革命とナショナリズム――1925-1945〈シリーズ 中国近現代史 3〉 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312512

作品紹介・あらすじ

協力と対立を繰り返しつつ、日本の侵略に立ち向かい、中国を大きく変えていった国民党と共産党。このふたつの政党を主人公として、人びとの意識や運動の実際、ソ連との関係などにも目を配りながら、革命と国家建設、日本との戦争の時代を描き出す。孫文の死から抗日戦争終結までの激動の二〇年。

感想・レビュー・書評

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  • 辛亥革命は武昌起義が重要である。ここから革命の動きは全国各地に広がった。それまでも広州起義などの武装蜂起がなされていたが、短期間で鎮圧された。武昌と漢口、漢陽は武漢三鎮と呼ばれ、長江中流の要衝である。ここを革命派が掌握したことが革命を方向付けた。武漢三鎮は後に武漢となる。21世紀に武漢で新型コロナウイルスが確認され、瞬く間に世界に広がったことも武漢の地理的重要性を物語る。

  • 1925年から1945年までの中国史を分かりすく丁寧に解説した本です。
    日本と言う外敵がありながら国共合作がなかなか進まなかった理由や、支那事変を日本も中国も戦争と呼ばなかったた理由など、なるほどと思う記述がいくつもありました。

  • 蒋介石つえー。張学良………………………。

  • 国共の都合に合わせて改変されてきた歴史から史実をひとつひとつ解き放つ。結局、中国には2つの歴史があるという事であり、それは今でも続いていて、香港統治の失敗によりさらに対立が深まっているような。
    中身はマジメでしっかりしている印象だが「革命とナショナリズム」という題名は少々大袈裟ではないのかと。この時期の中国は内乱における対立と妥協で右往左往しているだけの気がするが。

  • 孫文の死からから終戦(中国側から見たら抗日勝利)の20年に絞った中国の歴史をとりあげる一冊。わずか200ページ強といってもかなり内容は濃くて読み応えがある。

    著者もあとがきに書いているように、この時代の中国史は一方の主役が日本となってしまっている以上、どうしてもイデオロギー的な観点が含まれることをさけることが出来ない(たとえ書く側の人間がどれほど中立であろうとしても、取り上げる事象や書き方を「解釈」する側の人間がイデオロギー色を勝手につけてしまう場合もあるので)。

    なので、この時代の歴史を読もうとする場合には、書いている人間がどのような意識で書いているかを理解して読むのが非常に重要になる。本書では、この20年を国共間の勢力争い - 日本の侵略 - 大国間における中国の位置づけ、というように複数のレイヤーを重ねることで、当時の中国のおかれている状況を描こうとしている。
    少なくともその時代のことをほとんど知らない人間が最初に読む分には、どちらか一方の史観に染まらずに読むことが出来るのではないだろうか。

    個人的には、中国にいると共産党側からの視点での話が多いので、改めて蒋介石と国民党が一方の中心となる部分は勉強に成る部分が多かった。
    現代まで至る様々な要素が内包されており、基礎理解として役に立つ一冊。

  • 南京国民政府と中国共産党の反目の実態や遠因について、もっと知りたくなった。それには蒋介石と毛沢東が何を考え、どこを目指していたのかを知らなければならない。まだまだ知らないことだらけだ。

  • 9784004312512 240+2p 2010・10・20 1刷

  • 孫文後の時代から、日中戦争を経て、その終結までを描く。
    各地で起こる政府や、政府移転、国共の争いなどに加え
    全体としての”中国”と日本の争い、果てには連合国、ソ連等の思惑も絡み
    かなり複雑な時代であることがうかがえるが、
    本書はそれなりによくまとまっており、それなりに読みやすい。
    そういった意味合いではある程度視点を固定して縦の軸で
    歴史を見ざるを得ず、視点を移した場合にまた縦軸をさかのぼって
    軸をたどる必要があるため、逐一頭をリセットして整理していく必要がある。

  • シリーズ第3巻。昔ながらの「革命史観」とは異なるが、「政治と革命に正面から挑んだ」(あとがき)書であり、国民・共産両党の動きを中心に描いている。1~4章では両党の党内外での抗争を主とし、5章ではやっと「ナショナリズム」が抗日の文脈で出てくる。西安事変も少なからずこれに動かされたのだろうし、これに燃えて抗日戦に参加した若者も確かにいたのだろうが、書名にも挙げられた割には、本書を読むとこの時代の中国は「抗日ナショナリズム」という美名の下ではなく内部抗争やコミンテルンの指示といった政治的要素で動かされていたとの印象を受ける。それが筆者の意図かどうかにかかわらず。

  • 「革命なお未だ成功せず」の言葉を残して逝った孫文の死から第二次世界大戦終結の20年間が本書の対象時期である。著者は、この時期の中国史は孫文が「遺嘱」として残した課題を実現するのが国民党か共産党なのかをめぐって展開したと見ることができるという。したがって、本書もこの両党を主人公として描かれることになるわけだが、当然、共通の敵としての日本、そして米英ソといった大国の動向も重要となってくる(いうまでもなくソ連が最重要)。

    1991年のソ連崩壊以後の文書や蒋介石日記の公開などの新資料から得られた知見も盛り込まれた本書の叙述はアカデミックな価値も高いと感じられるが、何よりも文章がうまく読ませる。毛沢東が最高指導者の地位を確立する整風運動のなかで、周恩来が自己批判を強要されるところなど秀逸。著者は、さりげなく「晩年にまで至る毛への服従のはじまりだった」(217ページ)と書いているが、まさに続刊では文革に至る毛個人崇拝の経過が描かれることになる。

    現代中国を支配する中国共産党の歴史を知る上でも必読!

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著者プロフィール

1963年生まれ。京都大学大学院文学研究科史学科修士課程修了後、京都大学人文科学研究所助手、神戸大学文学部助教授を経て、現在、京都大学人文科学研究所教授。京都大学博士(文学)。中国近現代史を専攻。著書に『中国共産党成立史』(岩波書店)、『革命とナショナリズム:1925-1945(シリーズ中国近現代史 3)』(岩波新書)、『赤い星は如何にして昇ったか』(臨川書店)、編著に『中国社会主義文化の研究』(京都大学人文科学研究所)、共訳書に『梁啓超文集』(岩波文庫)などがある。

「2021年 『中国共産党、その百年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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