現代秀歌 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004315070

感想・レビュー・書評

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  • 小野茂樹 あの夏の數かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
    岩田正 イヴ・モンタンの枯葉を愛して三十年妻を愛して三十五年

  • なべてものの生まるるときのなまぐささに月はのぼりくる麦畑のうへ
    (真鍋美恵子)

    前衛短歌運動を端緒とし、「今後100年読まれ続けて欲しい」現代短歌100首以上が、テーマごとに紹介されています。1人の歌人の紹介に割かれているページは見開き1ページほどなので、さくさく読めますしどこからでも読めます。テンポがよいです。

    日常の中でふと短歌を思い浮かべる瞬間。「そういえばこんな歌を詠んだ人がいたっけなぁ」──その瞬間ほど、歌人にとって幸せな瞬間はない、と永田さんは述べます。とても共感しましたし、まさしく短歌という表現の素敵な要素が凝縮されたような1冊でした。1回読んだだけで軽々しく理解した気になってはいけない。本書は何度も何度も読むべきですし、その価値があります。

  • 自分でも言うが、同世代のアンソロジーをつくるのは難しいのではないか。『近代秀歌』は評価が定まりつつあるなかからえらんだわけだしその方針に従うべきでは。本著は、永田和宏の好みを出ない。永田の選は時代の濾過を経て残るか決まる訳だが、百人一首形式における定家の選は定家あってのものである。古今・新古今においても、寄り集まってえらんだわけだし、集合知というのは、時代の変りに人数で篩うという意味があるのではないかと思うわけだ。
    選の方針にしても『近代秀歌』にならって、人口に膾炙した歌をえらぶべきではないか。例えば、俵万智なら「サラダ記念日」の歌をえらぶとか。

    個人的な好みとして、現代短歌はわかりにくく好き出ないと思った。相聞・挽歌・青春を除けば、端正な近代短歌のが好みである。そう言う意味で佐藤佐太郎などはよい。
    ここから各人好きな方面に手を伸ばすと言う意味での入口としては一定の価値がある。

  • 「現代」であるが読めない(漢字,どこで切るのか,等)。情けなさを味わえる世界である。一方で,自分の心情を三十一文字に表せる技能への憧れる。現代だけに戦争が大きな位置づけにある。もちろん災害も。生老病死,愛別離苦,怨憎会苦,求不得苦,五蘊盛苦,歌には四苦八苦が読み込まれることが多いと思うけど,個人的には自然を詠む句が好きだ。まぁその自然の表現に詠み手の心が表れてくるのが面白い。自然を読んでいるものなら何でもいいという訳にはならないから。

  • 『近代秀歌』の姉妹篇で昭和20年から現在までを扱う。

    自分が生きている時代だからというのもあるのだけれど、
    近代秀歌に比べると時代も価値観も多種多様に感じる。
    改めて短歌というものの懐の広さを感じた。

    そして最後の河野裕子さんの話は泣けた。

  • 人生の節目で感じる様々な感情を切り取った
    名歌の数々。
    歌人の視点の面白さを楽しめる。

  • おいとまをいただきますと戸をしめて出てゆくやうにはゆかぬなり生は 斎藤史
    秋分の日の電車にて床にさす光もともに運ばれて行く 佐藤佐太郎
    夕光のなかにまぶしく花みちてしだれ桜は輝を垂る 〃
    岩国の一膳飯屋の扇風機まわりておるかわれは行かぬを 岡部桂一郎
    ひじやうなる白痴の我は自轉車屋にかうもり傘を修繕にやる 前川佐美雄

    この向きにて 初におかれしみどり兒の日もかくのごと子は物言はざりし 五島美代子
    たちまちに涙あふれて夜の市の玩具売場を脱れ来にけり 木俣修
    p231 「この世に何を失はうともこれだけはと抱きしめてゐた珠は、一瞬にしてわが掌の中に砕け去つた。どんな苦悩に逢はうとも、この悲しみにだけはあひたくないと、念念の間に祈りおそれてゐたことに、つひに私は直面させられ、しかも、この不幸については、誰に訴へ歎くすべもない自責に、さいなまれつづけてゐる」(五島美代子『母の歌集』あとがき)

  • 近代秀歌の続編.
    永田さんの解説は前の本にも増して素晴らしい.
    「第一章 恋・愛 第二章 青春 第三章 新しい表現を求めて」と普段の私から縁遠い分野の歌が同時代性をもって強く心に残る.

    だが,それ以降の章では,短歌の現代的な広がりが解説を通して感じられるものの,共感の度合いは正直なところ強くなく,印象に残る歌はあまり多くなかった.ここらが私の現代性の限界.

    最後の「おわりに」は痛切.

  • 現代秀歌だから当然評価が定まっていなくて、でも著名な歌人は一通り入っていて、まあ、重宝だが、近代秀歌のような取換え難さはない。そこが読みやすさでもしんどさでもあるが

  • 永井陽子女史の「父を見送り母を見送りこの世にはだあれもゐないながき夏至の日」も河野裕子女史の「手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が」も美しくとても悲しい歌です。思わず涙しました。そして、著者永田和宏氏の『あとがき』の日付八月一二日は妻の河野裕子女史の亡くなった日であります。永田氏の妻と歌に対する愛情がひしひしと伝わってきました。

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著者プロフィール

永田和宏(ながた・かずひろ)京都大学名誉教授、京都産業大学名誉教授。歌人・細胞生物学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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