アジア力の世紀――どう生き抜くのか (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314325

作品紹介・あらすじ

二一世紀の情報革命が進めた、生産・通商のネットワーク化・モジュール化は、アジア諸国の経済力と政治力を地域全体として押し上げる。ドル中心主義、中国脅威論、TPPなど共通のリスクを抱える日本が、アジアとの相互依存と連携をとる重要性は高まっている。日本がとるべき方向を、歴史の視点と資料に基づく分析とで鮮明に提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 領土問題は一度棚上げして、アジアはひとつになろうよ。文化も乗り越えられる。さもないと日本の生きる道は無い。

  • 輸出向け生産が途上国で雇用を生み、所得向上を通じて、現地の国内需要を作り出し、さらにそrが現地での外資メーカー、地場メーカーの生産を伸ばすという相乗効果がアジア全域で生まれている。

    好むと好まざるとに関わらず3・11の悲劇は日本にとって明治以来はじめて東洋の覇者としての道が失われた予兆として歴史に刻印されることになうのではないか。ちょうど1985年のチェルノブイリがソ連帝国周縁の予兆として歴史に刻印されたように。

    科学技術に国籍がない、あるとすれば、それは科学技術の発展を支える政治と外交の仕組み、それを支える市民社会の力である。

  • アメリカ寄り情報が溢れ、現首相が親米路線に急速に舵を切る中、バランスをとるために親中派のアジア将来像として通読。アメリカ主導のTPPはアジア分断も狙っており、アセアン・日本主導のRCEPをベースにした東アジア地域統合を目指すべきという意見。軍事力・経済力・文化力を通じた上からのグローバル化ではなく、地域主導・地域利益最大化を目指したグローバル化。日中韓は資本財・消費財・中間財の棲み分けが可能で、発展レベルが異なる東南・北東アジアも相互補完を通じた相互依存環境を作りやすい。EUは不戦を目指し国力を決める石炭鉄鋼生産共同体から出発したが、アジアはインフラ整備の開発共同体から。ヨーロッパがデューレ(法的)の共同体からスタートしたのに対し、アジアはデファクト(事実上)でできるところから機能毎のルール作り。内政不干渉。一党独裁(開発独裁)であっても、経済発展が市民社会を育み政治発展を促すという考え方。ミャンマーだけでなく北朝鮮も同列で語る。さらに中国の軍事力は脅威ではない、核戦力も通常戦力も確証破壊戦略のためのミニマム抑制力レベルであり、外交的抗議、政治的威嚇を超えない。むしろ米国は先制攻撃を辞さず、ミニマム抑制レベルを上げるざるを得ない状況を作り出し、東アジアの軍拡を煽っていると続ける。小さな島の領土問題に拘らず、まず日中韓で経済圏を先行させてRCEPの範を作るべきとの意見。

    前半は世界のフラット化/Gゼロ化、覇権・地政学、産業/情報革命等のキーワードを並べて歴史を総括しつつ、地域主導重視、東アジア共同体偏重の著者の意見に誘導。その背景をテリトリー(領土拡張)→プロダクション(大量生産・消費)→サステイナビリティ、労働資源→フォード・トヨタ→モジュール化、垂直統合→水平分業→ネットワーク分業の時代遷移で補完する。それら自体は表面的な論理展開ではあるが、黄色人種で大航海時代に参加できず、資源国利権を押さえていない日本が、なぜかつての宗主国同様にウマミを吸い上げる先進国の仲間入りを許されたのかというのは確かに不思議。安価な天然資源に支えられて農業工業技術・サービス産業を進歩させてきた先進国だが、今後、新興国の中産階級が増えた時にも安価な天然資源の供給が維持されるのかは不透明。そんな中、アメリカ衰退と平行して生まれたシェール革命が今後の世界秩序にどういう影響を与えるかは興味深い。

  • 著者は70歳を過ぎているでしょうか。
    物事をポジティブに考える性格の人でもあるのでしょう。
    つまり、何事も「取り方」だ。
    戦後処理を国策として扱っている二国(抗日思想教育まで日本の責任と考えるのか)と、他のアジア諸国を一緒くたにしている。
    とにかく、中国、韓国と仲良くするために、戦後処理がきちんとできていないと日本ばかり責めるのはよしたほうがいい。
    あわよくば利益につなげようとする他国の策略にうまく当てはまっていく必要もないのだ。

  • こんな風にアジアが協力できたらいいなあとは思いますが、大陸国のドイツと島国・日本を比較されても、そう簡単ではないと思います。全体的に、学者が机上でデータだけを見て理想論を語っているような印象を受けてしまうのはなぜでしょうか? 決して世界を見に行っていないわけではない著者ですが、もっと庶民レベルまで下りていっていない、という感じを受けました。

  • 302.2||Sh

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著者プロフィール

進藤 榮一(シンドウ エイイチ):1939年生まれ。京都大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。筑波大学名誉教授、アジア連合大学院機構理事長。専門はアメリカ外交、国際政治経済学。『現代アメリカ外交序説』で吉田茂賞受賞。著書『敗戦の逆説』『東アジア共同体をどうつくるか』(以上、ちくま新書)、『アジア力の世紀』(岩波新書)、『アメリカ帝国の終焉』(講談社現代新書)など。

「2022年 『日本の戦略力 同盟の流儀とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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