トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316916

感想・レビュー・書評

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  • 四ツ谷のドンボスコだったか、書棚の上段の方にズラッと並べられた「神学大全」から発せられたまばゆい光彩は、幼少のころ図書館で分厚い聖書に心を奪われた経験を想起させた。


    その著者がトマスアクィナスである事はいつの間にか知っていたが、手に取るには明らかに力量不足を自覚しており、しばらくは書棚を眺めて憧れるにとどまった。

    それから数年が流れ、ある日YouTubeで神学大全全巻邦訳完了した出版記念の映像を発見。

    「学問と出版 トマスアクィナス 『神学大全』全訳の歩み」

    稲垣良典先生の朴訥で、穏やかな中に芯の強さをにじませるお人柄に惚れ込み、このエンゼル財団の動画は繰り返し視聴させていただいた。

    その動画のひとつ、神学大全 全巻邦訳完成記念フォーラムの 「ダイアローグ みんなのためのトマスアクィナス 」の中に今回の「トマスアクィナス」の著者、山本芳久氏が質問者として登場する。
    山本氏を知ったのはここが初めてであったが、その後雑誌 Nyx(ニュクス)で稲垣良典氏との対談を読み、信頼を深めたところに本著書の発売である。

    本作の序にて、
    「可能な限りの分かりやすさを心がけて執筆されている。
    だが、分かりやすくするために、トマスのテクストに登場する分かりにくい概念や馴染みにくい要素を切り捨てるようなやり方は採用しない」

    よって、天使も天国も登場するのだと氏は続けて書いている。

    私はそこに真骨頂があるのだと思ったのだ。
    新書はとかく軽く読める、あくまでもザックリとかかれた、本編における案内書程度の位置付けだと認識されがちだが、この本はしっかりと歯ごたえがある。
    その歯ごたえが心地よい。

    難解なモノは難解なまま、読者は分からなければ何度でも読み返して考えたら良い。
    ほかの本など読んだ後、また手を取り読み直し、または神学大全そのものに挑戦してみたり。

    私は山田晶氏 責任編集の世界の名著20「トマスアクィナス 」や稲垣良典先生の「トマスアクィナス 」も読みつつ、時間をかけ、合間、若松英輔氏との共著である「キリスト教講義」を読んだり、出版記念イベントで直接お二方のお話を聴かせていただいたりしながらじっくり読ませていただいた。

    それだけ時間をかけてじっくりと取り組んで読むだけの価値のある一冊である。

  • 久しぶりに世界観を揺さぶるほどのすごい本に出会った。トマス・アクィナス、半端ない。

著者プロフィール

東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は哲学・倫理学(西洋中世哲学・イスラーム哲学)、キリスト教学。
主な著作に『トマス・アクィナス――理性と神秘』(岩波新書、サントリー学芸賞)、『トマス・アクィナス 肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会)など。

「2022年 『中世の美学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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