- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004314394
作品紹介・あらすじ
朝鮮では十七世紀から十九世紀にかけて、朴趾源・丁若〓(ちょう)ら実学者によって、新しい世を準備する構想が発表され、近代化がめざされた。しかし、列強ひしめく中でそれは挫折し、朝鮮は日本の植民地となった。このような過酷な時代とそこに生きた人々を描きながら、朝鮮と明治日本の関係の実像にせまる。エピソード満載の歴史物語。
感想・レビュー・書評
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1392年、李成桂によって朝鮮王朝は始まった。この本は近代資本主義が東アジアを飲み込んでいく過程で朝鮮王朝が巻き込まれ滅亡していく過程を描いている。時代は、党争を抑え王権を確立しようとした英祖と正祖から始まる。儒教国家と言われた朝鮮王朝だが、儒学と実学の戦いでもあった。実学派が勝っていたらば、どのような歴史になっていただろうか。読んでいて日本がこの半島になした出来事に胸が痛い。我々日本人はあまりにもこの歴史を知らなすぎるのだろう。いや知らせない力が働いているのだろうか。それもますます強くなって。最後に申采浩の「朝鮮革命宣言」の全文が載せられている。
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在日二世である金重明氏によるもの。はじめに「あとがき朝鮮や日本の近代史を見る場合でも、愛国心やナショナリズムは百害あって一利のない障害物でしかない。」とあり、また、あとがきに「歴史小説は見てきたようなうそを書くものだが、本書を書くに当たってその点は厳しく自制した。つまり、史実の裏づけのないことは書かず、伝聞はそれとわかるように書いた。」とあり、冷静な自国史が書かれているのだろうと期待したが、冷静さを欠いた史実に裏づけのない叙述表現が目立ち、歴史啓蒙書としての価値を無にしてしまっている。従軍慰安婦問題で韓国に辟易としている方々には、韓国に対する憎しみを増長しかねないので、本書はお薦めしない。
朝鮮開国以前の史実を知らなかったこともあり、その点は評価できる(★+1)。結局、朝鮮王朝の凋落の原因は、鎖国政策・焚書と権力争いにあったと言える。同時期の日本の為政者と比較すると、日本の為政者には「国民を守る」という視点が必ずあったのに対し、李氏朝鮮の為政者たちは、外国勢力の脅威がある中も権力争いをし、ついぞや本書においても、為政者の国を守るという姿勢が感じられなかった。結局、国民を守るという意志のある者が国を治めない限り、国は乱れることになる。
<評価できる点(本書によって知った史実)>
・18世紀、英祖・正祖という聡明な国王を輩出し、親政政治を行っていたとともに、日本で蘭学が起きたように、李氏朝鮮でも清経由(漢文)で西洋文明の摂取が行われていたこと。
・1800年、正祖がなくなると、英祖の継室貞純王后がキリスト教弾圧を命じたこと(辛酉教難)。
“西洋の科学技術受容において、朝鮮が日本、清に大きく水をあけられた原因のひとつが、この辛酉教難だったのである。”
一方、日清戦争の記述以降、反日感情に基づいた冷静さに欠いた叙述が多く、「史実の裏づけのないことは書かない」という著者本人の意思が全うされていない。日清戦争から日韓併合に至るまで、妄言と史実をごちゃ混ぜにしてしまっているため、歴史啓蒙書としての価値を台無しにしてしまっている。
<評価できない点>
・(甲午農民戦争=東学党の乱について)“正確な数はわからないが、犠牲者は数万とも数十万とも言われている。”・・・どこにそのような史実・一次資料があるのだろうか?
・“朝鮮ブルジョアジーによる鉄道建設、鉱山開発などの計画を日本や列強が干渉して中止させ、それらの利権の譲渡を強要した。”・・・日清戦争以前に朝鮮半島に鉄道建設や鉱山開発ができる資本家がいたのだろうか?机上の計画はできたとしても、実行できたのだろうか。史実は、朝鮮半島の鉄道敷設は1899年、日本人によるもの。
申采浩による1923年の「朝鮮革命宣言」を全文掲載しているのだが、「強盗日本」の「破壊」「暗殺」を教唆しており、今日で言えば過激派による革命宣言のようなものでしかなく、とても健全な国家建設を目指したものとはいえない。当時の朝鮮の人たちにも共感を得られなかったのではないだろうか?また、岩波書店は、こんな過激思想を掲載していかがなものであろうか?出版社としての姿勢を疑う。
<目次>
はじめに
第1章 近代朝鮮の前夜―実学者たちの構想
第2章 開国か、鎖国か―揺れる朝鮮半島
第3章 日清戦争は日朝戦争として始まった―戦場は朝鮮だった
第4章 朝鮮王朝の落日―併合条約の締結
あとがき
2013.09.13 新書を巡回していて見つける。日韓併合前の韓国の歴史を理解しておくことは、今後の日韓関係を解決していく上で必要なこと。
2013.09.16 借りる
2013.09.20 読書開始
2013.09.23 読了 -
幕末日本の開国にあたって、多くの人物が様々に考え行動したことは多くの日本人が知るところであるが、同じように開国を迫られた朝鮮王朝支配下の人々はどうだったのか。この本を読めば、日本同様、様々な人物が様々に考え行動していたことがわかる。福沢の脱亜論の是非を論ずるにも、まず、こうした歴史を学ぶ必要があると感じた。
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日韓関係で著者名が韓国名というとどうしても構えて読んでしまうな。これが偏見というものか。竹島領有問題や伊藤博文の暗殺など、興味深い記述が多いが、大院君などはもうちょっと詳しく知りたかった。
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イエズス会はとりわけ東方伝道に注力した。
イエズス会は儒教的な祭礼を認めたが、典礼論争後、ローマ法王はそれらを迷信として排撃するという立場を鮮明にした。
日本には蘭学の伝統があった。朝鮮にはそういう西洋の学問の研究の素地がなかった。 -
朝鮮王朝末期の18世紀より韓国併合までを
学者や外交の視点から解説する一冊。
同岩波新書の「近代朝鮮と日本」と重複する内容が多く、
総じて他書の方が記載がていねいでわかりよいと感じた。
その一方で朝鮮において19世紀前半の西洋科学技術受容の空白が
朝鮮の遅れを招いたという観点は面白い。 -
新書という形式でしかも韓国の人による近代史。お隣の国のことのなのに、知らないことが多いと反省。
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控えめに「物語」をつけているだけでしょうね。
著者のあとがきで言われているように、歴史に忠実であることを心がけておられるようですし、決して架空をでっちあげた「物語」ではないです。
日本史は日本の文科省中心の教科書でしか勉強してこない日本人ですから、近隣諸国の歴史観、視座で眺めるのは新鮮です。
確かに、日本批判につながることになるし、竹島、尖閣にしても、結論的に「日本のものでない」と結論付けられてもいるし・・・・。
だから「違う」とも思わない。
たぶん・・・・、日本側に大いに問題があるのだろう・・・という気持ちにさせられていく。
とくに、歴史認識については、著者も言うようにかなりな溝がある。
この溝が埋められる日は来るのでしょうか。