「オピニオン」の政治思想史: 国家を問い直す (岩波新書 新赤版 1876)
- 岩波書店 (2021年4月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004318767
作品紹介・あらすじ
現代におけるデモクラシーの危機。それは、世界の大規模な変容の反映である。この危機を生き抜く鍵は、人々が織りなす「オピニオン」なる曖昧な領域と、その調達・馴致の長い歴史にある。国家にかかわる思想史をオピニオン論で再解釈することで、大きく変化しつつある政治の存立条件を未来まで見通す、斬新な政治学入門。
感想・レビュー・書評
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明快な視点から繰り広げられる、国家と政治の歴史。最高でも最善でもないが、それでも最もマシなデモクラシーに対して、如何にオピニオンを調達するか。本当に面白かった。自分もこのような文章を書きたい。
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国家が存在する意義を考えるきっかけになった。自由が謳われる民主的な国とはいえども、過度に保守的だったり、資本主義の行き過ぎから格差がどんどん進むにつれ、何のために国家があるのかを考えることはたまにある。近年ナショナリズム的な扇動活動を見かけることも少なくなく、もはや時代遅れの排他的な枠組みなのではとも思ったりする。そのような中で、国家の起源とそれに付随する思想を振り返ることで、その両義性を理解することができ、これからのあり方を模索する機会を与えてくれた。
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本書でいう「オピニオン」とは、ある体制や秩序を受容する人々の共有意思、といった意味のようだ。その担い手も対象も、時代により変化していく。
絶対王政の時代は個人としての王ではない王朝(本書では「死なない王」と表現)による統治の受容と、名誉革命のような少しの反抗。フランス革命後は担い手は平民に広がり、また徴兵により愛する祖国を守るというオピニオン(後にナショナリズムと呼ばれる)調達が必要になる。20世紀には戦争の違法化という国際秩序を支えるオピニオンも登場。
他方、著者も認めるとおりガチの政治思想史ではない。第6章で人の不死やAI兵器も出てくる。オピニオンか現実の体制か、はたまた人間の尊厳を論じたいのか、難解ではないがふわふわした感じの本だった。 -
東2法経図・6F開架:B1/4-3/1876/K
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311.2||Ts
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