正義への責任 (岩波現代文庫 学術447)

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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006004477

作品紹介・あらすじ

自助努力を強要し、弱い個人たちを分断する政治から、かけがえのない存在として人びとがつながり合う政治へ。ホロコースト、人種差別、貧困……。過去から現在に至る構造的・歴史的不正義の責任を引き受け、政治を変革する可能性を問う。急逝した著者のためにマーサ・ヌスバウムが寄稿した序文も収録。解説=土屋和代

感想・レビュー・書評

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  • 書評 アイリス・マリオン・ヤング著 - 岡野八代・池田直子訳 『正義への責任』 - J-Stage
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/wsj/22/0/22_94/_pdf/-char/en

    Young, Iris Marion[アイリス・マリオン・ヤング]
    arsvi.com:立命館大学生存学研究所
    http://www.arsvi.com/w/yi02.htm

    正義への責任 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b603066.html
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b261993.html

  • わぁ、文庫出たんだ。解説とかついてるだろうな。お金できたら買う。
    単行本は出た時買って読んだ。周囲に悪意のない、むしろ善意の人がいても、生活のさまざまな局面で貧困に陥ることがある仕掛け?がしみじみと理解できる。
    この本は講義してた時期、何度も紹介した。学部生にはちょっと大変な本だと思うけど、こういうこと(自己責任論の問題)を考える回路を、持ってもらいたいんだよね、みんなに。
    この本はアイリス・ヤングの遺作となり、同僚の先生が編集なさったとのこと。

  • この本は、アイリス・マリオン・ヤングの晩年の最後の著作で、私の考えでは政治的に非常に重要な意味を持ってくるテクストだと思う。参照先はデリダ、アレント、レヴィナス、フランツ・ファノンなど、錚々たる面々で、フェミニズム的な主体性の問題、あらゆる差別や政治的選択の自己責任などが網羅的に論じられる。
    政治的選択は本当に自己責任なのか。(言ってしまえば視野の狭い)生活保護で生活しているような貧しい人たちの政治的選択は自己責任にしていいのか。きわどい問題を論じている。私には、この本は良い意味で、他人事ではなかった。政治の問題を、自分のこととして考えるいいきっかけになる本だと思う。

  • ダーウィンルーム7月読書会指定図書。

    正義と不正義の定義は難しいけれど、自己責任論や帰責(責任者を確定する)ではなく、社会的つながりで責任を果たしていくことが重要と説く。
    全体的に非常にまとまっていて、シングルマザーのサンディやアイヒマンの罪の例もわかりやすい。国境や歴史を超える責任の所在も考えさせられた。

    社会で分有する責任。「正義」と「justice」は少し違うか?自分の正義は他者の不正義か。
    社会において、生きていくことは既に責任が生じていて、いつも加害者になる可能性がある。正義に基づいても他方では迷惑になることも。明確な不手際や不始末がなくても、針金がポイントで合わさると鳥籠になるということらしい。

    政治家を襲撃することは許されないが、その一端を長年の投票行動で容認是認することは、僕の個人的な責任になるか。投票行動に関係なく、政権が出来、その結果として社会が形成され、軋みが重くのしかかる人もいる。一方、利益を得る人も。

    自分ではなくても、親族や国家の歴史的な加害の責任も考える。個人にはないが、国民としては存在する罪か。罪は認められても、罰は嫌だ。
    「怒り」による責任論ではなく、「共感」による責任の分散は必要かと、薄く考えているのだが。

  • 東2法経図・6F開架:B1/8-1/447/K

  • 第一章 自己責任から政治的責任へ
    第二章 正義の主題としての構造
    第三章 「罪」対「責任」――ハンナ・アーレントをめぐるひとつの読解、そして実践的批評
    第四章 社会的つながりモデル
    第五章 国境を越える責任
    第六章 責任を避ける
    第七章 責任と歴史的な不正義
    解説「鳥籠」を解体し、異なる未来を築くために――現代アメリカにおける刑罰国家の拡大と脱‐福祉国家化を考える……土屋和代

  • 【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます】
     https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/463888

  • 社会的つながりモデルと帰責モデル
    過去遡及型から未来志向へ
    非難のメカニズムではなく、責任の分有へ

    維新信者、自助共助公助といったどなたか、エリート思考に染まるダサダサ高学歴層必読

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著者プロフィール

(Iris Marion Young)
1949年生まれ。アメリカの政治哲学者。ニューヨーク市立大学クイーンズカレッジで哲学を学び,1974年にペンシルバニア州立大学で哲学博士号を取得。その後,ウースター工科大学,ピッツバーグ大学などで教鞭をとった後,2000年からシカゴ大学政治学部教授を務めた。20世紀後半を代表する政治理論家の一人であり,ロールズ正義論の批判的再検討を通じて政治的少数派の権利擁護に理論的根拠を与える本書の議論は,今日に至るフェミニズム・多文化主義の発展に多大な理論的・実践的影響を与えた。代表的な著作には,本書の他に,Intersecting Voices: Dilemmas of Gender, Political Philosophy and Policy (1997); Inclusion and Democracy (2000); On Female Body Experience (2004)などがあり,日本では『正義への責任』(岡野八代・池田直子訳,岩波書店,2014年)が翻訳されている。2006年死去。

「2020年 『正義と差異の政治』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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