源氏物語と日本人〈〈物語と日本人の心〉コレクションI〉 (岩波現代文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006003449

作品紹介・あらすじ

心理療法家・河合隼雄から見た、日本屈指の王朝物語である『源氏物語』とはどんなものであったのか?「これは光源氏の物語ではなく、紫式部の物語だ」と気づいたことから、心理療法家独特の読みが始まる。そこには、どのような日本人の心の世界が描かれているか。古代から続く男と女の関係は、さながらマンダラのように配置される。現代に生きる日本人が、個として生きるための問題を解く鍵を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • (講談社+α文庫)の方を読みました(2003年10月20日発売)
    内容は、ほぼ同じようです。

    https://booklog.jp/item/1/B00EHCTUXU

  • 臨床心理家としての河合隼雄の見た源氏物語

    紫式部が自分の中にある異なる性格、
    すなわち、娘、妻、娼、母としての自分をみつめ
    それを光源氏という存在を中心に用いることで
    マンダラ様に配置したのが源氏物語だと分析している。
    そして例えば、妻としての葵上、娘としての明石の姫君、娼としての六条御息所、母としての桐壺などと分析して、それぞれの個性について分析している。
    (もちろん、微妙な立ち位置の藤壺とか、特別な存在の紫の上がいる)

    完全に腑に落ちたわけではないが、なるほどと思った。
    特に、光源氏の若いころの恋愛遍歴について、「昔男ありけり」的な発想で書かれていたのではないか、という点にはかなり納得してしまった。
    つまり、光源氏という一個人を描いたのではなく、
    こんな恋もあるよね、あんなのもあるよね、的な発想。
    こう考えると、すごく気持ちも楽になるような・・。

    それにしても、さまざまな人が、さまざまに想像できる
    源氏物語って、本当にすごい作品だと思う。
    紫式部は、やはり大天才だと思う。

  • 源氏物語 復習 その5

    心理療法家の著者が読み解く源氏物語。紫式部が物語の中に展開した人間観・世界観を構図化し紫マンダラと称する。
    文章は読みやすいし、構図化した人間関係など理解しやすい。源氏ハーレムの六条院の配置も理解でき、物語地図も助かります。
    とはいえ、やっぱり、研究はお任せして、恋愛小説として楽しみます。

  • 心理療法士である筆者による源氏物語論。源氏物語は光源氏の物語ではなく、紫式部という女性の自己実現の物語であるという解釈にちょっと興味をそそられ読み進んだ。父権的でもあり母系制の名残を持つ平安時代の朝廷・貴族社会における女性としての生き方・その個性化の過程を、一人の男性との関係の中で、様々な女性を配置(筆者はその構造をマンダラと捉えている)しながら描いているとのこと。
    源氏物語をこのような切り口で読み解くことの新鮮さと、改めて紫式部の卓越さを認識させられた。

  • マニアックだけれどかなり興味深い考察が書かれておりサクサクと読めた。
    源氏物語は、ただの光源氏というプレイボーイの話ではないのだ。紫式部という女性が『個』としての生き方を探求した、壮大な曼荼羅図なのだ。と解釈した、素晴らしい考察書だった。

    源氏物語。
    これは女の生き方の提案である。
    紫式部からの、1000年の時を経て私に届いた、新たな『個』としての女を生きよという提案なのだ。

    ああでもない、こうでもない、あれがいい、これがいい。でも私はあなたのものじゃない。そういうふらふらと、何も決められない自分も、決めてきた自分、それも含めて"自分"だと認める。誰にも頼らず自分自身を生きる。そんな生き方があってもいいのではないか?
    そのような紫式部によるある種の「提案」が浮舟という女性像なのだ。
    浮舟は、薫とも匂宮とも逢瀬を重ねるが、これじゃない感がずっと出ている。私は読んでいてそれが物凄く不快だった。さっさと1人に決めろや。と思っていたが、今になってはわかるのである。悩んでいるということは、どちらでも良いし、どちらも良くないのだ。
    つまり薫と居る自分も、匂宮と居る自分も、全部自分なのに、それを決めなければいけないとされる圧力には、どうにも耐えられないだけなのだ。
    ついに迫り迫られる苦しさを解放したい一心で、浮舟は入水するが、奇跡的に助かる。死ぬこともできないのだ。もうこんなどうしようもない自分とも、世間とも、向き合うしかないのだ。そして、最終的には本当にどちらを選ぶこともなく、浮舟は出家する。俗世を離れ、精神世界を生きるのだ。

    1人の人と添い遂げるという社会的価値に押しつぶされ、逃げ出したくなるロマンチックラブイデオロギーがそこにはある。この人といる時の自分が良い時もあるし居心地悪い時もあるのよという正直な女性像もそこにはある。それは人に、当時で言えば男にとやかく言われる筋合いはないのだ。

    浮舟が出家するのを、誰もが止めた。もったいない、若いのに。もったいない、こんなにかっこいい人2人があなたを求めているのに。
    でも彼女は誰にも従わなかった。
    『いやいや、関係ないし。ほっといてくれ。私の人生である。男を通した女の役割を演じるのはまっぴらごめんである』
    紫式部は浮舟を通じて、そのようなことを伝えたかったのかもしれない…と思うと、宇治十帖には、大いに学びがあるのだ。

  • 河合隼雄 「 源氏物語 と日本人 」

    日本人の深層(中空構造、父権社会)から論述した源氏物語論。とにかく素晴らしい

    *光源氏編=光源氏を中心とする曼荼羅→女性達は光源氏により自己を規定
    *宇治十帖=女性達が個として自己を規定
    *女性達を 源氏との関係性や結末から体系化

    源氏物語の女性を体系化
    *源氏との関係性による分類=母、妻、娘、娼
    *女性の結末による分類=早死、出家、密通

    源氏との関係性による分類
    *母=桐壺、弘徽殿の太后、大宮
    *妻=葵の上、紫の上、花散里、明石の君
    *娘=秋好中宮、明石の中宮、朝顔、玉鬘、女三宮
    *娼=空蝉、六条御息所、夕顔、末摘花、藤壺、朧月夜

    結末による分類
    *出家=大宮、紫の上、秋好中宮、朝顔、玉鬘、女三宮、空蝉、六条御息所、藤壺、朧月夜
    *早死=桐壺、葵の上、夕顔
    *密通=女三宮、空蝉、藤壺、朧月夜

    出家=後世のために罪を軽くするためのもの

    「源氏物語は 光源氏の物語ではなく 紫式部の物語である」が主題。浮舟の見方は変わる

    葵の上に取り憑いた生霊=六条御息所の生霊ではなく、葵の上の魂が 六条御息所の生霊という形で訴えたもの

  • 信じられないくらい、興味深い考察。
    一人の人間のなかにある多様性と、生き方に関する考察になっているのだけど、堅い内容ながら、夢中になって読んだ。

  • 古典文学作品へのアプローチとしてこんな方法もあるのだなあ。

    源氏物語を紫式部の精神的曼陀羅として読み解いていく本書には、源氏物語の人物造詣に関してはっとさせられることが多々あった。

    ほんまかいな、とツッコミたくなるところもあるが、むしろそこを切り口に自分の読解を深めていくべきなのだろうと感じた。

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