1章 断層の拡がり、連帯の困難
    第2章 日本型生活保障とその解体
    第3章 スウェーデン型生活保障のゆくえ
    第4章 新しい生活保障とアクティベーション
    第5章 排除しない社会のかたち
    おわりにー排除しない社会へ

  • 変化への対応が遅いことと、社会への参加を促すような保障制度になっていないことが現行制度へのもやもやの要因か。スウェーデンの社会保障の内容がメリット・デメリットの両面から分かってよかったです。

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著者プロフィール

1958年生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。総務省顧問、内閣官房国家戦略室を歴任。現在、中央大学法学部教授。専門は、比較政治、福祉政策論。
著書に『貧困・介護・育児の政治:ベーシックアセットの福祉国家へ』(朝日選書 2021)、『共生保障:〈支え合い〉の戦略』(岩波新書 2017)、『地域包括ケアと生活保障の再編』(赤石書店 2014)他。

「2021年 『談 no.122』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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