うつりゆく日本語をよむ: ことばが壊れる前に (岩波新書 新赤版 1907)

著者 :
  • 岩波書店
3.45
  • (1)
  • (8)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 153
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319078

作品紹介・あらすじ

日本語に起こっていることを、じっくり観察してみよう。ことばはうつりゆくもの。昔と少し違っても、知らない単語が増えても大丈夫。しかし、安定したコミュニケーションを脅かす危機が、そこかしこにみられないだろうか。壊れかけた日本語と、それらが照らし出す私たちの「今」を探り、来たるべき未来へ向けた提言をする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ことばの乱れが指摘されて久しい。
    この本でも言葉についての危機感を露わにする言論が多く、気が滅入りそうになる。

    これまで読んだ本では話し言葉の乱れが多かったが、この本では新聞記事の文章について指摘している点が興味深い。
    「ザックリ」「心が折れる」「降臨」などのよく見る表現…私も気づきませんでした。
    読みつつ自身のことばもかなりいい加減になっていると思い、反省するしかなかった。

    近頃の言葉は、「気持ち」をどれほど面白おかしく、印象的に述べられるかが重視されているのだろうか。

    言葉は思考を表面化していること、
    書き言葉、話し言葉、打ち言葉の繋がり、
    話し言葉の「ブレーキ」となりうる「書き言葉」の重要性…。

    多少は年配の方が文句を垂れているような文もあり、ちょっと説教されているようにも感じられることはあるものの、改めて言葉をたんなるコミュニケーションのための道具にせず、文化として継承していくものにするためのヒントがたくさん書かれた本であった。

  • 「はじめに」より

    「言語はそれを使う人の集団によって『共有』されている。(中略)多くの人に共有されている日本語も、限定された集団に共有されている日本語も、どちらも日本語だ。」

    その他

    「言葉は自然習得できる、というが、そういう場合の『言語』は『話しことば』のことだ。」

    「『情報』を目的に合わせて『圧縮』して『構造化』して提示するのが『書きことば』だと思えばよいだろう」

    「新聞などで使われていた標準的な『書きことば』も『話しことば』化し、その結果、日常的な言語生活で標準的な『書きことば』に接する機会がなくなってきた」

    など、なるほど、と思える文が多かったです。

    「壊れた日本語」については、「心が折れる」「心に刺さる」など挙げられていましたが、私は気持ちを表すのにふさわしい表現であればいいと思います。

    終章より

    「日本語がうつりゆき、過去の日本語とは異なってきていることを歎くのではなく、まずはそうなっているのだなと観察する。そしてその日本語が思考のための器であることを思う時に、『どうすればよいか』ということについては一人一人が考えていくしかないだろう。」

    大学の先生らしい文で、大学生におすすめ。

  • 指摘が細かすぎているのではないか。筆者のように考えていては、話し言葉も書き言葉も使えなくなってしまうような気がする。言葉は生き物だ。もう少し柔軟な姿勢で言葉を受け止めてよいのではないだろうか。

  • ふむ

  • 日本語の形態を「書きことば」、「話しことば」と「打ちことば」に分けて楽しめる議論が縦横に展開する著作だ.「打ちことば」はインターネット空間でやりとりされる言葉と定義している.さらに、「書きことば」の「話しことば」への接近が見られることへの懸念も表明している.ハードな「書きことば」を体験する機会が少なくなっていることへの警鐘も随所に見られた.唯一の体験は大学での卒業論文の作成だと指摘しているが、その通りだと思うし、それが実際に対象者にとって糧となっているかは、やや疑問な部分もあると感じている.論文博士号を持っている小生としては、博士論文は究極のハードな書きことばの試練だと回想している.

  •  いろいろな媒体があり、それに使われている言葉がある。その言葉に違和感は、なかった。だから、この著作の意見が理解できなかった。読み進めていく中で、言葉

  • この著者の作品はけっこう読んでいて、今作で4冊目。
    日本語の歴史や文化に示唆に富んだ内容が多い。今作も日本語の変化を紹介しているけど、規範となる証拠を新聞に求めるのはどうかな。新聞での日本語表記がどれだけ、今の社会を反映できているのかが、そもそも疑問だよね。とはいえネットはいかんせんまだ蓄積が足りないかな。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1907/K

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年、鎌倉市に生まれる。早稲田大学大学院博士課程後期退学、高知大学助教授を経て、清泉女子大学文学部教授。専攻は日本語学。
著書に、『仮名表記論攷』(清文堂出版、2001年、第三十回金田一京助博士記念賞受賞)、『文献から読み解く日本語の歴史』(笠間書院、2005年)、『消された漱石』(笠間書院、2008年)、『文献日本語学』(港の人、2009年)、『振仮名の歴史』(集英社新書、2009年)、『大山祇神社連歌の国語学的研究』(清文堂出版、2009年)、『日本語学講座』(清文堂出版、全10巻、2010-2015年)、『漢語辞書論攷』(港の人、2011年)、『ボール表紙本と明治の日本語』(港の人、2012年)、『百年前の日本語』(岩波新書、2012年)、『正書法のない日本語[そうだったんだ!日本語]』(岩波書店、2013年)、『漢字からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2013年)、『常識では読めない漢字』(すばる舎、2013年)、『『言海』と明治の日本語』(港の人、2013年)、『辞書からみた日本語の歴史』(ちくまプリマー新書、2014年)、『辞書をよむ』(平凡社新書、2014年)、『かなづかいの歴史』(中公新書、2014年)、『日本語のミッシング・リンク』(新潮選書、2014年)、『日本語の近代』(ちくま新書、2014年)、『日本語の考古学』(岩波新書、2014年)、『「言海」を読む』(角川選書、2014年)、『図説日本語の歴史[ふくろうの本]』(河出書房新社、2015年)、『戦国の日本語』(河出ブックス、2015年)、『超明解!国語辞典』(文春新書、2015年)、『盗作の言語学』(集英社新書、2015年)、『常用漢字の歴史』(中公新書、2015年)、『仮名遣書論攷』(和泉書院、2016年)、『漢和辞典の謎』(光文社新書、2016年)、『リメイクの日本文学史』(平凡社新書、2016年)、『ことばあそびの歴史』(河出ブックス、2016年)、『学校では教えてくれないゆかいな日本語[14歳の世渡り術]』(河出書房新社、2016年)、『北原白秋』(岩波新書、2017年)などがある。

「2017年 『かなづかい研究の軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

今野真二の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンデシュ・ハン...
凪良 ゆう
宇佐見りん
朝井 リョウ
凪良 ゆう
東野 圭吾
小川 哲
牟田 都子
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×